1989年2月1日発売
フェリーから身投げした男、飛び降り自殺した弁護士、時計台から助教授が…。3人と関わった彼女は!『クルト・フォルケンの神話』。地球は7人の大陸指導者によって支配されている時代ー聖家族の一員である達郎にとって、大切なことは…『眠り姫の目覚める時』。お祭りの夜、金魚すくいの夜店ではじめて逢った小田くん。こぼれるような微笑みが素敵だった。あれは5年生の秋…『祭りの時』。
クラスメートとのおしゃべりや心の中でつい「あいつ」と呼んでしまうーあなたにもそんな男の子がいませんか?本当は気になるくせに、なぜか素直になれず「あいつなんて」と口にしてしまうとき、もしかしたら恋ははじまっているのかもしれません。この本で描かれるのは、8通りの恋のはじめの物語。あなたの「あいつ」にいちばん似ているのは誰でしょうか?恋の入門短編集「あいつ」パート2。
若いギター弾きの男が、年上の不可思議な女性と彼女の家でベッドをともにしたとき、そこには不可解な異様な恐怖が…(表題作)。保険金殺人をめぐる男女の駆け引きを、ユーモラスにして皮肉な結末で綴る『サバイバル・ゲーム』など、全8篇、女性を主人公に描く異色のミステリー集。
大企業「ニッポンバイク」の本社宣伝部でバリバリの企業戦士だった義明に出た突然の左遷辞令は、片田舎での一販売部員というものであった。いったい何があったのだ!でも負けはしないぞ。きっと立ち直ってみせる。翌日から展開された強引な販売作戦。著者の体験にもとづく異色のサラリーマン青春小説。
タツミには確かな目標があった訳ではない。たどり着いたのがロンドンだったのだ。ナン焼きのためにケロイドができた左手をいつもポケットに入れて歩くネパール人グルン。子守りとなって挫折してゆく日本人女子留学生ナオコ…。白人から「黄色人」と軽蔑されながらもしぶとく生きる若者達をタツミの目を通して爽やかに描いた「すばる文学賞」入選作。他に「光の休暇」「闇の喜劇」を収める。
人の病を直すことより、国家の病を直したい。保和らの薦めにより、医学を修得することになったが、政界への夢断ちがたく、板垣退助、北里柴三郎、岩倉具視らを知り、政官界への足がかりを着実につくっていった。明治・大正を通しての傑出したアイデアマン後藤新平の信念に満ち溢れた生涯を描く大長編。
人工衛星でソ連に遅れをとったアメリカの宇宙計画が、科学者、宇宙飛行士、政治家の懸命な努力で推進され、アポロ11号で人類はついに月に到達した。20世紀の夢を実現させた人びとは、この興奮のかげでさまざまなドラマに巻きこまれ…。近代科学の精華をささえた群像を、ヒューマンなタッチで描ききった感動ノンフィクション・ノヴェル。
突然狂ったように踊り出したり、デパートの婦人服売り場で女物の服を手当り次第に着たりする男がいた。しかも、彼は自分の行動を全く憶えていないという。-そのヘンな男が、ある日、死体で発見され、一人住まいの彼の部屋には、無数のこわれた人形が散乱していた…。孤独なセールスマンの死の謎を探る「踊る男」など、奇抜なアイデアとユーモアで描いたショートショート34編。
直子はなんとなくお見合をしようと決心した。叔母から薦められた相手は、ちょっと年齢はいっているが、人柄も学歴も収入も申し分なく、写真うつりのいい男だった。彼は、毎週日曜日の夜九時になると、叔母のアパートに、なぜかやって来るという。そしてお見合の夜、直子が叔母の家に行って目撃したことは…!?奇抜な展開であなたを不思議な世界に誘う傑作ショートショート26編。
流れ落ちる滝のような一条の白い線と、梅の花びらを思わせる美しい紋様ー。見る者の心に戦慄さえ呼びおこす名石“深山の梅”に憑かれた二人の武士の友情と、決して消すことのできない親友の妻への慕情を描く表題作ほか、娼妓として売られた女の初々しい心持ちを伝える「朝の雀」、桜の精に心奪われた男がやがて身近な女の献身に気づく「花かげの女」など、哀歓を奏でる時代小説8編。
私設情報機関〈SSC〉社長スタンホープには息子が3人いた。長男が殉職し、次男ピーターはその悲しみと父への不信から家を出た。ところが死んだはずの兄から、結婚するので式に出てほしいと電話がかかった。5年ぶりに帰国した彼を迎えたのは、花婿姿の弟と、そして命を狙う銃口だったー放浪するイラン国王の動きを背景に、凄絶や復讐戦を繰り広げる男たちの死闘を描くサスペンス。
ネコと同居し、ヨガと中国拳法を操る、タフでクールなヴェトナム帰りの私立探偵エルヴィス・コールとマッチョな相棒ジョー・パイク。「軽い仕事」のはずだった失踪父子の捜索は映画界につきもののコカインがらみでシンジケートとの対決へ…スプリングスティーンのしゃがれ声が似合う冬のロサンジェルスを舞台に粋な探偵の生き様を描く、エルヴィス・コールシリーズ第1弾。
生まれたばかりの赤ん坊を抱えた若夫婦が、ナニー(住込みのベビーシッター)を雇った。有能なナニーは、赤ん坊を巧みにあやし、家事を片づけ、若夫婦の世話まで焼いた。しかし、ナニーの行動にはどこか不気味さが漂った。そこで夫は、謎に包まれたナニーの過去を密かに探ってみるのだが…。“純粋で完壁な愛”を求めてさまよう魂が若夫婦を追い詰めていく、長編サスペンス・スリラー。
大正は14年、〈彼〉は大阪に生まれた…。貧しい下駄職人の三男坊・平吉は、一家心中が失敗してサーカスに入団。そこで師と仰ぐ丈吉が突然姿を消してしばらく後、謎の怪盗が巷を騒がせ始めた…どこか懐かしい昭和初期の風景の中で展開される数々の事件。その真相が二十面相側から語られる、ユニークな長編小説。
死体のパーツが新たな犠牲者の体内に-酸鼻をきわめるリレー式連続殺人事件。午前4時の家々に病院に、殺人機械は音もなく侵入する。狂気の匂うナイフは、いかなる怨恨を切り取ってゆくのか…。一分の隙もなく構成された迫力満点のホラー・サスペンス。
迷宮入り寸前の殺人事件がきっかけだった。とるに足らぬダイイングメッセージが「絶対にバレない詐欺」解明の唯一の糸口だった。被害届もないまま、組織の綻び目を手繰ってゆく2人の刑事。犯人を絞り、詐欺の全容も明らかにした矢先-。現代社会に潜行する悪のトレンドを逸早く掬いあげる、著者ならではの同時代ミステリー。