1989年発売
街中の白い目を逃れて、ケヴィンとセイディーが故郷ベルファストから駆け落ちして4年。お金も、家も、たしかな仕事もなにも持っていない。ロンドンへ、リヴァプールへ、ふたりは、自分たちの本当の場所をさがして移り住む。やがて、ちいさな新しい家族ブレンダンも加わった。だが、ようやく落ち着いたチェシャーの田舎暮らしもつかのま、農園主の突然の死が、一家の運命をまたもや変える…。若い夫婦と赤んぽう、そして犬のタムシンは、ポンコツのワゴン車を改造して、ふたたび旅立っていく。カトリックの夫、プロテスタントの妻。旧世代がけっして越えることのできなかった、あの厳しい宗教的対立を、この若い夫婦は身をもって乗りこえようとする。イギリスの女性作家ジョアン・リンガードの感動の5部作、待望の完結篇。
マーサズ・ビンヤード島で生まれたエドワード・マナリングは、この島に生を亨けた者のならわしどおり船乗りとなった。今はマサチューセッツ州議会所属の沿岸航路定期船アシーナ号の船長をしている。そこに“ジェンキンズの耳の戦争”という奇妙な名前の戦争が勃発した。乗組員はそのままに、アシーナ号はイギリス海軍の購入するところとなり、マナリングは正規のイギリス海軍将校となった。アシーナ号はただちにジャマイカ島南岸の、カリブ海のイギリス海軍の基地ポート・ロイアルに向かった。1739年10月のことである。泊地にはすでに戦列艦が勢揃いしていたル
ただひとつ、ずっとわかっていることは、この恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ(「白河夜船」)。あの時、夜はうんと光っていた。永遠のように長く思えた。いつもいたずらな感じに目を光らせていた兄の向こうには、何か、はるかな景色が見えた(「夜と夜の旅人」)。また朝になってゼロになるまで、無限に映るこの夜景のにじむ感じがこんなにも美しいのを楽しんでいることができるなら、人の胸に必ずあるどうしようもない心のこりはその色どりにすぎなくても、全然構わない気がした(「ある体験」)。
外国で殺した男の形見として持ち帰った1本の手に復讐される話(「手」)、雪深い山小屋に一冬閉じこめられ、遂に発狂してしまう男(「山の宿」)、眠っている間に無意識のうちにテーブルの上の水を飲んだりする一種の「人格遊離〈ドッペルゲンガー〉」をテーマにした「オルラ」など、11篇の怪奇短篇を厳選して新訳。
地球の温暖化によって気候が大きく変動し、世界の農業生産に大きな影響が生じる。これを重く見た米ソは火山を人工的に噴火させて気温の低下を図る。しかし、海底地震が誘発して南極大陸の巨大な氷棚が崩壊。世界の各地を襲う大波は、次々といくつもの国々を呑みこんでゆく。作者が地球滅亡への悲劇を、鋭く描く巨大フィクション長編大作。
少年アモンは、竜を追っていた。狩竜の一族の乱獲を恐れ、大樹ヴァルハラに群れているはずの竜が、何故?竜は、アモンの見いてる前で、近くの森へと降り立った。追うアモン。そこでは、ヴィジルと名乗る少女との出会いが待っていた。それが、すべての始まりだったのだ-。生きながら石と化す竜。野を駆け、街を喰らい、広がり続ける砂漠・大喰らい。砂人と組み、神となることを夢見る男たち。そして、ヴィジルの正体は…?
資材課長の岡本努は、宮本と名乗る青年の訪問をうけた。「どうしても会ってほしい男がいる」というのだ。つれだって出かけたスナックで待っていたのは、自分とそっくりの男であった。しかも同姓同名、聞けば出身地も生年月日も、そして親の名前まで同じである。一卵双生児か、だが、秘密を知っているらしい宮本青年の口から意外な話が…。この「思いがけない出会い」をはじめ、「夜風の記憶」「血ィ、お呉れ」「乾いた旅」など、眉村SFの秀作6篇を収録。
愛する夫に肉体のすみずみまでを開発された緋奈子は、夫の単身赴任の報に愕然とする。それも海外に2年間…。熟れきった身体に噴きあがる欲望を満たす術もなく、人妻は男を求めてさすらう。たくましい男に貫かれる期待を胸に、真新しい下着をしとどに濡らして、不倫妻は歓喜に悶え狂っていく-。
株取引に才能を発揮する大富豪夫人、赤井桂子は夫の浮気に耐えかね、別居生活に踏み切る。しかし味方と思っていた夫の秘書に豊満な肉体を嬲り抜かれ性に飢えていたことを思い知った。そんな時、学生時代の恋人に出会い、汚辱にみちた快楽への欲望が蘇える。やがて女体は宝石のように磨かれて-。
打倒平家の旗のもとに鎌倉を進発した源氏軍と、意気あがらぬまま東下した維盛ひきいる頼朝征討軍。両軍は、富士川をはさんで対峙する。“水鳥の羽音”で敗走した平家には、著者一流の解釈がある。黄瀬川の陣で、末弟義経と初の対面をした頼朝。いよいよ活気づく源氏勢に手を焼く平家は、腹背に敵をうけた。木曽義仲の蜂起は平家一門の夢を劈き、北陸路もまた修羅の天地であった。
寿永二年は、源平それぞれに明日の運命を賭けた年である。ひとくちに源氏といっても、頼朝は義仲を敵視しているから、三つ巴の抗争というべきであろう。最初の勝機は義仲がつかんだ。史上名高い火牛の計で四万の平家を走らせた倶利伽羅峠。勝ちに乗じた義仲は、一気に都へ駈けあがる。京洛の巷は阿鼻叫喚。平家は都落ちという最悪の事態を迎えるが、一門の心と心は決して同じではない。
囚われの身ながら潯陽楼の風光に見惚れた宋江は、即興の一詩をそこに残したが、謀反人の烙印を押され、あわや刑死という寸前、晁蓋をはじめとする梁山泊の面々に救い出された。二丁斧を使う李逵や姦婦巧雲を成敗した楊雄も仲間に加わり、梁山泊の勢いは、日に日に旺となる。ここにその動きを警戒するのが、地元豪族の祝氏一族。ついに両者は激突し、悪戦苦闘の末、泊軍は勝利を収める。