1990年12月発売
ロス市内で3人組による銀行強盗事件が続けざまに起きた。犯人は各銀行を入念に下調べし、不倫進行中の支店長に狙いをつけると、その愛人を人質にとるという手口だった…。停職処分中のロス市警部長刑事ロイド・ホプキンズは上司に呼ばれ、処分がとけると同時にこの強盗事件の担当を命じられた。ただし、職場はFBIロサンジェルス支部銀行強盗課への出向だった。調査を開始したホプキンズは、犯人たちに“知性”を嗅ぎ取った。と同時に彼はこの一件が自分の最後の仕事になると思っていた。市警の上層部が彼を切りたがっていたのだ。そして、市警内の宿敵である上司との最終的対決も予感していた。『血まみれの月』『ホプキンズの夜』に続くホプキンズ・シリーズ第3弾。
敏腕事件記者だった橋田雄三は女でしくじって以来、横浜の支局でくすぶっていた。偶然に暴力団羽島組の麻薬取引きを知った橋田は、怠惰な毎日に別れを告げるべく、ボクサー崩れの花井、ドブチュー呼ばれる古物商とその娘を中間に、麻薬横取りを狙い、神戸へと向かった…。長篇ハードボイルド・アクション。
この湖にボート禁止!せっかく「旗の湖」に引っ越してきたのに、せっかくフェイの残したボートを見つけたのに……。ビルと仲間たちは、ボート禁止の張本人、アルフレッド卿の身辺を探るうちに、奇妙な事件にまきこまれてゆくー。謎解きと宝探しの縦糸に、考古学と生活描写の横糸を織りこんだトゥリーズの傑作小説。
ぼくたちの意識の迷宮を探検しよう。時代は神経痛だ。永遠の船酔いと関節のうずきの中でぼくたちは死ぬことも許されない。あらゆる言葉を駆使して自分をユートピアそのものとしようとした真理男は言葉を失ってもなお、歌う。-島田文学の集大成長篇小説。
子供は作らないと決めていたジャックとドロシーに思いもかけない赤ん坊が生まれ、理想の夫婦関係に微妙な翳が差し始める。育児疲れでヒステリックになっている妻に手を焼くジャックのもとに、仲の良い友人夫婦の妻ステラが訪れたことから…。表題作はじめ、男と女の関係を4つのヴァリエーションで描き分けた短篇集。本邦初訳。
舞台は〈嵐〉と呼ばれる大破壊の後の、はるか未来のアメリカ。そこではインディアンの末裔たちが過去の機械文明を失いながらも、一種の牧歌的ユートピア社会を形成していた。そうした集落の一つであるリトルビレアには、大小様々な部屋がさながら蜂の巣のように密集し、このは系、てのひら系、ほね系、といった系統に分かれた奇妙な一族が住んでいた。物語は〈しゃべる灯心草〉と呼ばれる少年の独白によって始められる。彼は少女を相手に、“聖人”になろうとして彷徨した自分の冒険譚を語り出すのであった。〈一日一度〉と呼ばれる美少女や、ドクター・ブーツと巨大な猫族の物語、そしてラピュタと呼ばれる天上都市と謎の水晶体の物語などなど…。本書は象徴と寓意に満ちた、アメリカのファンタシィ界の異才ジョン・クロウリーのSF代表作である。
ただひたすら重松次郎との愛に生きたい、この小さな幸せを大切にしたいと願う三沢月子。貫一というパトロンがありながら、何か人生に虚しさを感じつつある宮部灯。大都会の片すみに生きる二人の出逢いから、愛の奔流が渦巻いていく-。ブラウン管では見られなかった人間模様。結末が、新たな感動を呼びおこす。
『バイバイ、エンジェル』は、フランスに滞在していた20代の後半に、『テロルの現象学』と並行して書かれた、最初の小説作品である。『バイバイ、エンジェル』は少年の幸福な初恋、『サマー・アポカリプス』はさまざまに屈折した大人の恋愛…。
日本再建同志会「時雨会」の結成。占領軍直接統治が間接統治にどうして変わったか。終戦後なぜ通貨が軍票に切換えられなかったか。天皇戦犯除外作戦の内容。下山国鉄総裁の死の真相。衝撃の実名小説!
本書は、シュティフター晩年の叙事詩的長篇小説で、さまざまな民族が神聖ローマ帝国のもとに統合され、次第に中世封建制度が確立してゆく雄大な乱世、12世紀のボヘミアとモラヴィアの地を舞台に騎手ヴィティコーが森の民とともに戦い、森の領主となり人々に尽し、居城を完成させるまでを、美しい情景描写を交えながら、淡々と、ときには静寂に充ち、ときには反復する旋律の鳴り響きとともに描いてみせる。単線的に発展するという「近代」の歴史観に背を向け、《永遠》を希求した文学作品を本邦初訳で贈る。第1巻は、人生への途上にある若者ヴィティコーが、深いボヘミアの森で少女の歌声を耳にするところから幕を開ける。その響きは、あたかも天より遣わされた天使の歌声のごとく…。