1990年5月発売
原子爆弾の惨害を正面にすえ、人間の愛欲の最も深い場所から戦争を批判するという困難な作業に挑み、全世界に衝撃を与えた映画『二十四時間の情事』の映画の母胎となったシナリオとダイアローグを収録した本書は不思議な魅力をたたえた作品となっている。
りっぱな産着に包まれたまま捨てられていた少年レミは、ヴィタリス老人と三匹の犬と一匹の猿からなる旅芸人一座に売りとばされた。しかし、少年は、優しく苦労人である老人と共に、フランスの各地を旅してゆくうちに、さまざまな人生の教訓を得、強くたくましく成長していく。時代を超えて読みつがれ、マローの名を今に残すことになった名作の完訳版。
仕事がら超常現象の類は信じないハリーだったが、今回興行先のペンシルヴァニアの田舎町でおかしな男に出会った。最近幽霊に悩まされているので調べてみてはくれないか、というのだ。だれかの悪戯かと思いきや、男は翌日、本当にビルから身を投げてしまった。幽霊に怯えて自殺?冗談じゃない!奇術師ハリーの活躍を描く軽快なシリーズ第1弾。
逮捕されれば、即座に処刑されるのはわかっていた。スペイン人民戦線の英雄ホアキン・カベッサも、いまでは国家的犯罪者にすぎない。独裁者フランコは彼の首をほしがっている。しかし彼は帰ってきた。14年にもわたる逃亡生活の果て、母は、妹は無事生きのびているのだろうか?それだけを確かめたかった。つかまったとしても、脱獄してみせる。おれは、ロシアの収容所すら脱走したのだから…。
カベッサはスペイン官憲の手に落ちた。だがそのとき、彼の命を救う人物が現れた。CIAの人間だった。命を救うかわりに、ある計画に手を貸せというのだ。やむなく承諾したカベッサは、タンジールにある隠れ家に連れていかれる。そしてそこで彼が見たものは、なんと、クレムリン全体の精巧な模型だった…。時に1953年。灼熱のスペインから厳寒のロシアへ、歴史のうねりに巻きこまれた孤独な男の、最後の闘いが始まろうとしていた。
東京から京都を訪れた渡部悟・小田育美の若いカップルが、東山の将軍塚で若い女性の殺人死体を発見した。匿名で警察に通報したが、育美から贈られたイニシャル入りのライターを悟はその場所に落したことに気がついた。犯人と疑われることを恐れた二人は、自力で事件の解決にあたることを決意し、手始めに将軍塚にことを書いた論文を掲載したことのある「歴史散策」編集部を訪ねると、寄稿家の大学助教授・東野総一郎と出会い、三人で犯人探しをすることになった。その後、鳴動伝説のある吉備津、湯田中で若い女性の殺人事件が続発した…。
昭和女子学園中等部の3年生で風紀委員…これがあたし、香取久美子。優等生でマジメと思われているけど、あたしだって、ホントは恋したい。友だちの亜美は浩二くんを、あたしは直也くんを好きになったけど、カレをめぐって、不良ぶってるクラスメートの加代と大波乱。恋する気持ちが、あたしを変えていく…。
暴力と麻薬のはびこる街に、特注のビッグマグナム引っ下げて凄い男がやって来た。なにせやる事がケタ外れ、武装テロ集団には改造装甲車でぶちかますわ、密輸船にはバズーカ砲を射ち込むわ、思わず目を剥く暴れっぷり。さぞやコワモテいやいやさにあらず、人も羨む大金持ち、ハンサムで柔道五段、悪の組織潰しに命を賭ける特命捜査警部・竜崎三四郎。
神部界の救世主・ワタルは、創界山での厳しい戦いの果て、神部界に平和を取りもどした。無事、自分の家にもどった翌朝、突然オババたちがワタルの部屋になだれこんできた。新しい危機だ。オババによると創界山の頂点に祭られていた「界破の石」が、何者かによって奮われたのだという。「界破の石」は、人間界を一瞬にして消滅させるほどの魔力を秘めているのだ。これは人間界が絶滅するかどうかの重大事。人々を救うには、ドアクダー一味から「界破の石」を取り返すしかない。ワタルはシバラクと共に再び創界山へ旅立った。
作戦名『大天使』。目標は北米大陸。命令書を見たソ連原潜『レッドスター』の艦長コルサコフは、北大西洋の海底で目を疑った。自分に人類破滅の引金を引けというのか。それを救う道はただ一つ、対峙する米潜水艦『インデペンデンス』と協力することだった。そのころ、異常に気づいたクレムリンは『レッドスター』の撃沈を目論んでいた。懸命の努力を続けるコルサコフの頭上に、いまた敵となったソ連艦隊が忍び寄る…。
〈ゼブラ・ワン、ゼブラ・ツー〉この謎の暗号名を情報提供者の口から聞いた直後、モスクワ駐在のCIA局員マカリスターはKGBに捕えられた。そして拷問を受けるが、不可解なことに突然本国へ送還される。が、空港に降り立った瞬間から彼を待ち受けるのは、意外にも米ソ双方の暗殺集団の罠。決死の逃亡を開始した彼が生き延びる途はただひとつ、〈ゼブラ〉の正体をあばくことだけだった。謎とアクションが横溢するスパイ小説巨篇。
舞台は1934年。農業集団化、工業化を強行しながら、スターリンは党内勢力の一掃に乗り出そうとしていた。主人公サーシャは、暗黒に向かいつつある時代のなかで、他の若者となんら変わらぬ23歳の青春をおくる学生だった。しかし、大粛清の波は、サーシャとともにモスクワのアパート街に生きる若者たちを次つぎに呑みこんでいく。無数の人びとの生死をその手に握る独裁者とその体制下の生が鮮かに描かれる。
全体主義という20世紀の暗黒をきずいたスターリンとはイかなる人物だったのか?またその時代に青春を迎えた若者たちの運命は?粛清下いわれなき罪状でシベリア流刑となり、死線をくぐり抜けてきた青年が、20年の歳月をかけて、スターリンをなま身のままに、その心理と感情の襞を探り、文学をもってしかなし得なかった〈人間スターリン〉の再現を果した。