1990年12月1日発売
嘉永5年の春、八丁堀同心吾妻一兵の娘おみやは17歳の美しい娘に成長していた。浅草観世音に詣でたおみやは、町家の番頭が持っている唐草模様の風呂敷をねらうならずものと、怪しげな娘の姿を目撃した。その風呂敷に包まれていたものは折り鶴散らしの振袖であった。風呂敷を奪った怪しの娘がならずものの鍾馗の三次に襲われた危ないところを救ったのは、おみやの小坂流吹き針の妙技であった。時の南町奉行は遠山左衛門尉景元であった。大江戸を騒がす振袖娘の誘拐事件の捜査に当たる稚児同心佐川左内は、女のような美男子であった。紫のお高祖頭巾の美女振袖お柳の出現によって謎はさらに深まっていく。-金さん直属の部下、吾妻一兵の活躍は。
大江戸の盛り場、金竜山浅草寺ー俗に浅草の観音さまで親しまれる仲見世通りは仁王門近く、年のころは27か8のおっとりと育ちのよさそうな若侍に、お助け屋の粂三が声をかけた。もちろん、その懐中物をねらってのことだったがすっかり魂胆を見透かされて、子分になることになった。若侍は久世喬之介といい、ある事情により浪人していた。その久世喬之介は腰元風の美女に託された書状を目明かしの絵馬徳親分に届けるべく訪ねたが、絵馬徳は何者かの凶刃に倒されていた。そして、喬之介の前には恐るべき黒覆面の怪剣士が出現した。粂三ともども“お助け屋”稼業を始めた久世喬之介の行く手は…。-根岸藩をめぐる騒動に、颯爽たる十万石の“お助け屋”喬之介の破邪顕正の剣の舞。
10代将軍家治の密命によって、老中・田沼意次の不正を摘発するため、鷹取俊太郎改め信濃屋芳兵衛は、貸本屋に身をやつして意次の屋敷を見張る…。“陰の御庭番”信濃屋芳兵衛の活躍を描く痛快長篇時代小説。
幼い頃からフィギュアスケートに賭けてきた美也子は、いま大学生となって全日本選手権をめざしている。トリプルジャンプのための減量。恋人との葛藤。そして〓@50FCじていく拒食症。少女がであう、身体と精神と感情の揺れをみごとに描いた人間ドラマ。
ギリシア人、イタリア人、メキシコ人、アルメニア人…。さまざまな国から海を越えてやってきた移民たちを受け入れる国、アメリカ。子どもたちは仕事場で、街で、学校で、人生という厳しくもどこかこっけいな現実を、手さぐりで確かめながら生きてゆく。アルメニア系二世であることを誇りとするサローヤンが、自らの少年時代の思い出をこめて描く17篇の少年物語。
18××年初、イギリスのとある町の救貧院で、一人の男の子が生まれ落ちた。母親は、子どもを産むとすぐ、ぼろ布団の中で息をひきとった。孤児オリヴァーはその後、葬儀屋サワベリーなどのもとを転々、残酷な仕打ちに会う。ついにロンドンに逃れたオリヴァーを待ちうけていたのは狂暴な盗賊団だった…。若いディケンズが、19世紀イギリス社会の暗部を痛烈に暴露、諷刺した長編小説。
主人公の孤児オリヴァーの運命の星は、いっそう酷薄に、光を失ったままである。盗賊団の仲間ビル・サイクスに従って強盗に出かけた夜、オリヴァーは瀕死の重傷を負って仲間に置き捨てられる。かろうじて篤志なメイリー夫人に救われたオリヴァーの運命はしかし二転三転して…。『ピクウィック・クラブ』でユーモア作家として成功したディケンズが、ジャーナリト的立場をとって挑戦した初の社会小説。
13+1編の珠玉短編と13本の絶品エッセイ。しかも全編書き下ろしというスーパー・オリジナル・アンソロジー。カラー版で初公開、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』創作メモ。
オオブタクサなる寄っ怪な有害植物が現われたと聞き、シャンディ教授は英国を訪れた。ところがところが、ブリーフィングと称する退屈な講演の毒気にあてられたか、調査に乗りだしたとたん、いきなり中世ウェールズにタイムスリップしてしまう。起こるはグリフィン失踪、王家の後継争い、挙句のはてには殺人事件!シャンディたちの奮闘ぶりやいかに?とびっきり異色の第5弾。
昔馴染みのランスが現われたのは7月の末。彼は偶然知ったある土地成金を標的に、巧妙な詐欺の手口を案出したらしい。質素で堅実な暮らしを心がける42歳の元詐欺師には縁のない話のはずだった。だが今の私にも夢はある。自分の店を持ちたいという夢が。それを叶えてくれるかもしれないこの話に、心は動いた…!抑制のきいた筆致で描く絶碑妙のコンゲーム。名手初期の秀作。
アヌ、イシター、エレシュキガル、エンキという四神に守られて、都市国家バビリムの人々は平和のうちに暮らしていた。ところが、あるとき邪神ドルアーガが復活して、中天高くかかげられた平和のシンボル、ブルー・クリスタルロッドを、ドルアーガの塔の最上階に隠してしまった。そこで、バビリムの平和を取り戻すため、女神イシターは美少女カイにロッドの奪還を命じたのだった。スーパーアドベンチャーゲーム。
〔地名〕への偏執と〔形式〕への強固な意志により周到に構築された物語が、全的崩壊の予兆をはらみつつ目眩めく反転する、全篇、荒唐無稽の愉しさにみちみちた、トポロジカルな架空幻想旅行譚。