1990年6月発売
冥王星軌道の外側に広がる、神秘の宙域「宇宙の珊瑚礁」に到達すべく、天才数学者ライランドをチーフとするプロジェクト・チームは、画期的なロケット推進の方法を研究していた。だが、研究は遅々として進まず、チームは解散寸前。そのうえ、ライランドの身辺では原因不明の事故が頻発し、生命まで脅びやかされることに…。飽くなき闘志を焼やして星々をめざす人類の姿を、鮮やかなストーリイ展開で描く新シリーズ開幕。
セ・ネドラ王妃がついに懐妊をした。結婚してから8年目のこの朗報に、夫のガリオンの喜びもひとしお。が、臨月が近づいたころ、王妃は熊神教徒の暗殺者に襲われた。かれらによれば、アローン人の純血を守るためにトルネドラ人のセ・ネドラが王の世継ぎを生むことはまかりならぬというのだ。しかし、この主張には裏があった。実は、ガリオンの息子は〈闇の子〉が世界制覇を果たすための重要な力を持っていたのだ。そんなこととは露知らず、熊神教徒征討の旅に出るガリオン。よもや自分の留守中に幼子が誘拐されることになるとは思わずに…。
血と精液の匂いに満ちた狂乱の国グユ。そこを治める狂熱風雲王がひとりの娘に惚れた。その娘とは、狂熱風雲王が長年攻め落とせずにいる辺境の小国“花と硝子のふるさと”アムネシアの王、黙り牛のひとり娘だった。青く冴えわたる満月のように美しい、というその評判を聞くや、狂熱風雲王は矢も盾もたまらずに彼女を欲しいと焦れる。ならば力ずくで彼女を手に入れようと考えた彼はアムネシアに対して兵を起こし、その不意をついて国境を越え攻め入ったのだった…。中井紀夫が満を持して放つ新シリーズ、大人のための神話物語いよいよ登場。
ケイトは男の前で平然と服を脱ぎ、裸身を浴槽に沈めた。男がケイトの頭を水面下に押しこんだとき、彼女は何が起きたのか理解できなかった。なぜなら、彼女は盲目ではないのに、男の姿が見えなかったからだ。-ロンドンの銀行に勤務する女性プログラマーが入浴中に溺死した。警察は自殺と断定。疑問を抱いた同僚のローラは、私立探偵のディーコンに調査を依頼した。やがて第2第3の殺人が起き、姿なき犯人は異常な性格を露にしてゆく。果たして現場に残された“グローリー”という血文字は何を意味するのか?サイコ・サスペンスの野心作。
厳格すぎる父親の影響で、異常な性向を強めていった男、アラダイス。彼は次の犠牲者にローラを選び、執拗な脅迫を繰りかえす。一方、ディーコンは殺害されたプログラマーが死の直前、銀行のコンピューターに異常を発見していたことをつきとめた。どうやら銀行はプログラムを細工して、不正な操作を行っていたらしい。だが、そのディーコンにも何者かの魔手が忍びよってきた。しだいに広がる事件の環を追うディーコンとローラは、やがて大西洋を狭んだ多国籍企業の野望を知る。俊英がサイコ・サスペンスと謀略小説を融合させた迫真の力作。
死んだ父親が愛用していた航海用具の六分儀。それが息子のジョナサンの前に突然現われた。警察から渡された六分儀を見て、彼はわが目を疑った。貨物船の船長だった父は第二次大戦中Uボートの魚雷を受け、船もろとも嵐の海に沈んだ。そのとき六分儀も一諸に沈んだはずなのだ。乗組員は全員死亡している。では、なぜ?警察の話では、六分儀はスコットランドの村で盗まれたものだという。不可解な謎を解くため、ジョナサンは恋人と調査を始めたが…やがて明かされる父と乗組員の驚くべき運命とは?海洋冒険小説とミステリを結合させた力作。
大変な事件が起きた!オズマ姫が突然いなくなってしまったのだ。そればかりではない。オズマ姫の〈魔法の絵〉、よい魔女グリンダの〈魔法の本〉、それにオズの魔法使いの魔法の道具も消えてしまった。オズの国は大騒ぎになったが、とにかく愛するオズマ姫をさがし出そうと、ドロシー、ベッツイ、トロット、そしてオズの魔法使いやつぎはぎ娘たちが捜索の旅に出た。ところが同じ頃、クッキー作りの名人ケーキが大切にしていた洗い桶がなくなり、彼女とカエルマンがさがしに出かけていた。いったい何が起きたのか?謎と冒険のシリーズ第12弾。
