1989年発売
打倒平家の旗のもとに鎌倉を進発した源氏軍と、意気あがらぬまま東下した維盛ひきいる頼朝征討軍。両軍は、富士川をはさんで対峙する。“水鳥の羽音”で敗走した平家には、著者一流の解釈がある。黄瀬川の陣で、末弟義経と初の対面をした頼朝。いよいよ活気づく源氏勢に手を焼く平家は、腹背に敵をうけた。木曽義仲の蜂起は平家一門の夢を劈き、北陸路もまた修羅の天地であった。
寿永二年は、源平それぞれに明日の運命を賭けた年である。ひとくちに源氏といっても、頼朝は義仲を敵視しているから、三つ巴の抗争というべきであろう。最初の勝機は義仲がつかんだ。史上名高い火牛の計で四万の平家を走らせた倶利伽羅峠。勝ちに乗じた義仲は、一気に都へ駈けあがる。京洛の巷は阿鼻叫喚。平家は都落ちという最悪の事態を迎えるが、一門の心と心は決して同じではない。
囚われの身ながら潯陽楼の風光に見惚れた宋江は、即興の一詩をそこに残したが、謀反人の烙印を押され、あわや刑死という寸前、晁蓋をはじめとする梁山泊の面々に救い出された。二丁斧を使う李逵や姦婦巧雲を成敗した楊雄も仲間に加わり、梁山泊の勢いは、日に日に旺となる。ここにその動きを警戒するのが、地元豪族の祝氏一族。ついに両者は激突し、悪戦苦闘の末、泊軍は勝利を収める。
最晩年の著者が、心血を注いで築きあげた壮大な中国絵巻!一騎当千の豪雄がそろい、民衆の与望をになって起つ梁山泊軍は、野火のごとく勢いを増す。権勢の人、高〓@42C6は、一万四千の大軍をもよおして泊軍を討たんとする。その秘密兵団こそ、連環馬軍であった。さしもの泊軍も色を失い、梁山泊始まって以来の大損害をこうむる。しかし梁山泊の智恵者は王手を逆にとり、難局を乗り切った。
ヤクザ組織を近代的な企業へと変身させた宝田徳一は、組は部下に任せ、Q薬品を乗っ取り、社長に就任した。飽くなき野望の実現に挑む宝田は、ついに政界への進出を画策、市長選への出馬を決めた。一方、Q薬品では、動物を使って恐怖の実験を続けていた…。波瀾万丈の宝田徳一の極道人生ピカレスク・ロマン完結編。
涼太郎と岩田は生まれも育ちも六本木。幼なじみの悪友で、ナンパもケンカも、いつも、つるんでやってきた。涼はヌード専門のカメラマン。岩田は代々続いた魚屋をシーフードカフェに改め、シェフに納まった。こんな2人が、出稼ぎ外人モデルと関わりを持ったことから、物語は始まる…。仲村トオル主演で東映映画化。
鉄人・五条友彦に政府筋から秘令が下る。「遺伝子学の権威、折原博士が、兇悪集団『さそり』に擢われた。早急に救出せよ」と。『さそり』の背後には『北のバラ』というソ連の黒い組織がある。もし手遅れの場合、博士の研究が盗用され、狂暴人間が横行するはずだ。五条は、死線を越えながら、ソ連に拉致された博士を探し求めるが…。
「だ、だれか来てくれ!殺される」松江・宍道湖畔のホテルから落合和彦が墜死した。奇しくも、恋人千秋もスイス・レマン湖のホテルで墜落死していた。この死の相似に疑惑を抱いた妹玲子は、週刊記者浦上伸介とともに真相を追う。驚くべき奇怪な事実、そして容疑者には鉄壁のアリバイが!アリバイ崩しの名手の長編力作。
「その結婚はおやめなさい。ハネムーンの帰り道、棺で戻ってくるつもり!?」箱入娘・麗子の結婚式直前、正体不明の女からの謎めいた忠告に、名門・南条家は大パニック。一計を案じた母は、麗子の双子の妹で暗黒通りの女ボス・美知に助けを求めたが…。純情可憐のんびり姉とケンカならめっぽう強い妹の、対照的な2人のお嬢さまがまきおこす恋と冒険。ちょっぴりロマンのユーモアミステリー。
艶めかしいレズビアンの世界と、現代っ子らしい男女の野心が思わぬ悲劇を呼びこむ表題作。少女の残酷な内面心理を鋭く抉る「美少女」。片や資産家、一方は零落の身の同級生の女性2人が偶然出会ったとき、資産家の女性が支払った思わぬ代償を描く「十四年目の友情」など、現代社会に潜む人間内面の恐怖を綴る心理ミステリー集。
無敵の匈奴軍を塞外で打ち破り、武勲をあげた前漢の名将・霍去病の死の謎を描く表題作をはじめ、春秋末期の呉越戦争期を舞台に、2人の英雄、伍子胥と范蠡に、絶世の美女、西施を配した「わが愛しの西施」、戦国四君の1人、楚の名宰相・春申君の悲劇をあつかった「残春記」など、7篇を収録した中国古典伝奇ミステリー集。
休日を利用して、オレは友人とハンティングに出かけた。猟のほうはさっぱりだったが、途中、とんでもないものを発見してしまった。その名車は、ふとのぞき込んだ納屋の中にあった。名車の持ち主は、ある富豪のものだった。だが、その富豪は謎の失そうをとげていた…。また、オレの探偵趣味が頭をもたげはじめ、事件にクビをつっこむことになってしまった。「最後に笑う者」につぐ、ガース・ライランド・シリーズ第2弾。
天正10年、本能寺の変。その直後の山崎の戦いで、羽柴秀吉、明智光秀を破る。秀吉に嫡子・日金丸(後の秀正)誕生。慶長5年、秀正・徳川家康連合軍、石田三成を関ケ原に破り、大坂城の異母弟・秀頼を倒す。慶長8年、秀正、将軍となり、名古屋に幕府を開く。日本の公用語は名古屋弁になる。泰平と狂乱の名古屋時代260年。日本史をパスティッシュした、長編時代小説。
絵のように美しい兄妹、潤と茜。幼いふたりの胸底に芽ばえた“新しいママ”和歌子への小さな嫌悪が恐ろしい惨劇を招く表題作。牝の三毛猫と濃密に暮らす独身中年男の身近で起こる謎の連続完全殺人を描く「共犯関係」。都市の孤独と人の心の不可解さが、思いがけない殺意と狂気を呼びさます。サイコ・スリラー4編。
第一次大戦下、フランスの前線部隊に起った反乱をめぐる兵士・市民の物語である。12人のふしぎな兵士を従えた一伍長の受難をキリストの受難に二重写しにしつつ、「生きる苦悩と救い」という人類永遠のテーマを、戦争という人間悪の集約ともいうべき場で執拗に追及したフォークナー破格の思想小説。