1990年10月1日発売
実のパパに会いたかった。ママは「あなたのパパは妖精の王様よ」って言うけれど、そんな…。高2のあたしは恋の占い師、人呼んでロマンチック・モリカ。本名は成瀬森香。情に厚いマドカの応援で、あたしはようやく戸籍のパパ・中島さんに会うことができた。ところが中島さんは、戸籍だけで実のパパではなかった。そんなとき、六本木で菫色の瞳の君に出会った。なにか、運命を運じるわ!
せつなく、うれしい、ラブ・ストーリー。ニヒルにかまえた、黒い笑いの物語。心がポカポカ、なつかしいメルヘンたち。想像力が銀河をめぐる、SFファンタジー。たった2〜3ページのなかに、あらゆる世界がつめこまれた、ショート・ショートたち。雑誌『COBALT』に寄せられた読者の傑作、78編を集大成。
県立松原高校に入学した島崎美香。迷わず野球部に入った。もちろん、女子マネとしてだけどね。というのも美香の父さん、この野球部では伝説の大先輩。母さんとのなれそめも、父のホームランが縁だったらしいの。でも今の野球部ときたら主将の浅田以外は「?」の人ばかり。同期の裕太にしても、ソフトボール部の白川瞳におネツみたいだし…。「めざせ甲子園!」美香の活躍が始まった。
刑務所から出所した日向政一を待ちかまえていたのは、美青年花村千次。美術商の父をヤクザに殺されたため、ニューヨークから帰国。百万円の手付金で日向こと“ヒグマ”に「殺し屋」入門。標的は巨大組織三星会組長。日向は殺し屋レッスンの第一章として、なぜか花村を自分の愛人美樹のマンションに連れてゆくー。ユーモラスに展開する異色のハードボイルド長編小説。
田尾庸平、33歳。身長163センチ、体重75キロ、出っ歯、出っ腹、短足、ガニ股、典型的原日本人的体型。無芸大食、小さな広告代理店のCMディレクター。無類のグルメ・アイディアマンで、次々と企画を連発。その結果、大手の太陽新聞社の事業部社員にスカウトされて…。サラリーマン田尾庸平の、痛快ぶりを描くグルメ出世小説。
1969年、ニューヨーク。五年間勤めた東京の大手広告代理店を辞めた“ぼく”は何の目的もないまま、後を追ってきた恋人の里美とふたりで、この地で暮し始めた。ベトナム戦争とサイケデリック・アートの時代のニューヨークがぼくたちに教えてくれたこと、それは…。青春の迷いとあせりの中、恋人とともに過ごした日々をセンシティブに描く、文庫書下ろし都会派小説。
ぼくはあなたの声を聴いて自分が男だってことが恥しくなりましたー。女性の子宮の中を泳ぐ精子のような気分をなんとか様式美のなかに収めたい…この野心のもとに生まれた、表題作「ドンナ・アンナ」他、「観光客」「聖アカヒト伝」「ある解剖学者の話」の四つの短編を収録。独自の言語感覚で、常に新しい小説世界を構築している著者が描く、マニエリスティックな愛の物語。
離れては寄りそい、寄りそってはまた離れる男女の心の絆ー時には喧嘩し、時には和解し、結婚という長い道程を二人は歩んでいく。遥かな、遠い道程ー。メイプル夫妻という一組の夫婦を主人公に、新婚時代から始まって、20数年後に破局が訪れるまでの二人の心の揺れを繊細に描いた17編の短編集。著者アップダイク自身の結婚生活をもっとも忠実に反映した自伝的作品である。
モスクワ駐在のCIA工作担当官フランクリンの若い妻アンは、夫の本国勤務を渇望している。そんな折り英国外務事務次官の息子ブリンクマンが、MI-6の新米工作員として当地に赴任してきた。フランクリンの再度の単身帰国に疑惑を抱いた野心家ブリンクマンは、アンに接近しCIAの情報=ソ連党中央委員の政治亡命=と彼女の心まで手にしたが…。CIA対MI-6の大作戦。
雪のニューヨーク、衝撃的な記事を書くことで著名な、女性ライターが姿を消した。ブティックを経営するニーヴは、その作家のコートがすべて残されていることからこの失踪に不審を抱き、元市警本部長の父に相談する。一方、彼に逮捕されたマフィアのボスが、復讐のため、ニーヴに対する殺人指令を出したらしい…。米ファッション業界が抱える様々な問題を扱ったサスペンス長編。
米国のスペースシャトル・イントレピッド号を奪えー自国のシャトルのたび重なる失敗に業を煮やしたソ連指導部は、ついに決断した。打ち上げられたイントレピッド号に機長として送り込まれたソ連のスパイ・カプシスキ大佐は、軌道上で乗組員を殺害し、機の乗っ取りには成功するのだがー。スペースシャトルをめぐり米ソ双方が死力を尽くした攻防を展開する。近未来軍事スリラー。
米国は救難用シャトルを打上げ、さらにステルス爆撃機、ハッブル望遠鏡、宇宙戦闘機などを繰り出してイントレピッド号を奪回せんとするが、ソ連も衛星攻撃兵器などで対抗し一歩も譲らない。地上ではホワイトハウスとクレムリンの双方で懸命の対策が立てられていく…。宇宙での対決を縦糸に、地上での双方の策略を横糸に織りなす大スペクタクルが迎える緊迫のクライマックス。
北陸の深い森につつまれた、大矢谷の神官の娘として生れ、ミッションスクールを卒業した三緒子は、都会でのサラリーマンの夫との生活を嫌悪して、故郷に帰る-。その特異な風土の中で、回生をはかる彼女は、異母弟への禁じられた愛に懊悩し、盲目の少年にひかれてゆく…。北陸の神域に棲むという化身はうつし身の女人に、情念の炎を宿させる恋・愛・罪のロマネスク。『沈める寺』に続く北陸を舞台に揺蕩う女心を描く。
心をしばる薬指のかわりに、すべてを断ち切る真っ赤なはさみがほしい。たとえみずから傷つこうとも…。大学卒業後、アナウンサーを目指して東京へ向かうセンリ。神戸を離れられないうしお。発車のベルが鳴り、シンデレラ・エクスプレスがいま、静かに走りはじめた-。デビュー作「夢食い魚のブルー・グッドバイ」に続く待望の第二作。書下ろし「鏡の森で 月夜の晩に」を併録。
大正十年冬、宮崎県日向〈新しき村〉の武者小路実篤の許に美しい女岡田晶が現れた。白樺派文学者たちが見守るなか、実篤、妻房子と晶子、三人の不思議な愛情生活が始まる-。奇才荒俣宏が、白樺派に託して愛と結婚のかたちを問う待望の長編幻想小説。
本書は、情報化時代の花形企業テレビ局、なかでも各テレビ局の顔であるニュース番組の制作現場を取り上げた長編小説である。劈頭、航空機事故のニュースの第一報が、CBAテレビジョン・ニュース社の本部に到着するあわただしい現場の雰囲気から一気に読者はテレビ局の内部へと引きずり込まれていく。
CBAのニュース番組《ナショナル・イヴニング・ニュース》のメイン・キャスター、クローフォード・スローンの家族が何者かの手で誘拐された。犯人側からはなんの反応も要求もない。一体なんのために誰が誘拐したのか?CBAテレビはニュースを報道する義務と人命尊重という二つの立場をどう調整したらいいのか?結局、テレビ局はFBI、警察当局とは違う独自の捜査班を組織し、犯人とニュースを追いはじめる。誘拐事件を軸に展開するテレビ・ニュース界の内幕。