1989年発売
三鈴化学営業部の遠藤大介は、海外出張を命じられ、アマゾンの奥地イグアラに赴いた。ところが、入国した途端、反政府ゲリラに拉致される。身代金は八百万ドルやがて日本政府との交渉は成立するが、ゲリラは遠藤に銃口を向けた!その時、日本女性が率いるインディオの一団が救出に現れる。緑色に妖しく光る目を持つ彼らは一体何者なのか?そして隠された陰謀とは?南米の秘境を舞台に展開する長篇冒険SF。
英雄ツァラに〈絵を描く術〉を与えられた誇り高き黒鹿部族のトマだが、洞窟の底深く足を踏み入れてはならぬというツァラの掟に背き、“永遠の闇の洞”を越えた。気候の変化による獲物の激減と、妖術師ダク・ツムの出現で、狩猟によって生きる彼の部族が餓死か、南に移住して農耕するか二者択一の危機に瀕しているのだ。だが、掟を破って洞窟に入ったトマを、闇の底で何かが待ち受けていた。長篇神話SF。
春に子熊は母を失くした。巨大な雄熊はひとり大地と闘っていた。ふたつの生命が固い友情で結ばれた夏のある日、ロッキーに狩りの足音が響き始めたー。「薔薇の名前」の巨匠ジャック・アノーが、グリズリー同士の壮絶な死闘、猟師たちとの息づまる戦いなど野生動物の懸命に生きる姿を通して“生きるとは何か”を問いかけた大作。動物小説の大家カーウッドの名作が、壮大かつ美しい映像とともに現代によみがえる。
世紀末ウィーンの華、グスタフ・マーラーの妻アルマ。「絶対的ニンフ」と言われた彼女は、音楽・文学・建築・美術とあらゆる分野の芸術家たちを魅惑し、彼らの創造力を刺激しつづけた。天才音楽家マーラー、バウハウスの創設者グロピウス、劇作家・詩人のヴェルフェル、画聖クリムト、そして表現主義を代表する画家ココシュカ-彼らはアルマが存在したゆえに、その才能をみごとに開花させる。だが多くの芸術家の愛をほしいままにした彼女が、本当に求めていたものは、何か?フランスの元文化大臣、著名な女性ジャーリストのジルーが鮮烈に描く、美神アルマの苦悩と実像。
日本が生んだ伝説の麻薬といわれる“甲竜”が世界各地に出回り始めた。各国機関から連絡を受けた内閣調査室は一人の若手係官に特命を下す。中毒者が巷にあふれ情報提供者が次々と殺されるなか、彼は怪しげな宗教団体を隠れ蓑に地盤を広げる巨大麻薬組織へと潜入し、命を賭して組織の中枢に迫りその巨悪を砕こうとする。だが、内調本部にいた裏切り者によって彼の母親が拉致された。若き天才捜査官の打つ手は…?-長篇痛快ロマン。
水と火のごとく相反する性格を持ちながら、固い友情に結ばれた大久保と西郷。倒幕運動を推進し、維新の大業を成すが、「征韓論」をめぐって激しく対立。歴史を大きく動かした大久保利通の足跡を描く長編傑作。
ーパリの路上でカメラマンが何者かに暗殺された。1枚のスクープ写真を残して。写っていたのは、イスラエル謀報機関モサドの長官と謎のパレスチナ人。敵対しあう両者がなぜ?写真を託された新聞記者マークも死の警告をうける。イスラエルの地下核実験強行、クウェートの石油涸渇という緊迫した中東情勢の裏に恐るべき陰謀が…。-元駐クウェート・スペイン大使が専門知識を駆使して書き下ろした迫真の国際冒険小説。映画化決定。
今なお最も尖鋭なメタフィクションであり続け、近代世界のモデルとして聳立する小説『ドン・キホーテ』。手垢にまみれたドン・キホーテ像を複眼的に見つめ直し、セルバンテスのテクストに則して、本来の豊饒さと面白さを救い出す。ドン・キホーテ神話の解体へ。
パルナソスの王女ゾリーナは、父亡きあと、ハンプトン・コート・パレスの一画に母に暮らしている。そんなある日、ビクトリア女王からゾリーナに縁談が言い渡された。60近いリオシア国王と結婚ですって!驚きよりも憤りをおぼえるゾリーナは晩餐の席で二重の衝撃を味わうことになった。使者としてやってきたリオシア国王の子息こそ偶然の出会いから、ゾリーナの胸深く刻みつけられた男性、ルドルフその人だったのだ。
緑豊かなジョージア。ネッドはウェデイング姿で川面を見つめる女を見て、わが目を疑った。淡い金髪に琥白色の瞳の女、名はジョリー。それ以外はわからない。このままでは一族の集まるディナーに遅れてしまう。しかし、わけありげな女を、このまま置いていくわけにもいくまい。ネッドは花嫁姿の彼女を、父や母の待つわが家へ伴った。ジョージアの名家、フォンテイン家へ…
リサは目の前の男の経歴を聞いて頭を振った。男の名はジョン、職業はスパイ。しかし、スパイから足を洗って明るい表の人生を歩みたいという。人材銀行のマネジャーとしては、いったいどこにスパイの就職を斡旋すればよいのだろう。それに映画じゃあるまいし、スパイだなんて…途方にくれるリサだったが、彼女の答えを待つこのコニャックの瞳の男に手をさしのべてやりたくなった。
