1989年5月1日発売
昭和20年代後半、政治の季節-。文学への志と両親との葛藤に苦しむ、東大生・倉沢明史の前に現れた年上の女・麻子。政治に走る友人たちへの負い目と、彼女への欲望の間で揺れ動く明史。そして、失ったはずの恋人・棗との再会、恋の成就-。彼の青春は一つの完結を迎えた。
一分の〓@68D2もなかったはずの犯行を見破り、捜査に手間取っている刑事に自分のことを告発した奴がいるー。勾留中の犯人が脳裏に描いた密告者とは?推理が完成したとき、すべての前提が覆り、「鳥人計画」が徐々にその姿を現わして…。緻密きわまる構成の本格スポーツ・ミステリー。
昭和42年夏場所で準優勝した大関・大龍は、横綱審議会の推挙の報を尻目に失踪する。次いで発表された横綱昇進辞退宣言。困惑する角界をよそに、大龍は死んだはずの父親の行方を必死に追っていた-。東京がまだ至るところ工事中だった20年前、濃好な下町情緒のなかで起った殺人事件にからめとられた大龍は、はたして再起できるのか…。東京オリンピック前後のレトロな風俗を織り込みつつ描く、人間味溢れる相撲ミステリー。
700年を経て、笛の音が響くとき次々と子供たちの姿が消えた…。「ハーメルンの笛吹き男」から、謎の予告状が。符合して1人の少年の死の周辺で起こる不可解な死亡・失踪事件。-笛吹き男伝説と現代を重ねた気鋭の新・社会派推理。
すぐにきてほしい-秘書ペギーからの伝言に胸騒ぎを覚え、彼女のアパートメントに急行した私立探偵のジョン・タナーが発見したのは、足を挫いてソファに横たわるペギーの姿だった。タナーを見ると、彼女は段階から突き落とされたといい、弱弱しくつぶやいた。「彼がこんなことをするとは思わなかった…」“彼”とは、毎晩ペギーに電話をかけ、脅迫を交えながら、彼女に猥褻な話を強要する男のことだった。男は、まるで一部始終を監視しているかのように、彼女の日常生活から人間関係までを知り尽くしていた。タナーは、ペギーの身辺から調査を開始するが、なぜかペギーは調査の協力に消極的で、いつしか二人の間には溝が生じていた。そして、そんなペギーの態度を見透かしたように犯人は要求をますますエスカレートさせてきた…!
寒冷や酷暑、真空、低重力、容赦なくふりそそぐ宇宙線…。苛酷きわまりない大宇宙に生きるため、人類はおのれの肉体そのものを改造しはじめた。ある者は遺伝子工学を駆使して肉体そのものを改変し、ある者は肉体とハイテクの融合に未来を見出した。やがてそれが〈工作者〉〈機械主義者〉という二大勢力となり、他の党派をもまきこむ抗争をくりひろげるが、遥かに進歩した異星人〈投資者〉も、太陽系への進出を画策していた…。サイバーパンク派の旗手の未来史SFを日本で独自に結集した、ファン待望の傑作短篇集登場。
「ロボットは人を傷つけてはならないし不作為によって、人を傷つける結果を招来してはならない」-この傷害禁止条項のため、人を傷つけてしまう可能性の高い営業用ロボットの実用化は成功しなかった。営業行為には、得あれば損あり笑う者もいれば泣く者もいる。つまり、人を傷つけてしまうことが多々あるというわけだ。ところが、実現するはずのない営業用ロボットを、ライバル会社が売り出すという。おまけにお得意先で遭遇したそのロボットは、なかなか手強い営業能力を発揮した…アシモフのロボット三原則に挑む問題作を含む傑作短篇集。
ある日、突如、世界中の空で展開され始めた壮大なドラマ。天地創造に始まり、生物の誕生、そして人類の登場とその歴史が走馬灯のようにくりひろげられていったが…栗本薫「走馬灯」、宇宙の巨悪と闘う前代未聞の怪ヒーロー・ミイラ男の大活躍、梶尾真治の「ヤミナベ・ポリスのミイラ男」、流刑惑星で闘うことを義務づけられた囚人たちの中へ取材に入ったレポーターを待ち受けていた過酷な運命を描く神林長平「射性」、喪われた星の文明の謎を解く新鋭の力作中篇、飛浩隆の「象られた力」、他に鏡明、草上仁、東野司、中井紀夫、柾悟郎の作品を収める。
イギリスの地方新聞に勤めるフェンは、ある晩、少女が教会の墓地に入って行くのを目撃する。不審に思ったが彼が後を追っうと、少女は大きな樫の木の下へ行き、一言つぶやいて意識を失った。だが、その少女アリスは実は聾唖者だったのだ。翌日の新聞で報じられたこの事件は大きな反響を呼び、奇跡を見ようと人々が押し寄せた。彼らの目の前でアリスは不治の病人を癒し、自分は聖母マリアの幻影を見たと告げる。果たして聖母が彼女の体に降臨し、この奇跡を起こしたのか?
少女アリスの噂を聞きつけて、不治の病に脳む人々が続々と詰めかけた。宗教界も、この地を聖地とすべく動きだし、平和な教会は、一転混乱の渦中に。その騒ぎの中、アリスの周囲の人間が次々と怪死をとげ、アリスの身にも奇怪な出来事が起き始める。彼女の体に宿ったのは、聖母の霊なのか?それとも…。事件を追うフェンは、やがて怖るべき事実を知る!ベストセラー作家が、可憐な少女の身に起きた奇跡を軸に、そこに群がる人間たちの欲と野望を描くホラー大作。
別れた妻の突然の訪問に、ソールター警部は困惑した。2カ月前に知り合いの女性が殺された事件の捜査の進捗状況が知りたいというのだ。殺されたのはナンシー・コーウェル。レイプされた可能性もあるらしい。半年前から夫と別居し、交際欄に広告を出したり、シングルズ・バーへ行ったりしていた。では、彼女のそうしたライフ・スタイルが今度の事件を招いたのか。上司からも再捜査を命じられたソールターは、そこに的をしぼってみたが…。都会に暮らす寂しい女の死の真相を、クリスマスを迎えるトロントを舞台にしっとりと描くシリーズ第4作。
話さずにいられないのよ、だれかにー母を亡くして以来、地方検事補ドニーズにとってマデリンは母親のような存在だった。その彼女の切実な声になぜ耳を傾けてあげなかったのか。子供のできなかったマデリン。事業に行きづまり、妻の財産にまで手を付けようとする夫。夫婦の絆が切れようとしているのか…自宅の寝室で、マデリンが胸を撃たれて殺されているのが見つかったのは、そんなときだった。そして、愛人のいる夫が容疑者として浮かんできたのだ…古いものと新しいものとが混在する街で起った悲劇を情感豊かに描く、3部作完結篇!