殺人を犯したことは1度もない。だが自らの手で正義の裁きを行なったことはある。8年前のことだ。大叔母のエマが怯えきった声で、同居している妹夫婦が自分を精神病院に追いやり財産を奪おうと画策していると電話してきた。あわてて駆けつけた私が目にしたものは、なんと頭を吹き飛ばされた大叔母と床に転がる拳銃だった。妹は自殺だと主張したが…。女の冷酷な復讐劇を描くエリザベス・フェラーズの表題作をはじめピーター・ラヴゼイ、マイクル・Z・リューインら現代イギリス・ミステリ界を代表する気鋭9人がものした傑作書き下ろし短篇集。
ニューヨークのどこかで、ある日、大がかりな犯罪が起こるー16分署署長カウフマン警視が逃亡犯から得た情報はそれだけだった。どこまで信用できるかわからないが、警察としては見過ごすわけにはいかない。非常事態に備え緊急動員作戦〈パンドラの匣〉が立てられた。だが厳重な警戒にもかかわらずメトロポリタン美術館が何者かの襲撃をうけ、高価な名画5点が奪われてしまった!カウフマンはただちにニューヨーク全市に作戦を発令、総力を挙げて未會有の捜査網をしいたが…。壮大なスケールで描くエキサイティングな警察小説シリーズ第1弾。
放火事件の続発するマサチューセッツの地方都市で、地元マイナーリーグ球団の選手が殺された。球団を取材中だったフリーの新聞記者ロフトンは、独自に事件を追いはじめた。やがて彼は殺人と放火を結ぶ議員がらみの不正をつかむが…。自ら不正事件に関わった過去を持つ男がひとり黒い陰謀に挑む姿を描く、アメリカ探偵作家クラブ賞新人賞候補の熱いドラマ。
動物学教授のクレイヴァリングはひとり南海の孤島へ船出した。伝説の巨大かたつむりを見つけ、歴史に名を残そうというのだ。だが運よく発見には成功したものの、船が流され、彼は島でたったひとりに…。孤立無援の男を襲う異常な恐怖を描く「クレイヴァリング教授の新発見」他、人間心理の歪みが生みだす恐怖と悪夢に彩られたサスペンスの鬼才の傑作短篇集。
インディアナポリスでソシアル・ワーカーの事務所のチーフとして働くアデル・バフィントンは、目のまわるような毎日を送っていた。おもな仕事である児童虐待問題に心を痛め、別れた夫との間の娘ルーシーの成長を見守り、恋人の私立探偵アルバート・サムスンと過ごす時につかのまの安らぎを見出す。ある日、アデルの事務所に強盗が押し入った。その男は事務所が取り扱ったケースのAからHまでのファイルの中から、どれかをコピーして立ち去った。目的不明の強盗事件のほとぼりも冷めやらぬうちに、新たな問題が事務所に持ち込まれた。若い母親が幼い女の子2人とともに失踪したというのだ。だが、まさかこれらの事件が背筋の寒まなるような驚くべき深淵を徐々に覗かせていこうとは、アデルにも予想できなかった…。圧倒的に人気を誇るハードボイルドの旗手が、サムスンの恋人、新ヒロインのアデルを鮮やかに送り出す最新長篇。
内閣情報室特務課・石板晃。彼は手段を選ばぬ非情な一匹狼だ。彼の行く所には女と血の香りが充満する…。文化大革命でC国を追放され日本へ逃れた南小路公麿は、密かに極秘フィルムを持ちだしていた。そのフィルムにはC国の世界征服計画に関する秘密が収められていた。野望の露見を恐れたC国国家保安部は公麿の愛娘を誘拐し、脅迫する。救出を命ぜられた石板は、相俸ベレッタを手に敢然と敵に立ち向かう。が、事件には意外な黒幕が…。息をもつかせぬ展開と、凄絶なガンファィト!会心のアクションノベル。
樹霊の生命の叫びを聴け!偉大なる知性を秘めた全能の〈父母の樹〉は滅びの時を悟って永い眠りから覚め、異能の少年・広久に使命を与えた。植物の逆襲がいま、はじまる…。警鐘のハードロマン巨篇。
夏のにぎやかさが去った9月、霧生湖の畔で若い女の死体が発見された。顔は鳥についばまれて無惨であった。派出所の警官である桐田は、湖の周辺に散在する別荘をあたったところ、事件前夜、銀行の保養所でオフラインパーティが開かれていたことを知る。パソコン通信の仲間が集まっていたのだ。その内の1人、「元姫」というハンドルネームの女が消えていた。死体が他殺か自殺か、「元姫」と同一人物かもわららぬまま、桐田の地道な捜査が始まったが…。大型新鋭が、智略の限りを尽して綿密に組み立てた書下し推理。