1867年、メキシコは動乱の時を迎えていた。21歳になるアメリカの上院議員の娘ジニイは、夫スティーヴに従いメキシコに攻めこむディアス将軍の軍勢に加わった。スティーヴが任務で出かけたあと、ひとり残されたジニイは、かつての父の秘書カールと再会する。彼女に思いを寄せていたカールは、ジニイにロシアの公爵サルカノフの通訳になるよう命令が下されていると伝える。スティーヴに事情も告げられないまま公爵のもとへ赴いたジニイは、そこで思いがけぬ話を聞いた。彼女は実はロシア皇帝の娘で、しかもスティーヴとの結婚は無効だと。
中傷に惑わされ行方もわからなかった夫、スティーヴとの突然の再会。しかし、ジニイの心にあるのは喜びにまさる後悔と怯えだった。カールからうけた辱めと暴力、そこから救ったとみせかけて、ジニイとの結婚をせまったサルカノフ公爵。今は、公爵夫人となったジニイは、責めようともしないスティーヴに、かえって深く傷つくのだった。そのあくる日、二人きりで森へ出かける。もう、愛されていないと思っていたジニイを激しく求めるスティーヴ。しかし、かれに、ふっとよぎる冷たさにジニイは愛を確信することができなかった。
はじめに、ほんの少し彼にやきもちを焼かせたかっただけなのに-。カリフォルニアの実業家スティーヴと電撃的な結婚をしたジニイは、夫との些細ないさかいから、思いもかけない方向に波紋が広がっていくことに激しく動揺していた。スティーヴを残し、独りパリに来てしまったのも、本当は、彼に迎えに来て欲しかったからだ。そんな女心を踏みにじるかのように、スティーヴが、イタリアの妖艶なオペラ歌手、フランチェスカと恋仲になっているなんて。お腹には彼の子がすでに宿っている。激しい気性の男、スティーヴに翻弄されるジニイだった。
熱病から記憶喪失になったスティーヴは、その看護をしてくれた女、テレシータと結ばれる。遠いテキサスまで、はるばる探しにやって来たジニイとの再会にも、まるで見知らぬ他人に会っているかのようなスティーヴ。愛と情熱に彩られた二人の思い出が、すべて無になってしまうのだろうか…。ジニイは苦しみを振り払うかのようにパーティーの踊りの輪に加わる。すると、いつの間にかスティーヴが近づき、強引にジニイの唇を奮う。「はじめて会った女なのに、昔から知っているような気がする」-彼はジニイのことが忘れられなくなるのだった。
隅田川につり糸をたれていた二人は、平賀源内と桜兵之介であった。川岸へ視線を向けた源内と兵之介が見たものは、無頼の男どもに追われているひとりの娘であった。兵之介は娘を救ってやった。その可憐な娘は、烏山の浪士泉川作太郎の娘多喜であった。多喜は芝愛宕山寂光院門前の茶屋の主忠兵衛を訪ねたが、まもなく、上州館林六万一千石松平藩の重職菅沼右兵衛の命をうけた紋次の手で、いずことなもなく連れ去られた。菅沼右兵衛と老女蔦枝に無理に薬をのまされた多喜は、そのまま麻布清徳寺墓地に埋葬された。奇怪なことに墓に記された名は楓であった。楓というナゾの女の身代わりに葬られた多喜の運命とは?兵之介・源内の活躍は。興趣満点、角田喜久雄時代長編大作。
バラバラ事件発生ー!男の切断された片腕が、九州宮崎の西都原古墳公園の土中から発見された。血液型と指紋照合の結果、この腕は鎌倉の古美術商『悠雅堂』の主人伊良子為三のものと判明したが、鎌倉の人間の片腕がなぜ九州の地に…?生前、その指には、“男女交合図”の彫り込まれた奇怪な指輪がはめられていたという。悠雅堂の捜索をその息子から依頼されていた『週刊スクープ』の事件記者岬大助と美人と評判の易者ギャル桃花堂桃花の前に、古美術ブローカー、新興宗教の美人教祖など怪しげな人物が浮かび上がってきた。なにやら、悠雅堂が九州のどこかに隠されていることを突き止めた古代インド王朝の莫大な秘宝をめぐって…。シャンドラの秘宝は実在するのか?青春ミステリー。
清潔美人近藤利代子と肉体美人酒田多意子。崇高な使命感に燃えて警視庁入りした2人の先祖は、江戸時代に一世を風靡した名探偵コンビ、同心むっつり右門と岡っ引おしゃべり伝六だった。見えない縁に結ばれて、再び名コンビ(?)が誕生したのである。さっそく痴漢退治とオカマ刺傷事件で名を上げた2人は、鬼の警ら第2課長三河八重子警部の下に配属され、犯罪都市東京に続発する難事件に体当りしていくが…。ベストセラー作家が痛快に描く『夢みる婦警』シリーズ第1弾。