1989年1月発売
時効-このスリリングな限界に挑戦した著者会心の一千枚に及ぶ大長篇ミステリー。戦後日本を揺がした「60年安保」。右翼少年が起した暗殺計画が、15年の歳月を経て殺人事件に発展する…。
2月12日、福島県郡山の山林で発見された女性の他殺死体と、その3日後に福井県九頭竜湖“夢の架け橋”爆破の際にみつかった損傷者らしい死体が、どちらも森口麻衣子と断定された。報告をうけた鉄道警察の高杉春雄警視は、〈北斗星5号〉に彼女と同乗していたとみられる菅野祐子についての情報収集に乗りだした時、今度は徳島県の小鳴門橋爆破され、JR新四国あて、犯行声明と瀬戸大橋爆破予告の脅迫状が届いた。高杉はこの事件と先の2県は繋がってると直感した。犯行の動機と2県の女性死体は何を意味するのか?
「私、アレッサンドロ・カリオストロ、言イマス」三陸海岸のひなびた船着場にバイクを止めた葛城正比古は、フランス語誂りな日本語を話す外人に、声をかけられた。愛車XLV750Rでの、行きあたりばったりの東北ツーリングの途中の出来事である。その外人は、「追われている。あなたのバイクに乗せて欲しい」と懇願した。不審を抱きながらも、タンデムシートに提供した葛城だったが、後ろを走っていた女性ライダー・平群まゆみと共に、不思議な白い霧に包まれてしまう-長篇タイムトラベル・アドベンチャー。
敏彦は、紅梅食品社長弦巻梅一の娘・美都子と岬めぐりの旅で運命的な出会いをし、両親の反対を押し切って結婚した。やがて梅一が会長に退き、敏彦が社長を継ぐが、梅一と敏彦との相剋は絶えなかった。そんな中、敏彦がついに梅一を殺害してしまったのだ。姿を消した敏彦を求めて、美都子は思い出の岬めぐりの旅に出るが、そこには夫の隠された秘密が…。そして、第二の殺人が!長篇旅情ミステリー。
文禄四年七月、関白秀次は太閤秀吉の勘気を蒙って高野山で自害、享年二十八。その時、秀次の家老・白井民部の妻三保は乱倫な秀次の胤を身篭っていた。一族が処断されようとするさなか、民部は秀次の胤を残そうと三保を生国の志摩に落ちのびさせた。この志摩で生まれたのが千加と由加の双児の姉妹。やがて、千加は宮本武蔵と、また由加は出雲の阿国と出会い数奇な運命に翻弄されてゆく。戦国絵巻時代長篇。
秀吉亡き後、家康は最後の決戦・大阪夏の陣を迎えようとしていた。その頃由加は、京都四条河原で歌舞伎舞を極めようとしていたが、最愛の前関白近衛信尹の死で、いまはただ悲嘆に暮れるばかり。一方、千加は堀端の混戦の中で師宮本武蔵と出会い、戦場を離れる苫舟で武蔵と結ばれた。慶長二十年、大阪城は落ち家康はその野望を達したが、姉妹の前途にはいまだ暗雲が晴れようとしなかった…。戦国絵巻時代長篇。
桜咲く4月、晴れて高校入学…。だけどさっそく志望大学の選択、受験のための勉強スケジュール。それでも高校生活はそれだけではない。…女生徒との出逢い、初恋、両親との葛藤、登校拒否、将来への悩み、社会への目覚め、早すぎる絶望、そして反抗…。人生へのスタートラインにならびながら、不安の迷路をさまよう少年少女の群像を、芥川賞作家が愛惜をこめて描き出す評判の自伝的青春小説。
来日した中米の副大統領が帰国の途中、ハイジャックに遭遇し、消息を断った。外務省から人質の探索依頼を受け、中米へ飛んだ天才拳法家の野口は決死の救出作戦を始める。だが、副大統領を拉致し、政府転覆を企てる暗殺集団は執拗に罠を仕掛け、野口を襲った…。ゲリラ戦となった壮絶な死闘の末にASSの魔手から脱出した野口だったが、要人の誘拐監禁劇の裏では彼もまだ知りえぬ驚愕の謀略が…。拳聖シリーズ完結篇!
〈声楽コンクール〉の前夜、優勝候補のナンバーワンの井田貴子が何者かに狙われ、咽喉に悪い激辛の薬味をサラダに入れられた!不測の事態の発生を恐れた審査委員長の要請で、しぶしぶ会場に出かけた警視庁捜査一課の片山義太郎と妹の晴美、石津刑事と三毛猫ホームズの一行。はたして会場周辺で不穏な動きが…!?貴子はライバルの恭子が怪しいというが、犯人は意外にも…!?超人気シリーズ珠玉の短編三編に、著者の自伝的エッセイ「三毛猫ホームズの青春ノート」を加え、待望のシリーズ第17弾登場!
実業家・黒住泰造のもとに、“殺されかけたお前の息子より”という奇妙な脅迫状が届いた。脅迫者は、25年前に岩手県宮古市で起きた母子放火殺人事件の犯人が黒住であると述べ、その口止め料として3千万円を要求してきた。殺されかけた息子とは誰なのか!?公になることを恐れた黒住が、独自に脅迫者の正体を調査し始めた矢先、執事の池上が密室状態の部屋で短剣で刺されて殺された。謎の脅迫者の犯行なのか。捜査に乗り出した警視庁捜査一課の八木沢警部補と新米刑事の村岡は、殺人と脅迫事件とを結ぶ鍵となる25年前の惨劇を追うが…黒住の別荘で第二の密室殺人が。密室トリックで読者に挑戦、書下ろし長編推理小説渾身作。
28階のホテル『ハイライズ下町』が国際通りに華ばなしくオープンした。ロビーは往来と同じで、人間模様の縮図となった。掏模も忍び込み、コールガールも現われる。果たせるかな開業早々、奇妙な事件が発生!ホテル専属探偵(ディック)こと田辺素直元刑事の名推理が冴え、事件ごとに読者の期待を高めていく。浅草の風俗も活写した名作。
売れないタレントの鳩村八一は、ある夜ふとしたことから、美貌の人妻と巡り合う。罠にはまり、夫殺しの容疑で追われているという。その女・岡部安芸子の妖しい魅力にひかれた鳩村は、彼女の無実を晴らすため、真犯人捜しを決心するが、事件は意外な方向へ…。計られたのは牡か、牝か。人間心理の謎を抉る傑作長編推理。
「すごいわ…」アスレチックジムの受付で、パットはとまどっていた。豪華な設備…。ふだんのつつましやかな生活が嘘のようである。オロオロしているパットに、ステキな男性が近づいた。彼の名は、マイク・テイラー。その彼が実は、このジムのオーナーで、有名なオリンピックの選手だったとは…。パットの中で、ときめきの胸さわぎがはじまった。
18世紀、霧のロンドン。最高の贅沢を身につけた誇り高いレディ、シャナは、今、窮地に陥っていた。21歳の誕生日までに結婚相手を見つけなければ、父にどんな男を押しつけられるかわからない。一代で豪商に成り上がり、今やカリブ海のロス・カメロス島の領主となった父の野望は、シャナを名門に嫁がせ、由緒ある名前を手にすることだった。約束の日は迫る。あせったシャナは、ある日、死刑囚との偽りの結婚で父を欺くことを思いついた。「あとは、悲しみにくれる未亡人のふりをすればいいわ」選んだ男はルアーク。彼は、傲慢にも一夜を共にすることを条件に、シャナのプロポーズを受け入れた。