1990年4月発売
政略結婚に反発する米原朋子の婚約披露パーティに出席した長女綾子は、朋子の代りに駈け落ち相手と新幹線に乗る破目に。次女夕里子がつかまえた不審な男は朋子の本当の恋人。では綾子と一緒の男は誰?三女珠美をさらった朋子の婚約者は、彼女の目の前で射殺されてしまうし…。一体なにがどうなってるの。
僕が5歳のとき信州の別荘で起こった忌まわしい事件は、僕自身の記憶と両親を奪い去った。それから10年。僕の「事件の記憶」を取り戻し、「事件の真実」に迫ろうとする男が現われ、そして殺された。僕は目撃者。僕は犠牲者、加害者、探偵。僕はトリック、さらに記録者。でも僕は誰?新本格の星、いまデビュー。
賭け事をする男とだけは、一緒になるな、という亡母のことばを遺言と受けとめて、独りネオン街で生きる秋子。しかし遺言に逆らうように、秋子が恋をする相手は、あいまいな人生の追随者。時の流れるままにいくつかの恋をくりかえす、秋子のあやうげな青春…。絶妙の倦怠感を漂わせながら、若い女性の心情を描いた俊英の恋愛小説。
うまいもの(しかも安くて)を二人で食べて、「うまいな」「おいしいね」と言い合えるのが、人生の幸福というもの。おでん、すきやき、たこやき、てっちり、きつねうどん…おいしいタベモノを前に、ときめく男女の以心伝心。味わいながら、笑ったり、しゃべったり。御馳走と人の情を豊かに描く、極上の小説集。
何も語らずに逝った母の人生を辿る長篇小説。母が残したわずかな写真と叔母の話をたよりに、雪深い新潟山平村から秩父、浅草、安倍川、天川原、市谷富久町そして葛飾白鳥へ足を運ぶ。わずかに探りあてた手懸かりには、悲しいことばかりが映しだされていた。薄倖な越後の女の生に捧げる感動のレクイエム。
玩弄物として貧民窟から拾われた欧亜混血美女ロレッタ崔。彼女はいま捨てられようとしている。リパルスベイに昇った十四夜の月が、かすかにその手の中のものを光らせたー。返還を目前にした香港を舞台に、あたかもゆるやかな死を迎えるごとく、頽廃を生きる人々の絶望的な愛、性、死を描く魅惑の連作。
不器用な生き方しかできないけれど、誰からも愛されてきた、ハンガリア移民の父。その武骨な手で世の荒波から守られ、美しく成長して法律家になった娘。だがこの幸せな家庭を、米連邦移民局からの一通の召喚状が粉々に打ち砕いたー。1990年度ベルリン映画祭・金熊賞に輝く感動の名画完全小説化。
なぜに心が波立つのか。昔から幾度となく考えてみた。だが、記憶は氷山の一角をのぞかせるだけで、肝心な部分は深い淵に沈みこんだままだ。-幼い頃。神輿が繰り出して、笛の音が流れる祭の日。何かが起こっている。閑静な住宅街に光る狂気のナイフ、幼児を狙う水曜日の通り魔はあなたの隣に。書下ろし社会派ミステリー。
多々良一学は慶長元和の戦国豪傑の気風を色濃く宿す武辺者であった。しかし、ようやく平和の風に慣れた寛永のいま、この男は、周囲に、はなはだめいわくな男であった。“反時代”の悲しみを描く絶品の表題作ほか7編。
美女が織りなす蠱惑のミステリー。38歳のルポライター・柚木草平のもとに持ち込まれた怪事件は謎だらけ。10歳の娘、現役女子大生、キャリアエリートウーマン、依頼人のOL、そして被害者、容疑者までもがすべて佳い女。心が乱れる捜査の連続。シャレた会話と小気味よいストーリー展開、サントリーミステリー大賞読者賞受賞の大型新人が拓いた新境地。これぞエンターテイメント、これぞハードボイルド。
伝説のピアニスト、バローは生きていたのか?四十余年ぶりの新録音がCD化され、話題沸騰。“Historic Return”(奇跡の楽壇復帰)を仕掛けたのはスイス在住の西洋拷問史家、島村夕子であった。おりしも、バローの宿敵ライヴィッツが失脚。しかし、ベストセラーを続けるCDに疑惑の影が。…美に憑かれた女のゆくところ、“ジェ・オゼ”の秘密めいた残り香と、謎また謎。