1989年2月発売
政争と陰謀の渦中から栄華をきわめた平家一門。やがて東国に興った平氏打倒の嵐に翻弄され、西海の藻屑と消え去るその足跡を、頭領の妻を軸に綴る。公家・乳母制度の側面から捉え直す新平家物語。
8年前に捨てた妻子に会いたい-気鋭の画家ゲリーの頼みで、私立探偵アッシュは2人の行方探しを始めた。だが、依頼人の妻レイニーは再婚、息子ブライアンは、悲惨なことに、母の運転する車に乗って事故に遇い、幼い命を散らしていた。報告を聞いて激昂するゲリーに、アッシュは一抹の不安を覚えたが…。過去を秘めた謎の魅力とハードボイルドの詩情を堪能させる著者会心の作!
探索の旅は終わった。世界を支配できる力を秘めた〈アルダーの珠〉を奮取し、ガリオンはリヴァ王となってセ・ネドラ王女と結ばれた。すべてこれらのことは時の始まりより定められていたこと。そして今、〈予言〉が語るように、ガリオンは邪神トラクとの最後の対決の途上にあった。だが、彼は暗澹たる思いに閉ざれるばかり。自分の意志とは無関係に王にされ、あげくのはてにトラクを倒せという。だがしかし、果して死すべき人間に神を打ち負かすことなどできるのだろうか…。全米でベストセラーを記録したエピック・ファンタジイ、堂々完結。
宇宙飛行時における最大の問題はートイレ。特に長期飛行の場合は大問題だ。しかし、わが森田衛生設備株式会社が誇る最新式無重力トイレがあれば、そんな悩みは解消。無重力でも快適な生活が送れるはず、なのだが…。このわが社自慢の製品にクレームをつけてきた客がいる。どうやらセンサーの調整ミスみたいなのだが、大変なことになっているらしい。ヴィデオフォンの向こう側にいる不定期貨物船オーナーの罵詈雑言がその程度を示していた…無重力トイレをめぐる大騒動を描く「無重力でも快適」他、5篇を収めるSF短篇集。
第二次世界大戦中、フランスで対ナチ情報網に従事、目覚ましい功績をあげたチャンピオン。アラブと密接な関係を持つ彼を、いま西ドイツが武器密輸容疑で追いはじめた。かつて情報網の一員だったわたしは、英国情報機関の指令を受け、彼の身許調査を開始する。だが、チャンピオンの身辺に送り込まれた女情報部員は失踪、わたしは情報網ゆかりの地ニースへ飛ぶ。そこで見いだしたものは、戦争の英雄たちの30年後の姿と、巧妙に張りめぐらされたチャンピオンの計画だった!巨匠が古き時代のスパイたちの姿を通して、非情な現代情報戦を描く力作。
忍び寄るピューマ、襲いかかるワシ、そして疾走する馬ー内気な高校生ダンが唯一心を開く相手は、部屋に飾ったポスターや剥製の動物たちだった。無理解な父親から獣医になる夢を禁じられ、学校では校長の息子として特別な目で見られる。そんな彼の鬱屈した心を動物たちは慰めてくれた。だが、町に連続殺人鬼が現われ、その魔手がダンに伸びたとき、突然闇の中から不思議な影が!正統派ホラーの流れをくむ著者が、思春期の少年の幻想が悪夢の世界を鮮烈に描く。
イギリスが開発した戦闘攻撃機ブラックホークがテスト飛行中に墜落し、パイロットの空軍少佐が死亡した。三重のフェイルセーフ・システムを備えた最新鋭機がなぜ?墜落の原因をめぐって謎が深まる中、ブラックホークの配備をめざす政府側と、イギリス版SDI“スペース・ストライク計画”の推進派との対立が激化し始めた。そんな折り、死亡した少佐の恋人でイギリス空軍の女性パイロットのエリカは、通信社の記者である少佐の兄と墜落事件の調査に乗り出す。だが、やがて彼らにも不気味な死の影が!緊迫した筆致で描き出す航空サスペンス。
交通事故で四肢が麻痺したアランを心底理解して世話をするのは看護婦エラだけだった。といっても彼女は人間ではない。研究中の新薬で知能が向上した猿だった。人間と猿との心暖まる交流。が、しだいにその関係は悪夢を生み出していった…。〈ゾンビ〉三部作で著名なジョージ・A・ロメロ監督が贈るホラー映画原作。
