1989年発売
パルナソスの王女ゾリーナは、父亡きあと、ハンプトン・コート・パレスの一画に母に暮らしている。そんなある日、ビクトリア女王からゾリーナに縁談が言い渡された。60近いリオシア国王と結婚ですって!驚きよりも憤りをおぼえるゾリーナは晩餐の席で二重の衝撃を味わうことになった。使者としてやってきたリオシア国王の子息こそ偶然の出会いから、ゾリーナの胸深く刻みつけられた男性、ルドルフその人だったのだ。
緑豊かなジョージア。ネッドはウェデイング姿で川面を見つめる女を見て、わが目を疑った。淡い金髪に琥白色の瞳の女、名はジョリー。それ以外はわからない。このままでは一族の集まるディナーに遅れてしまう。しかし、わけありげな女を、このまま置いていくわけにもいくまい。ネッドは花嫁姿の彼女を、父や母の待つわが家へ伴った。ジョージアの名家、フォンテイン家へ…
リサは目の前の男の経歴を聞いて頭を振った。男の名はジョン、職業はスパイ。しかし、スパイから足を洗って明るい表の人生を歩みたいという。人材銀行のマネジャーとしては、いったいどこにスパイの就職を斡旋すればよいのだろう。それに映画じゃあるまいし、スパイだなんて…途方にくれるリサだったが、彼女の答えを待つこのコニャックの瞳の男に手をさしのべてやりたくなった。
1867年、メキシコは動乱の時を迎えていた。21歳になるアメリカの上院議員の娘ジニイは、夫スティーヴに従いメキシコに攻めこむディアス将軍の軍勢に加わった。スティーヴが任務で出かけたあと、ひとり残されたジニイは、かつての父の秘書カールと再会する。彼女に思いを寄せていたカールは、ジニイにロシアの公爵サルカノフの通訳になるよう命令が下されていると伝える。スティーヴに事情も告げられないまま公爵のもとへ赴いたジニイは、そこで思いがけぬ話を聞いた。彼女は実はロシア皇帝の娘で、しかもスティーヴとの結婚は無効だと。
中傷に惑わされ行方もわからなかった夫、スティーヴとの突然の再会。しかし、ジニイの心にあるのは喜びにまさる後悔と怯えだった。カールからうけた辱めと暴力、そこから救ったとみせかけて、ジニイとの結婚をせまったサルカノフ公爵。今は、公爵夫人となったジニイは、責めようともしないスティーヴに、かえって深く傷つくのだった。そのあくる日、二人きりで森へ出かける。もう、愛されていないと思っていたジニイを激しく求めるスティーヴ。しかし、かれに、ふっとよぎる冷たさにジニイは愛を確信することができなかった。
はじめに、ほんの少し彼にやきもちを焼かせたかっただけなのに-。カリフォルニアの実業家スティーヴと電撃的な結婚をしたジニイは、夫との些細ないさかいから、思いもかけない方向に波紋が広がっていくことに激しく動揺していた。スティーヴを残し、独りパリに来てしまったのも、本当は、彼に迎えに来て欲しかったからだ。そんな女心を踏みにじるかのように、スティーヴが、イタリアの妖艶なオペラ歌手、フランチェスカと恋仲になっているなんて。お腹には彼の子がすでに宿っている。激しい気性の男、スティーヴに翻弄されるジニイだった。
熱病から記憶喪失になったスティーヴは、その看護をしてくれた女、テレシータと結ばれる。遠いテキサスまで、はるばる探しにやって来たジニイとの再会にも、まるで見知らぬ他人に会っているかのようなスティーヴ。愛と情熱に彩られた二人の思い出が、すべて無になってしまうのだろうか…。ジニイは苦しみを振り払うかのようにパーティーの踊りの輪に加わる。すると、いつの間にかスティーヴが近づき、強引にジニイの唇を奮う。「はじめて会った女なのに、昔から知っているような気がする」-彼はジニイのことが忘れられなくなるのだった。
