1989年5月1日発売
人類の入植時代から7百年。火星の苛酷な環境のなかで人類は機械と共生関係を結ぶことで生きてきた。しかし、いまや人類と機械との幸福な関係は崩れつつあり、火星は混沌と荒廃から破滅に瀕していた。その火星を救うためには伝説の機械神となったローテ・ブリッツの覚醒が必要なのだが…!?前作『火星甲殻団』の時代から5百年後の火星を舞台に、新たな世界創造の物語を描く最新刊。
現代アメリカ作家たちが語る現在進行形の愛。都会にひそむ不安定な愛、リリシズム漂う初恋…レイモンド・カーヴァー、ボビー・アン・メイソンなど、現代の愛のゆくえを映す傑作短篇集。
「世の中には、わざわざ飢えた魔の顎の中へ首を突っ込みたがる輩が、本当にいるのでございますよ。我が殿アーモンさまも、そのおひとりでございましてな。かような所業をなさろうというのも、全ては退屈から始まったこと。人語を解する狼の話にいたく興味をもたれ、シヴァ神が舞い降りるという聖なるムリカンダ山へ出掛けたのでございます。旅に出る度、恐ろしいことばかり。そのうえ、この山には月の種族が棲むと、皆が怯えるのでございます…」古代インドを舞台に、鬼才が紡ぎだす、美しくも怪奇な物語の数々。
諏訪駅で転勤する同僚を見送っていた、長野県警の道原伝吉のもとに衝撃的な知らせが届いた。八ヶ岳で写真を撮っていた登山者が、「岩場から人が投げ込まれるのを目撃した」といって、小屋へ駆け込んできたというのだ。投げ込まれたのは、西岡方沙子という若い女性の絞殺死体。捜査を開始した道原が探していた万沙子の親友はなんと万沙子と同時期に木曽で殺されていたのだ。「だれが、なぜ」2つの事件に関連性を見つけた道原が探しあてた男は鉄壁のアリバイを持っていた。道原伝吉の名推理はこの事件をどう解決するか。
大阪・御堂筋から赤坂の一等地に進出をはたした、我がごきぶり商事。元・西成署の刑事、毛ダニこと池谷老人をひきいれて、場外馬券売場で外れ馬券を拾い、1日百万円を目標とするのが、目下の仕事だ。ぼくとの間に一児をもうけた登志子はんが発見した磁気鉄粉応用の、馬券ナンバー改造法で当り馬券に直して現金化するのだ。仕事は順調だがある日、ぼくの浮気心に対する登志子はんの監視の目を盗んで、新幹線で知り合った女優の真下洋子と密会。ごきぶり商事の東京進出の話を映画化したいと申し込まれたのだ。
二派の武力抗争が続く南米の貧しい小国。老大統領を補佐するロドリゲス少佐は、国庫の外貨を奪い、大量の武器密輸入で一挙に反対派を壊滅するべく、大博打に出た。忠実につき従う混血のジョン。二人の武器密輸の道案内に立つ乞食の少女カルメン。三人はともに日系移民の末裔であり、日本に見棄てられた民衆でもあった。彼らが忠誠を誓い手に入れようとする“祖国”とは?移民史を問う衝撃の長篇作。
頃は天保。甲府に入った男たちがいる。戸田流宗家の老武者・藤木道満。武者修業中の島田虎之助。白面の貴公子・本多左近。なぜか道満は仙台黄門と呼ばれ、助さん、格さんという2人の壮漢を従えている。黄門一行が絹商人和泉屋に逗留中、当の和泉屋が斬り殺された。城下には白覆面の剣士の仕業という噂が流れ、道満一行の姿が消えた。この騒乱に島田虎之助も巻き込まれて…。長篇剣豪小説。
江戸を目指す島田虎之助の心中には和泉屋の無残な姿があった。犯人と噂された白覆面の剣士は本多左近か?仙台黄門か?そもそも黄門を名乗って諸国を廻遊する老武芸者・藤木道満の目的は何か。謎は深まり、道満の野望を秘めた密書をめぐって人斬り勘斎が疾駆し、芸妓竹千代が舞う。東海道を往く道満の前に立ちはだかる風流使者とは…。時代の夜明けを前に散っていった剣士たちを描く長篇剣豪小説完結篇。
甲賀の忍者・猿飛佐助は、主人・真田幸村を敬愛していた。その幸村は、豊臣秀頼の要請に応じ関東方との合戦に備える大阪城に入った。しかし盟主秀頼はいまだ若年、大阪方の人心も腐敗しきっていた。城内は関東方の放った間者が跳梁し、幸村が狙撃され、秀頼も毒殺されんとした。佐助の働きで辛じてこれを防ぎ、野戦を主張する幸村が城外に出丸を急造し終えるころ、冬の陣が始まった。長篇歴史ロマン。
10歳で丁稚奉公に出た小右衛門、学問好きが災いして店を追い出され、途方に暮れているところを大坂・船場の両替商・升屋の二代目に拾われた。そして十余年の後。失意の底で逝った二代目に、升屋の後事を託された小右衛門は、お店の苦境脱出に米どころ奥州・仙台に着眼、だが伊達藩は上方商人の嫌われ者で、小右衛門の苦闘が始まった…。大坂屈指の豪商にのし上った男の生涯を活写する傑作時代長篇。
血のしたたる殺人料理を16種類とり揃えました。生のまま、生焼けのレア、それともよく火の通ったウェルダンがお好みですか。味つけも父殺し、母殺し、夫殺し、兄弟殺し、幼児殺しと多種多彩、殺しの万華鏡の観があります。ホラーの名シェフ、ロバート・ブロックが腕をふるった恐怖のメニューをじっくり愉しんでください。
プルースト、ワイルド、ミュシャ…。あらゆる芸術家を魅了した大女優サラ・ベルナール。彼女は「神秘の窓」と謳われたひとみと「黄金の声」で、「フェードル」から「椿姫」まであらゆる役をこなし、世紀末からベル・エポックまで長期にわたり、世界的な名声を欲しいままにした。人並みはずれた豪奢な生活、そして恋愛遍歴-スキャンダラスな伝説を身にまとい、不幸なき栄光の道をひたすら走りつづけた彼女の本当の素顔とは?サラの華麗な生涯にサガンの熱い夢を託した、架空の往復書簡による伝記ロマン。