スタート合図のピストルの音が響き、六人の選手がいっせいにプールに飛び込んだ。と、みるまに第二コースの女性のまわりに赤い輸が広がっていった…そこは、スタート直前のコース変更までは友人のアリシアが泳ぐはずのコースだった。命を狙われるどんな秘密が、アリシアにはあるのだろうか?友人の窮地を救うため、わたしは航空会社のエンジニアである彼女の身辺を洗いはじめた…女探偵V・I・ウォーショースキーの心暖まる活躍を描く「むかし泳いだ場所で」はじめ、今もっとも注目を浴びる私立探偵が登場する書き下ろし12篇を収録。
おれの特殊な能力を見込んだ友人の依頼をうけ、おれはある天文台へ向かった。そこで出会った天文台の関係者らしい美貌の女性の話によれば、最近、世界有数の天体物理学者がこの天文台から姿を消したらしい。しかも、どうやら宇宙科学者の失踪事件はこれにとどまらず、ソ連でも発生している。CIA、KGBなども必死にその足どりを追っているらしいのだ。この世界的な集団失踪事件の背後にはどんな秘密が隠されているのか…。広大な宇宙に源を発するコズミックな異常現象とその謎の解明に挑戦する超能力探偵アシュトン・フォードの新たな活躍。
夕方のセミナーで私を笑いものにしたのは、美しい女子大生だった。私は中年の大学教授で、片頬に醜悪な傷があった。その傷を女子学生の目の前につきつけると、笑い声はやんだが、私の頬は思いきりたたかれた。この時から、彼女への異常なまでの愛情が湧き起こったのだ。期待の英国女流新人が放つ各書評子絶賛の“美女と野獣”の物語。
高校生のカップルと若妻が連続して惨殺され、平和な田舎町は震撼した。しかし被害者同士には何のつながりもない。妻と教え子を殺されたうえ、警察から殺人容疑までかけられた高校教師ブレットは、一見無関係な事件の謎を追うが…。戦慄の連続殺人と無実の男の必死の追跡行を巧みなプロットで描く、期待の新進女流のサスペンス大作。
ベートーヴェンの交響曲〈エロイカ〉の形式にのっとって、英雄ナポレオン・ボナパルトの波瀾万丈の生涯を描き上げる-音楽と文学を合体させた壮大な実験場が、この本である。1796年の第1次イタリア遠征、ジョゼフィーヌとの結婚を幕開けに、コミカルな独裁者、凡人の悩みをかかえた皇帝ナポレオンの姿を、エジプト遠征、ロシア遠征、エルバ島およびセント・ヘレナ島配流などを通じて“文学の交響楽”の中に浮彫りにする。英文学界にそびえる巨人バージェスの、文学性豊かな笑いと諷刺にあふれた、大胆不敵な長篇。
ラボー・カルベキアンは、亡き妻の大邸宅で孤独に暮らす老人。トルコ帝国による虐殺を逃れてアメリカに移民してきたアルメニア人を両親に生まれ、画才を生かして抽象表現派の画家となった。一時はポロックらとともに活躍もしたが、才能のなさを思い知って今は抽象画のコレクターに甘んじている。そのラボーが、開かずの納屋に大切にしまいこんでいるものとは一体何なのか?『ガラパゴスの箱舟』に続いてヴォネガットが贈る、人類に奇跡を願う長篇。
浅見光彦は母親の雪江のお伴で兵庫県の城崎温泉を訪れた。彼には但馬に残る土蜘蛛伝説の取材もあり、郷土史家の安里家を訪ねたが孫の利昌が応対に出て、何の成果も得られない。翌日光彦は、レンタカーで母親と出石へ行く途中、かつて金の先物取引の詐欺事件で有名な保全投資協会の幽霊ビルで、3人目の死者が出た事件に遭遇する。警察では3人共自殺としたが、彼の勘では他殺である。そこで第1の死者、水野を調べ始めた光彦は、出石焼の作陶家の娘、矢沢まゆ子と再会-思いがけず但島伝説と殺人事件を繋ぐ接点に…。
公安調査官・加下千里が、羽田空港入管ゲートで知りあった中国服の美女に誘われて入った中華料理店に、すでにこと切れた男が転がっていた。加下を嘲笑うかのように、口紅で書かれた「李大福死刑」の五文字が、男の胸で躍っていた。香港・東京を結ぶ麻薬密輸ルートを求め組織に潜りこんだ加下の前で、次々と消される男たち…非情の世界を軽快なタッチで描く好評シリーズ。長篇推理。