1990年10月1日発売
大晦日の夜。街じゅうがパーティで浮かれ騒ぐなか、刑事と鑑識技手で混みあうそのアパートだけは、ひんやりと重苦しい雰囲気に包まれていた。廊下には胸にナイフを突き立てられたベビーシッターの娘、そして幼児用ベッドには枕を押しつけられて窒息死した赤ん坊の死体があったのだから。パーティから帰宅して死体を発見した若夫婦の話から、赤ん坊が養子だと知ったキャレラとマイヤーは、実母を探すかたわら、ベビーシッターの娘にふられた元ボーイフレンドの行方を追った。一方クリングは、大晦日の晩に命を救ったプェルト・リコ人から、大がかりな麻薬取引の情報を流すともちかけられていた…。寒風吹き荒ぶアイソラの街で二つの凶悪犯罪に取り組む87分署の刑事たち-シリーズ40作目を飾る話題の大作。
時間警察すなわち震動守護者が支配している超巨大ロボット船オールド・マンがついに発進した。目的地は太陽系帝国以外にはない。このオールド・マンの侵入をゆるせば、太陽系帝国が破滅の危機に瀕することはまちがいない。ローダンは4万隻の艦隊に総攻撃を命じた。だが、テラナーの砲撃はことごとく敵のパラトロン・フィールドによって超空間にそらされてしまう。そこでローダンは、フィールドを破壊しようとハルト船とともに「クレスト4」で奇襲をかけるが…。
人類宇宙との再接触を果たした惑星アルタの人々の前に、恐るべき敵が姿を現わしたー人類の殱滅をもくろむ異星人ライアルが、その包囲網を着々とせばめつつあったのである。圧倒的な敵軍事力の前に、人類の敗北は必至。頼みの綱は地球の強大な軍事力だが、地球への超空間通廊は、アンタレスの超新星化で崩壊している。かくなるうえは、放射線の充満する危険なアンタレス星雲を、一命を賭して横断する道しかない。かくして、形勢逆転を狙う決死の〈ヘルダイバー計画〉が発動されたが…好評宇宙冒険SF『アンタレスの夜明け』の続篇登場。
アンドルー・バーチは、アストラダイン社でも一、二を争うスゴ腕カンパニーマン。ライバル企業を出し抜くためには、盗聴、謀略、誘拐と手段を選ばない。だが、今夜の任務は単純な尾行だ。バーチは相棒ネロとともにプルトニウム駆動機を駆り、単座機に乗るターゲットを空中で追跡していく。ところが突然、ターゲットが思いがけない行動をとり、追跡は不可能になってしまった。何者かが、バーチを危地におとしいれるべく、間違いだらけの命令書を渡していたのだ…。
アストラダイン社きってのカンパニーマンのバーチは、社内抗争に巻きこまれ、だれが味方かもわからないような状況に陥った。長年組んできた相棒さえ、頼りにならない。命令系統も混乱し、社内の他部署の人間に命を狙われる始末。さしものバーチも、会社への忠誠心はどんどん失せていく…。ついにバーチが怒りを爆発させる日がやってきた。限定核戦争後、いくつもの巨大企業が社会のすべてにおいて権力を握った近未来を背景に炸裂するハードボイルド・アクション。
惑星トリプレットの古代遺跡にある不思議な〈トンネル〉-それは、科学が異常に発達したシャムシール、呪文で精霊を呼びだせるカリックスのふたつの異世界に通じている。〈二十世界〉を統治する星間政府は管理局を設立し、トリプレットへの無断立入りを禁止してきた。だが、惑星オータリスのはねっかえり女子大生ダナエは、大金持ちの父親のコネでトリプレット調査の資格を手に入れた。経験豊富な案内人ラヴァジンを雇い、勇躍、ダナエは異世界へとおもむく…。
惑星トリプレットの〈トンネル〉が通じている異世界シャムシールとカリックスは封建主義的な価値観が支配する世界。地元の慣習にうといダナエは、ラヴァジンの制止も振りきり、トラブルばかり巻き起こす。しかし、そんなダナエが、偶然目撃してしまったのは、二つの世界どころか自分の世界にまで影響するほどの恐るべき陰謀だった…。冒険SFの名手ザーンが、元気いっぱいの女子大生をヒロインに、SFとファンタジイの両方の面白さを詰めこんで描く一大冒険譚。
自業自得とはいえ、ガリオン一行に愛人を殺害されたグロリムの尼僧チャバトは復讐鬼と化した。だが、高僧アガチャクとマーゴスの王の面前で即座に私怨をはらすわけにはいかなかった。なにしろ、ガリオンたちはマロリー皇帝暗殺を企む人物を護送する任務を負っているのだ。ただひたすら機会を待つうちに、やがて事態は意外な展開を見せはじめた。なんと、暗殺者は偽ものだったのだ。となれば、もはやなんの遠慮もいらない。今までこらえていた憤怒がついに爆発し、尼僧の口から不吉な呪文がこぼれ出た。悪魔を呼び出す禁じられた呪文が。
