1989年発売
『フロベールの鸚鵡』は、面白おかしい冗談と真摯な叙述を驚くほど巧みに交錯・結合させた小説である。ここには、文学的考証があり、文学評論があり、文学的実験の展開がある。政治、経済、テクノロジー、いずれ分野においても、あらゆる問題に手ぎわのいい即答が要求される現代にあって、この世には真の答えなど存在しない問題もあるのだということを、ジュリアン・バーンズは敢然と、しかも典雅なユーモアをもって我々に想起させる。
類まれな女体の資質に恵まれた未亡人・青柳美春は、東工事会長・東林太郎の専任秘書兼セックス・パートナーとして採用された。好色漢で聞えたワンマン会長のこと、入社試験は老会長自ら、美春にファックを迫るという特別テストの上々の結果である。老会長の指南よろしきを得て、美春は、東工商事の浮沈を賭けた難局に、名器にモノをいわせたセックス・テクニックを存分に発揮し、東工商事の安泰と自らの重役昇進を勝ち取ってゆく。-強烈なセックス・アピールを持つ未亡人秘書のめくるめく性の饗宴を円熟の筆致で描く長編官能小説。
私か?私はなにひとつ怖くない、老いぼれの私立探偵だ。失うことのできる生命も、ほとんど残っていない。横丁のご隠居というのが、私の通り名だ。昔を言えば、警視庁でも指折りの、こわもてのする警部補だった。定年まで、四十年から勤めあげたのだ。いまは横丁のマンションで、2匹の猫と暮らしている。だが、この横丁でさえ、ひとは悩みを持っている。そして私のところへやってくる。-めったには来ないが。人情の機微に触れるハード・アクション&ミステリー。
広大な南極大陸の一角、ペンギン王国に未曾有の危機が迫っていた。ウェルダン将軍率いるアマゾネス放国軍が戦争をしかけてきたのだった。圧到的な軍事力にペンギン王国は全くなす術がなく、王女シュナ迄もがさらわれてしまう。アイスキャッスルは陥落寸前。しかし今、南極に勇者が立ち上がった。彼の名はペンギン王国王子、アンデル。そしてサスケ率いるペンギン忍者隊。アンデル達は、南極の守り神、神鯨モビィを目覚めさせ、仲間達を守る為に旅立つ。果してシュナを助けだし、南極大陸に平和を取り戻す事ができるだろうか?白き勇者の伝説が今、記されようとしていた。
11歳になる双子の兄妹が姿を消した。翌日には母親も…。捜査にのりだしたマイケル・ソーン警部補は、不思議な事実に突き当たった。犯人とおぼしき孤児院育ちの男には、双子の兄がいた。その兄というのが、失踪した母子のいまは亡き夫であり父親だった。この意味するところはいったい何か?もつれた糸をほぐそうとするソーンを尻目に、犯人は着々とたくらみをすすめていた。妄執に憑かれた男の狂気を描く深夜のミステリ。
全身の筋肉を硬直させて死に至らしめる恐るべき神経ガス〈マネキン〉-ドレグラー化学興業は新開発のこの化学兵器をネバダの工場から西海岸まで列車輸送することにした。イラク政府との密約に基づく計画だった。だが、それを察知したイラン人テロリストが列車に爆弾を仕掛ける。やがて爆発によって噴出したガスは、列車の乗員を、沿線の住民を次々と襲った。暴走する死の列車を阻むすべはあるのか?力作パニック・サスペンス。
恋人には内緒で、愛人バンクに入会した女子大生・奈緒美。月50万でダンディな紳士と最初の契約を結んだまではよかったが、男はサディストの本性を剥き出して奈緒美をいたぶる。必死の思いで逃げ帰った奈緒美だったが、嫉妬に狂う恋人の新たな暴虐が待ちうけていたー。被虐の悦楽に目覚めていく女子大生を描くハード官能ロマン。
風間カホ、15歳の夏、子持ちの中年画家・青木丈史に一目惚れ。なんとか画伯の気をひこうと夏休み、ベビーシッターをかってでた。だけどこの日吉丸、ぜんぜんカホになつかない。ことあるごとにママとくらべられる。エッ!?ママって確か死んだはず。「画伯〜ママって誰のことですか」画伯によると、画伯には婚約者がいる。けれど親の反対にあって彼女は家にとじ込められているという。大ショックのカホだったけれど涙をこらえて画伯のために愛のキューピッド。まってて日吉丸、ママにあわせてあげるから。
「愛し、愛される、これが理想である。ただし、同一人物について、という条件が必要だろう。」-淡い光と影のなかを揺れまどう若者たちの姿を描いたみずみずしい青春小説。原題のLe Grand ´Ecartとはバレー用語で「両脚を広げて床にぴたりとつけること」であるが、幼い少年が一人の青年へと成長していく暗喩にもなっている。