1990年12月1日発売
あたしの学校『森居学園』の歴史は古くて、不思議なことがいろいろあるの。屋上の時計台は0時59分で止まったままだし、校門の前の坂は『ノクテュルヌの坂』って呼ばれてるけど、どういう意味なんだろ。もしだれかが教えてくれたら、まりか、きっとその人のこと好きになるだろうな。そんなとき。音楽部の事件がきっかけで…。
乙女の命、自慢のロングヘアを切って少年に変身した、あたし。双子の清華お兄ちゃんの身代わりで、全寮制の男子校・慶学院に入学するはめに。末は博士か大臣かっていう超エリートの集まるこの学校には、ユニークな少年たちがいっぱい。バンカラな源也先輩。歌舞伎の女形みたいな夢矢。そして、ちょっぴり気にさわる美少年、レオン…。
瀬利沢クン、あたしのケンカ友だち。クラスのみんなは、ふたりはあやしいって、ウワサしてる。ある日、あたしと同姓の早川千晶が転入して来た。千晶は、髪が長くて不思議なムードを持った超美少女。竹林に住んでいるところから、あだ名は“かぐや姫”。千晶、瀬利沢クンに興味もったみたいで。
政府要人を護衛中、我妻刑事、続いて小関刑事がライフルで狙撃され負傷する。最初は政治家を狙った凶弾と思われたがそうではなく、2人とも竜崎軍団員と知っての仕業らしい。竜崎三四郎率いるこの軍団、警察庁の特捜部で泣く子も黙る最強チーム。謎の犯罪組織にたちまち猛反撃。うなる鉄拳、火を吐くビッグマグナム、抜き射ち刑事の胸すく大活劇。
元禄14年3月14日、江戸城内松の廊下で重なる恥辱に堪忍袋の緒をきった浅野内匠頭が、吉良上野介に刃傷に及んだ事件は、“忠臣蔵”として映画や芝居ですでにお馴染み。本書は、家禄を失った赤穂浪士たちが、翌元禄15年12月15日未明、本所吉良邸に討入り、見事亡君の無念を晴らすまでの辛酸と討入り後の処遇を克明に描いた異色の“忠臣蔵”。
貧困と政情不安にあえぐ中米の小国ニカラグアでは、首都を取り巻くジャングル地帯で親米ゲリラが現体制打倒のチャンスをうかがっていた。米政府はゲリラに武器と資金の援助をおこなっていたが、議会はそれ以上の積極的介入を許さなかった。そこで大統領は直属の補佐官に、泥沼化した事態の打開を命じた。野心家のこの補佐官はCIA支局長と連絡を取り、ゲリラの基地にのりこむが…。
いまや事態は急速に悪化していた。パーティに集まったニカラグアの閣僚たちがゲリラに虐殺される一方、米軍輸送ヘリが何者かに撃墜されて16名のアメリカ兵が死亡した。米国の世論は米軍の全面的軍事介入を要求しはじめた。ニュー・ワールド通信者の記者クリス・イートンただひとりが一連の事件に不審を抱いて調べはじめるが、すでに空母エンタープライズに攻撃の指令は発せられた。
ロス市内で3人組による銀行強盗事件が続けざまに起きた。犯人は各銀行を入念に下調べし、不倫進行中の支店長に狙いをつけると、その愛人を人質にとるという手口だった…。停職処分中のロス市警部長刑事ロイド・ホプキンズは上司に呼ばれ、処分がとけると同時にこの強盗事件の担当を命じられた。ただし、職場はFBIロサンジェルス支部銀行強盗課への出向だった。調査を開始したホプキンズは、犯人たちに“知性”を嗅ぎ取った。と同時に彼はこの一件が自分の最後の仕事になると思っていた。市警の上層部が彼を切りたがっていたのだ。そして、市警内の宿敵である上司との最終的対決も予感していた。『血まみれの月』『ホプキンズの夜』に続くホプキンズ・シリーズ第3弾。
敏腕事件記者だった橋田雄三は女でしくじって以来、横浜の支局でくすぶっていた。偶然に暴力団羽島組の麻薬取引きを知った橋田は、怠惰な毎日に別れを告げるべく、ボクサー崩れの花井、ドブチュー呼ばれる古物商とその娘を中間に、麻薬横取りを狙い、神戸へと向かった…。長篇ハードボイルド・アクション。
この湖にボート禁止!せっかく「旗の湖」に引っ越してきたのに、せっかくフェイの残したボートを見つけたのに……。ビルと仲間たちは、ボート禁止の張本人、アルフレッド卿の身辺を探るうちに、奇妙な事件にまきこまれてゆくー。謎解きと宝探しの縦糸に、考古学と生活描写の横糸を織りこんだトゥリーズの傑作小説。
ぼくたちの意識の迷宮を探検しよう。時代は神経痛だ。永遠の船酔いと関節のうずきの中でぼくたちは死ぬことも許されない。あらゆる言葉を駆使して自分をユートピアそのものとしようとした真理男は言葉を失ってもなお、歌う。-島田文学の集大成長篇小説。
子供は作らないと決めていたジャックとドロシーに思いもかけない赤ん坊が生まれ、理想の夫婦関係に微妙な翳が差し始める。育児疲れでヒステリックになっている妻に手を焼くジャックのもとに、仲の良い友人夫婦の妻ステラが訪れたことから…。表題作はじめ、男と女の関係を4つのヴァリエーションで描き分けた短篇集。本邦初訳。
舞台は〈嵐〉と呼ばれる大破壊の後の、はるか未来のアメリカ。そこではインディアンの末裔たちが過去の機械文明を失いながらも、一種の牧歌的ユートピア社会を形成していた。そうした集落の一つであるリトルビレアには、大小様々な部屋がさながら蜂の巣のように密集し、このは系、てのひら系、ほね系、といった系統に分かれた奇妙な一族が住んでいた。物語は〈しゃべる灯心草〉と呼ばれる少年の独白によって始められる。彼は少女を相手に、“聖人”になろうとして彷徨した自分の冒険譚を語り出すのであった。〈一日一度〉と呼ばれる美少女や、ドクター・ブーツと巨大な猫族の物語、そしてラピュタと呼ばれる天上都市と謎の水晶体の物語などなど…。本書は象徴と寓意に満ちた、アメリカのファンタシィ界の異才ジョン・クロウリーのSF代表作である。
一流企業の秘書からヌードモデルに転身した八重子は単なるヌードモデルではなかった。昭和30年代まで、常にコダックに先行され続けていた日本写真界の勝利をもくろんだ富士フイルムの技術と宣伝のための被写体として、八重子は酒も恋も禁じられ、杉山のカメラの前に立ち続けた。一方「X線撮影法大系」のモデルとしてレントゲン撮影機の透視台の上でポーズをとり続け、日本放射線医学界に知られざる貢献をした稀有の存在であった。杉山吉良の名作「讃歌」のヌードモデル太田八重子の栄光と愛と死の短い生涯を描く。
ただひたすら重松次郎との愛に生きたい、この小さな幸せを大切にしたいと願う三沢月子。貫一というパトロンがありながら、何か人生に虚しさを感じつつある宮部灯。大都会の片すみに生きる二人の出逢いから、愛の奔流が渦巻いていく-。ブラウン管では見られなかった人間模様。結末が、新たな感動を呼びおこす。