1990年12月発売
美少女棋士今井香子は新幹線の中で、見知らぬ男から一通の封書を預かった。6日後、男は死体となって発見されたことがニュースで報じられ、数日後、香子もまた何者かに襲われた。彼女の危機を救ったのは、兵庫の山奥から行方知れずの父を探して上京していた江崎秀夫。天才棋士といわれた父の血を引いて、将棋の腕前は、素人とは思えないほど冴えていた。封書の中身は「九段の件ー」と書かれ、将棋連盟理事長、北村のサインのある念書だったのだ。そして、将棋界の大物、柾田圭三九段の家で起きた第二の殺人!謎の念書に秘められた驚くべき事実。本格派の偉才が贈る感動の異色サスペンス。
大きな平らな岩が、川の中に突き出ている。男は不意に、「おや?」と瞳を凝らした。碧い水のよどみのなかに、蝋細工のような人体が浮いていた。でも、それは蝋細工ではなかった。なぜなら白いナイロンのパンティをつけ、その乳房や首筋のあたりに、バラの花弁のようなキス・マークが、滲むように浮き上がっていたからだ…。(「男の階段」より)男の出世の踏台となって無惨に殺された女をはじめ、日常の裏側に潜む愛欲と野望を赤裸に描く、ミステリーの傑作集。
加藤清正の妻を大坂城から脱出させる大木土佐守。落城寸前の伏見城に向けて鉄砲を運ぶ堺の鉄砲鍛冶。清酒〈生諸白〉で名を挙げる鴻池一族の祖、新六。家康の命で大砲〈国崩し〉を鋳造する近江国友鍛冶。裏切りの誘いに心揺れる石田家重臣粟津権之助。石田軍の巨魁・大谷刑部の首を追う藤堂仁右衛門。豊臣秀頼の命を狙うため甦えった初代服部半蔵正成。興るか、滅ぶか。生死を賭けた男たちの野望と決断。
アナ-主人のために仕えることが生きがいの昔気質の奉公人。憧れのレーントマン夫人にも一生懸命尽くすのだが…。メランクサ-上品で美人の混血の黒人娘。青年医師ジェフとの恋に、ひたむきに向かっていくメランクサだったが…。レーナ-おとなしくてなにもかもまわりの言いなりになるドイツ娘。感情もなく、結婚して子供を生んで、それから…。20世紀の巨匠ガートルード・スタイン、感動の処女作!超独特な文体、微妙な心理描写-読むほどに目と耳と、そして心が吸いこまれていくスタインの世界。時代を超えて今、すべての女性たちに贈ります。
雨の朝、雪の夜、ふっと想い出すあのひととのKiss…。20粒のスウィートな恋物語。LOVEが進行中の女の子に、愛ってなーにと悩んでいる少女に、1か月前に失恋したばっかりのあなたに、彼女の気持がよくわからないキミに、この小さな恋の絵本を贈ります。
道場を出奔し、名を変えて諸国を巡っていた白根岩蔵は、江戸に戻って金貸しの食客となる。折しも、老中・田沼意次邸で催された剣術試合に勝った岩蔵は、見込まれて水野道場の後継者となる。それを機に、岩蔵は秘伝書を成子雪丸に返すのだが、雪丸は岩蔵を恨まず、また秘伝書を見ようとしなかった。二人の青年剣士の対照的な運命を描きつつ、著者の最後の人生観を伝えようとした長編。