隅田川につり糸をたれていた二人は、平賀源内と桜兵之介であった。川岸へ視線を向けた源内と兵之介が見たものは、無頼の男どもに追われているひとりの娘であった。兵之介は娘を救ってやった。その可憐な娘は、烏山の浪士泉川作太郎の娘多喜であった。多喜は芝愛宕山寂光院門前の茶屋の主忠兵衛を訪ねたが、まもなく、上州館林六万一千石松平藩の重職菅沼右兵衛の命をうけた紋次の手で、いずことなもなく連れ去られた。菅沼右兵衛と老女蔦枝に無理に薬をのまされた多喜は、そのまま麻布清徳寺墓地に埋葬された。奇怪なことに墓に記された名は楓であった。楓というナゾの女の身代わりに葬られた多喜の運命とは?兵之介・源内の活躍は。興趣満点、角田喜久雄時代長編大作。
バラバラ事件発生ー!男の切断された片腕が、九州宮崎の西都原古墳公園の土中から発見された。血液型と指紋照合の結果、この腕は鎌倉の古美術商『悠雅堂』の主人伊良子為三のものと判明したが、鎌倉の人間の片腕がなぜ九州の地に…?生前、その指には、“男女交合図”の彫り込まれた奇怪な指輪がはめられていたという。悠雅堂の捜索をその息子から依頼されていた『週刊スクープ』の事件記者岬大助と美人と評判の易者ギャル桃花堂桃花の前に、古美術ブローカー、新興宗教の美人教祖など怪しげな人物が浮かび上がってきた。なにやら、悠雅堂が九州のどこかに隠されていることを突き止めた古代インド王朝の莫大な秘宝をめぐって…。シャンドラの秘宝は実在するのか?青春ミステリー。
清潔美人近藤利代子と肉体美人酒田多意子。崇高な使命感に燃えて警視庁入りした2人の先祖は、江戸時代に一世を風靡した名探偵コンビ、同心むっつり右門と岡っ引おしゃべり伝六だった。見えない縁に結ばれて、再び名コンビ(?)が誕生したのである。さっそく痴漢退治とオカマ刺傷事件で名を上げた2人は、鬼の警ら第2課長三河八重子警部の下に配属され、犯罪都市東京に続発する難事件に体当りしていくが…。ベストセラー作家が痛快に描く『夢みる婦警』シリーズ第1弾。
〈真昼の陽射しの下でシェリーを飲もうという彼女の提案に、私はわくわくするほど心動かされた。グラスを掲げて彼女は言った。「あなたの恋に乾杯」私は少し戸惑ったが、彼女に尋ねた。「なぜ私の恋に乾杯したのですか」彼女はにっこりと言った。「あなたならとても素敵な恋をしているにちがいないと思ったのよ」私は少し曖昧な笑みを浮かべた…〉燃える恋の渦中にいながらも、不安に慄く繊細な女性の心を、瑞々しい筆致で描く書下しろ恋愛小説。
第三次世界大戦が勃発。そのさなかに飛びかった核ミサイル群とは別に、終戦直前にケープ・カナヴェラルから複数のロケットが打ち上げられるのが、米ソ両軍によって観測されていた。これらのロケットの正体は何か?知っているのは元宇宙飛行士のコルファックスだけだった。ロークは、第二合衆国軍からコルファックス保護の依頼を受けるが…。
突如、調査隊一行を襲った高重力世界人たちの反乱を避け、カイたちが冷凍睡眠に入ってから、どれほどの時が過ぎたのか。ここは金色の翼竜が空を舞い、大型竜が跋扈する惑星アイリータ。この謎に満ちた星で、長い眠りから覚めた調査隊メンバーを待ちうけていたのは…?人気女流作家が失われた恐竜たちへの追慕をこめて描く傑作シリーズ第2巻。
恒星間を巡り、数多の異星生命体を捕獲してきた名うての狩人、ビリー。とうに引退した彼が、ある日国連から召喚されるー通商条約締結を目前に相手星の過激派が送り込んできた暗殺者を阻止せよ。彼は任務遂行のため、かつて捕らえた最強の生命体、変身獣“キャット”に協力を乞うー彼自身の命と引替に。ビリーの最後の戦いが始まろうしていた。