1989年発売
五千日も続く冬の到来を前に、竜座の第三惑星では大混乱が生じていた。原住種族ヒルフのなかでも蛮族として知られるガールが、他部族の食糧を略奪しに北から移動してこようとしていたのだ。この惑星に移住して、何世代もたつ異星人ファーボーンは、ガールの大軍に立ち向かうべく、ヒルフの温和な部族トバールと同盟を結ぶ。だが、ファーボーンの頭アガトとトバールの族長の娘ロルリーが出会ったとき、事態は大きく展開するのだった…異種族間の相克を、ル・グィンがみずみずして筆致で鮮やかに描いた、『ロカノンの世界』につづく長篇第2作。
どらが鳴った。あと13回その響きがこだますれば、アコマ家の姫君マーラは修道女になる。その厳粛な儀式の最中、闖入者が現われた。アコマ家の兵士だ。どうやら、マーラの父と兄が戦死したらしい。一転して名家の長となったマーラ。それは、ツラニ帝国の生活のすべてを支配する〈高等会議ゲーム〉のはてしない権力闘争に身を投じなければならぬことを意味していた。聞くところによれば、父と兄の死もこの〈ゲーム〉での陰険な策謀によるものだという。弱冠17歳のマーラに、栄して権謀術策にたけた男たちを相手に闘うことが出来るだろうか?
一代で巨万の富を築き、大会社の社長となったヴェトナム帰還兵のダン・ゴールドマン。彼はサバイバル・ゲームをするため、スコットランド沖の自分の島に赴いた。同行者はダンの右腕のピーター、野心家の若手重役ボブ、そして心に深い傷を持つダンの美しい秘書ジョージー。それぞれの思いを胸に秘めながらも、彼らはゲームを心ゆくまで楽しむはずだった。だが、そこには復讐に燃える暗殺者が忍び込んでいたのだ。やがて不気味な銃口が火を噴き、島は一転して地獄の戦場と化した!大型新人が『待ち伏せの森』に続いて放つ力作冒険サスペンス。
「おねがい、来て」留守番電話に吹きこまれた少女ポリーの声はリッチの助けを求めていた。彼は恋人のカリンと共に雪道をひた走り、ポリーの父親が経営する宿を訪れるが、娘は不在だと冷たくあしらわれる。不審に思ったリッチは、宿の一角でポリーが虐待を受けているのを発見。しかし、警官を連れて現場に戻ったとき、彼女の姿は消えていた。少女の身を案じるリッチの前にやがてアイネズと名乗る妖しい女が現われ、ポリーは実は悪魔に取り憑かれているのだと告げた。
悪魔に取り憑かれ、恋人カリンを惨殺したリッチ。兄のコナーは殺人罪で起訴された彼を救うべく奔走する。だが、悪魔払いも効果なく、惨殺事件の目撃者たちは次々と奇怪な死を遂げてゆく。悪魔の狙いは世界の注目を集める裁判で、おのれの力を誇示することにあった。悪魔の手が自分の家族にまで伸びたとき、コナーは絶海の孤島より霊力を持つ弁護士を呼ぶ決意をする。かくて法廷において悪魔対人間の凄絶な死闘が開始された。
悪名高い上院議員が、選挙を控え、自宅で刺殺されていた。家の者をわざわざ外出させているのも奇妙なら、犯行現場にいわくありげな小箱が置かれていたのも奇妙だった。出てきた手紙から、いかがわしい婦人との交際が明らかになるが、事件の様相を一変させたのは、脅迫状だった。アーロン・ドウなる囚人からのもので、復讐をにおわせる文面だった。しかもこの男は最近出所したばかりだったのだ…!現代的な女探偵の先駆ペイシェンス・サムを登場させ、老探偵ドルリイ・レーンとの見事なコンビぶりを描く型破りの本格探偵小説。新訳決定版。
愛は水面の光のように刻々とその姿を変える。若い男と子連れの女、美しい男と醜い女-。アン・タイラー、ラッセル・バンクスなど、現代アメリカ作家が描く同時代の愛。
アメリカ東部の大都市フィラデルフィア近郊の、閑静な学園地区メイン・ラインの一角で女性の全裸死体が発見された。スーザン・ライナート、39歳、高校教師。一緒にいたはずの子供たちの姿は消えていた。捜査線上に浮かんできたのは、高い学歴のインテリばかりだった。ビル・ブラッドフィールドは、博識で、詩人の魂をもつといわれるカリスマ的な英語教師だったが、そのストイックな言葉と裏腹に、何人もの女性と結婚やら同棲をし、複数の恋人までいた。彼らの校長、ドクタ・スミスは変態性欲者で、また窈盗癖があった。この二人に疑惑の目は集中した。倫理なき社会病質者の犯罪を描き、そこにうごめく人間心理の不可思議に鋭く迫る、ウォンボー渾身のノンフィクション。
