1989年発売
大奥女中を絹夜具の上で姦している前髪立ての若衆…すさまじい筆勢で描かれた秘戯画を深川いろは橋のたもとで密かに売っていたやくざ男の後を追っていた岡っ引きの万蔵が、やくざ男と浪人の一団に無惨に殺害された現場に出現した白羽二重の孤影は破月樹太郎。徳川12代将軍家慶の愛妾お以登ノ方の養父押田伊勢守石翁の向島下屋敷を訪れたのは、心形刀流の使い手雑賀隼人であった。権力者石翁とその腹心雑賀がたくらむ陰謀とは?破月樹太郎と名乗った若侍こそ、北町奉行白木左京将監を父とする白木峻太郎であった。人呼んで“きまぐれ峻太郎”ともいわれる颯爽たる若殿が秘戯画にまつわる江戸の怪事件に挑戦!狩野派絵師と京風土佐派絵師との争いの行方は?-興趣満点の時代長編快作。
“翔んでる女刑事”となって、世の凶悪犯罪に立ち向かうー気高い使命感に燃える純情美人近藤利代子と肉体美人酒田多恵子は、泣く子も黙る警視庁警ら二課の新人婦警である。鬼と恐れられる名物二課長三河八重子警部のモーレツなしごきにもめげず、ときには超ビキニ姿ど男どもを悩殺し、あるときはスケ番女子高生に扮し、悪党どもに立ち向かう…。恋と笑いのハラハラ名コンビが、凶悪犯罪に真っ向うから挑むベストセラー『夢みる婦警』シリーズ第二弾。
京都の旅荘八十八で、有名カメラマンが刺殺された。手掛かりは、死体の傍らにあった芥川龍之介の名作『羅生門』と、紫色の可憐な花〈羅生門蔓〉の栞だった。このツアーを企画した夏木梨香は、姉の香奈を通して警視庁の小早川警視正に助けを求めた。だが、解決の糸口が見つけられぬまま、伊豆の蓮台寺で第二の殺人が起こった…。現場に残されていた『羅生門』と栞の意味は?さらに第三の殺人はあるのか?ミステリーの名手が贈る旅情あふれる本格推理。
首都をめぐる9番目の環状道路、リングロード・ナイン。その沿道に生起する黄昏色の希望と失意をクールに描くサバービア・ストーリーズ。26人の登場人物が連鎖して、時に甘く、時に苦い物語を演じる。男と女、出会い、わかれ、そして、もういちどはじめから。時速70キロで展開するわれらの時代のドラマ。
誰かを好きだと言ってしまいたくて、誰かを嫌いだと言ってしまいたくて、でも、それがとても恐いことを招きよせてしまうような気がしてー。甘えと優しさが毀れると、その向う側には闇と憎悪がぽっかり口をあけている。サイモンとガーファンクルの名曲にのせて、80年代の《青春》の重さを描く15の物語。
17歳で子供を産み、しかもすでに夫に置き去りにされていたメリディアンが、もっと広い世界と過去と現在を意識しはじめたのは1960年4月半ばのある日のことだった。黒人運動にかかわり、世の中の矛盾に苦悩し、挫折しながらも選挙権啓蒙運動を続けたのは、曽母や母に流れる黒人民族の歴史の重さ故であった。“カラーパープル”の著者による自伝的長篇小説。
フィリピンのアメリカ空軍基地から、ベトナムの戦場へ。-熱風、手に負えぬ部下、そして奔放な女たち。極限状態のもとでの友情を、胸を震わせる文体で描く。
「ジェイク、あたし脅迫されてるの」そう言って、ラジオのスター歌手ネルは姿を消した。彼女の元恋人を訪ねてみると、出くわしたのは何と相手の射殺体。おまけに、追い討ちをかけるように当の死体が失踪し、ジェイクの困惑は頂点へ…。1930年代のラジオ界を舞台にお馴染みマローン、ジェイク、ヘレンが活躍するユーモア・ミステリ、待望の文庫化。
目的も知らされず、未開の惑星デルマク・Oに送り込まれた14人の男女。使命を告げるはずだった通信はメッセージの受信中に途切れ、やがて一人また一人とメンバーが殺されはじめた…。謎めいた建造物が聳え、物質をコピーする生物が俳徊する、この星に閉じ込められたまま、彼らは狂気に蝕まれてゆくのか。ディックがつむぐ、逃げ道なしの悪夢世界。
1931年8月24日。この日、7人の人物が上海の地を踏んだ。ギャング一味の4人は航空便、女性新聞記者とそのフィアンセは船便、そしてスパイがひとり列車で。しかもいかなる運命のいたずらか、彼らはみな同じ場所へと足を向けたのだ。そう、フラミンゴ・カフェ、上海でも指折りのナイトクラブへ。オーナーは謎めいた男ハリー・バード。これで役者はそろった。満州事変前夜の上海を舞台に繰り広げられる、いまひとつの〈カサブランカ〉。
恋愛における男のエゴイズムを冷徹に分析した「アドルフ」、自堕落な若き日の回想「赤い手帖」、スタール夫人と妻をモデルに愛の苦悩を描く「セシル」。フランス心理小説史上に不朽の名をとどめるコンスタン3部作。
共に軍神としてまつられ、理想の明治人として崇敬されてきた、陸軍大将・乃木希典と元師・東郷平八郎。しかし、伝説の影に隠れたその実像を知る人は余りにも少ない。明治を象徴する二人の軍人の対照的な生き様を通じて、人間の生き方とリーダーのあり方の本質に迫る感動の大作
平成51年の東京IC(インテリジェント・シティ)に一大事件が勃発した。人間に長寿と健康をもたらす王乳の開発に貢献した和久努太郎が、行方不明になった。東京ICの警備担当の沖、松原両巡査は、今では国際特殊観光地区として江戸時代の遊廓を復元した吉原に、足を踏み入れた時、殺人事件に遭遇してしまった。和久総裁の足取りも吉原の中にあると思われ、その捜索で再び吉原に入った両巡査の目前で、第二の殺人が起きた。そして怪人21面相からの犯行声明も舞い込んだ。和久総裁誘拐と連続殺人事件の解明に関わった若い巡査の活躍は…?