ふとした南の国へのあこがれから、騎士の身分を捨てることになったエルガーノは、放浪の旅の道すがら、旅篭や酒場のけむりの中、人びとに歌い語る。猛だけしい戦さのさまを、海の王国の美しい女王の恋物語を…「エルガーノの歌」、雪をいただく山の上にひとりで棲んでいた神ロムセイは、数百年ぶりに訪れたふもとの村の狩人の願いに応え、花嫁として村へ下った。だが、ロムセイのあまりの美しさは狩人を破滅へ導いていく「黄金の髪のロムセイ」、十字軍兵士とエジプトの少女の霊の物語「ファラオの娘」、など珠玉のファンタジイ短篇13篇を収録。
メキシコ湾に浮かぶ巨大な石油採掘デッキ“シー・ウィッチ”。石油王ワース卿が最新の科学技術を駆使して建造したこの装置は安い石油の大量供給を可能にした。だがそれは石油市場を陰で支配する男たちには許すことのできない事態だった。石油価格の下落を防止するため、世界有数の爆破の戦門家クロンカイトにシー・ウィッチの破壊が依頼される。周到かつ巧妙な手段でワース卿を追いつめてゆくクロンカイト。シー・ウィッチ破壊のため、彼がとった驚異の作戦とは?巨大な海の魔物をめぐる息づまる攻防戦を王者マクリーンがスリリングに描く。
ピュリッツァー賞を受賞したアメリカのジャーナリスト、ポール・スタッフォードは、殺人を犯す夢を何度も見ていた。その夢を彼は短篇小説にして発表していく。そんなある日、CIAの捜査官が彼を訪ねてきた。小説の内容がどれも実際に起きた殺人事件と一致するというのだ。同じ頃、米ソの間では画期的な相互防衛条約の締結が迫っていた。だが、ソ連の保守派がその動きを阻止すべく、東ドイツの諜報員カールに密命を下したー。条約締結のために訪米する書記長の搭乗機を、小型ミサイル“レッドアイ”で撃墜せよ!カールは行動を開始するが…。
ポールの夢の中の出来事は、すべて現実のものだった。そして殺人者は、幼い頃第二次大戦直後のベルリンで別れたままの双子の弟カールだった。さらなる殺人を阻止すべくポールはベルリンへ急行、カールを探し出すが、彼によって監禁されてしまう。苦闘の末、ポールはからくも脱出に成功、やがて弟の恐るべき計画を知る。だが、その時すでにカールはアメリカに渡り、着々と書記長暗殺の準備を進めていた…。モスクワ、ベルリン、ワシントンー世界の大都市を舞台に展開する策謀と双子の兄弟の対決。全米で絶賛されたサスペンス小説の傑作。
深夜のハーレム地区で警官が指名手配中の殺人容疑者を射殺した。事件は単純な正当防衛と思われたが、“Q&A”(尋問調書)をとるよう命じられた地方検事補ライリーはかすかな疑惑を抱く。やがて彼が知った、検事局全体を揺るがす忌わしき事実とは?汚職、犯罪、人種差別…ニューヨーク市警の実態を活写した傑作社会派サスペンス!
最後に人を愛してから長い時が経っていた。殺された両親と養母の復讐を果たしたフィッシング・ガイドのソーンは、フロリダ・キイズで人目を避け、ひっそりと暮らしていた。そして恋人も去ったいま、彼には幼なじみでFBI捜査官のゲートンと、その妹だけが唯一心を許せる相手だった。しかしゲートンが行方不明になり、身代金を要求する脅迫状が届けられるに及び、ソーンは血も凍る凄惨な暴力の渦へと再び巻き込まれていった…愛憎と欲望にとりつかれた人々の悲劇を清冽な筆致で描き出す『まぶしい陽の下で』に続くフロリダ・ミステリの秀作!
第二次大戦直後、ドイツの秘宝を手に元ナチス将校がアメリカに潜入した。ドイツ空軍元帥ゲーリングの逃亡ルートを拓くことが目的らしい。米国情報機関の依頼を受けた私立探偵ルー・キャシディは将校の足取りを追うが、なんとその男はルーの死んだはずの妻と結婚していた…。虚実を巧みに織りまぜて描く、リリシズム溢れるノスタルジック・ミステリの巨篇。
横浜の名門高校の同窓会場で、女性市議が毒殺された。検事である夫と別居中の元ニュースキャスター彩子は、現場にいたために事件に巻込まれるが、やがて重要容疑者が三浦半島の旧家の密室で死亡した…。子供をかかえて自立をめざすが彩子が、私生活でも謎ときでも試行錯誤を繰返しながら、探偵役に挑む。オール読物新人賞、『見返り美人を返せ』で横溝正史賞を受賞したコンビ作家のひとりが、女性の視点から現代社会を抉るスケール雄大な長篇。