ブルボン王朝の支配する19世紀の南イタリア、シチリアとおぼしき王国にある孤島の牢獄。国王暗殺の陰謀に加担したため死刑を宣告された4人の男たちが、翌朝のギロチン刑を前に恐怖にふるえ、最後の夜をすごしている…。コッラード・インガフウ男爵-熟年。〈現人神〉をリーダーとする地下組織に入って以来、国に対する破壊活動の過激分子となる。サリンベーニ-40代、自称詩人。アジェラシオ-30歳、兵士。ナルチーゾ-年齢不詳、学生。当局は一味の影のリーダー〈現人神〉をつきとめようとするが、彼らはどんな拷問にも屈せず、嘘をつらぬき通している。そして処刑前夜、城塞刑務所の総督がやってきて、〈現人神〉の素姓を明かせば恩赦も認めようともちかけた。4人はこの取引を拒絶したものの、死を前にした動揺は激しく、残された5時間を有意義にすごすため、“デカメロン”のように各人が順を追ってそれぞれの人生を語りはじめた…。計算しつくされた物語はこび、みごとな文学空間…極限状況下の人間の真実と嘘を鋭く追求し、今世紀のイタリア文学を代表する作品とまで絶賛された傑作。ストレーガ賞受賞。
宇宙暦788年、21歳のヤン・ウェンリーは少佐に昇進した。惑星エル・ファシルから民間人300万人を救出指揮した、あの奇跡の生還を果たし、しばし休息の時を送っていた矢先き、統合作戦本部参事官アレックス・キャゼルヌ中佐から呼び出された。第二次ティアマト会戦において、銀河帝国軍を完ぷなきまでにたたきつぶした伝説の英雄ブルース・アッシュビー提督の戦死に、謀殺の疑いある-という投書が舞い込み、その真相を究明せよとというのだ。再びヤンの活躍がはじまる。読者熱望の“外伝”4、満を持して登場。
歴史に残る戦いだけが、闘いではない。第二次大戦末期、南の島で繰り広げられたこの無名の死闘もまた、栄光と悲惨を充分に伝えるものだといえよう-。彼らは、それぞれたった一人の生き残りだった。山村一等兵は38式狙撃銃。ブラウン二等兵はM-1C狙撃銃。武器といえば、他に手榴弾が数発。弾数に限りがあり、援軍も期待できない。密林の暑熱の中、彼らは、ただ生き残れることだけのために、互いの命を標的にした。風を読み、スコールを味方にし、陽光を利用する。持てる知識の全てが武器となる…。究極のサバイバル巨篇。
21世紀後半、世界は相変らず血と硝煙に満ちていた。キューバ、ニカラグアはレッド・アメリカと呼ばれていたが、怖るべき殺戳事件が起った。反政府ゲリラ、政府軍、米空挺部隊、米陸軍特殊部隊と敵味方の区別なく惨殺された死体の山には腕や脚は勿論、首のないものもあった…。イランの首都テヘランで、一匹狼の殺し屋シド・アキヤマに接触した男がいた。日本の内閣官房情報室の黒崎と名乗る男は、シド・アキヤマに四人のテロリストの殺害を依頼した。彼らは特別な肉体を獲得したサイボーグだという。闘いは始まった。
ダーク・グリーンの海をもつ惑星ヌーパスで300人乗り旅客ヘリが墜落した。3カ月でもう3つ目の大事故。いずれも確とした原因がつかめない。しかし、今回死んだ人間の中に、スーパス情報局本部、通称〈バグ〉の職員・ベクターがいた。ベクターは政治犯調査のスペシャリスト。同じ職場にいる恋人・リンメイは、人工的工作の可能性を執念で迫っていたが…。3つの事故は本当に偶発的なものなのか?ネコとノイズが調査にのりだした途端、リンメイが死んだ!一体この惑星では何が起こっているのか。恐怖と謎を秘めたヌーバスにネコとノイズが挑む-。
御岳で消息を絶った友人を捜しに、わたしは木曾谷にやってきた。その夜、知り合った中国娘美蘭に同行を迫られ、一緒に登山することになる。ところが先々で殺人が起こり…。下山登中、御岳教の老行者が、神託として「あなたのさがしものは、つれの娘が知っている」と告げる。だが美蘭は姿を消した。美蘭の行方を追ううちに、御岳に隠された忌しい過去が明らかになる。綿密な取材で描く長篇推理。
天保八年(1837)浦賀沖に出現したモリソン号に続き、英仏蘭露の異国船がしきりに日本沿岸に出没するなか、嘉永六年(1853)突如浦賀に入航したアメリカ艦隊の威力は、幕府を震撼させた。折から、長州の桂小五郎、高杉晋作、薩摩の西郷吉之助、土佐の坂本龍馬ら憂国の至情に燃える若者たちは、新しい時代に向けての行動を準備しつつあった…。壮大なスケールで幕末の群像を描いた大河ロマン。
CM業界を舞台に自動車メーカーの宣伝室長と広告代理店の担当者、TV関係者と女性達をめぐる二件の殺人事件。現場はマンションの一室とエレベーター。しかも狭い箱のエレベーターの中で凶器として発見されたのは長い槍だった(第一話「殺人もあるでよ」)。ふだん、何気なく使用している空間ー別荘、書斎、寝室、トイレ、モーテル、廃屋ーを使い、巧みなトリックを駆使した推理短篇集。