1990年発売
ロデリックは、大作家の父が若い女優の卵に私生児を生まれたときのスキャンダルをよく憶えていた。だがそのときの私生児コーデリアから連絡をうけようとは思ってもみなかった。コーデリアの用件は、いまや舞台の大女優として君臨する母マイラの伝記を書くので、父の所有する母の手紙を見たい、というものだった。だが、本当の目的は別にあった。マイラから虐待されて育ったコーデリアは伝記で母の本性を暴いて復讐しようと考え、それを裏付ける資料を捜していたのである。その意図に気づいたマイラは、ロデリックの家を訪れたコーデリアを追って、自分も小さな田舎に村にやってきた。2人は村のパブの一室にこもり、激しい口論を闘わせていたが、やがて、一発の銃声が轟いた。愛と憎しみが錯綜する人間関係を鋭い筆致で描き、イギリス本格の魅力を満喫させる、実力派作家の最新作。
人類文明発祥の地、エジプト。今なお古代文明の残り香が漂うこの土地に、エイリアンは興味を示した。やがて彼らの壮大なプランが実行に移されたとき、エジプトは天地創造以来の大激変に見舞われた…新たな神話の誕生を描く表題作。ひたすら加速しつつ大宇宙を飛びゆく宇宙船の物語「相対論的効果」。冷凍睡眠で未来社会に甦り、ジョン・レノンだといつわってスターの座をねらった男の悲喜劇「ドゥーイング・レノン」など、現代ハードSFの旗手のバラエティ豊かな傑作中短篇を一堂に結集したベンフォード・ユニバースへのガイドブック登場。
地球に転属される途中で行方不明になった進歩官アバルキン。秘密調査員マクシム・カンメラーはこの男の捜索を命じられた。だがカンメラーが立ち入った質問をすると、上司はたちまち口を閉ざしてしまう。しかも仕事は5日間で極秘裡に遂行しろとの期限付き。進歩官に関する資料に目を通してみても、失跡しなければならない理由は見当たらない。両親、女友達、恩師ーアバルキンの周囲の人びとから調査を開始したカンメラーだったが、彼はやがて、人類の未来をおびやかす驚くべき事実に直面することに…。ソ連SFの雄が贈る会心のSFミステリ。
ぼくの名はテイルチェイサー。偉大なる猫一族の末裔。これといった取柄もない平凡な猫。そんなぼくに大きな異変がおとずれた。ほんの何日かの間に愛しい牝猫ハシュパッドを含む数匹の仲間が、前ぶれもなしに行方をくらましたのだ。集まった長老たちは自力で解決する方法を見いだせない。業を煮やしたぼくは、ひとりハシュパッド探索の旅に出ようと決心した。だが森へ足を踏み入れたぼくを待ち受けていたのは、地上制覇をもくろむ邪悪な存在だった。…伝承の歌に彩られた猫族の世界を舞台に若き英雄の成長をみずみずしく謳い上げる傑作冒険譚。
悪夢から目覚めたとき、エリックの部屋は竜巻が通りすぎたあとのような有様だった。-幼いころ事故で両親を失ったエリックは最近、事故の夢をみるようになっていた。だが、そのあと必ず部屋が目茶目茶になっているのだ。謎を解く鍵を求めて、エリックは忌わしい記憶の残る故郷の町を訪れる。そこで彼が見出したのは、町のはずれにある湖畔の洞窟で過去に十数件もの殺人・自殺事件が起きているという事実だった。果たして洞窟にはいかなる秘密が隠されているのか?
閑静な田舎町に奇怪な事件が起こりはじめた。洞窟の見える家では男が妻子を射殺したのち、死亡。ヒッチハイクの若者が洞窟に連れ込まれて切り刻まれる。すべては、この世を支配せんとする闇の力の仕業だった。エリックは自分に課せられた重大な使命を知り、身を挺して対決することを決意する。やがて夜が訪れ、邪悪な力がつぎつぎと住民たちを襲いはじめた。〈悪魔の夜〉が明けるとき、生き残っているのは、人間か、それとも悪魔か?気鋭の力作サイキック・ホラー。
ヨットと自転車レースを愛するロック・ミュージシャンのジェイ・ベッカー。自動車事故を起こし、多額の借金を抱えこんだ彼は、謎めいた美女マレーネにヨットのコーチをする仕事を引き受けた。だがその日から、彼は邪悪な陰謀の中に巻き込まれていく。マレーネの背後で糸を引くもの、それはアメリカの軍事機密を盗み出し、他国へ売り渡そうと図る国際的な犯罪組織だったのだ!血と暴力の世界に投げ込まれた男の決死の闘いと、その裏で展開するFBI,CIAと犯罪組織の息詰まる攻防ー鮮烈なアクションとロマンスを織り込んで描く冒険サスペンス。
すべての発端は、船内で起きた乗組員同士のささいな喧嘩だったー24時間後にはスコットランドのフォース湾に到着する予定の英国貨物船オーライガ号。その食料貯蔵庫で起きた騒ぎは、船内に正体不明の“狂気”を解き放った。乗組員のある者は体の不調を覚え、ある者は幻覚に悩まされ始める。しだいに制御を失いながら驀進する大型船。その行く手には巨大なフォース橋が!果たして最悪の事態は回避できるのか?海の男たちと船を描かせては並ぶ者のない冒険小説界の鬼才が、姿なき恐怖に襲われた船の姿を克明に捉えた迫真の海洋サスペンス。
流れ出した原油が夜の帳のように広がる海岸で、美しい女が鳥の死骸を抱いて泣いていた。女の名はローレル・ラッソ。原油流出事故を起こした石油王の一人娘だった。海岸で彼女を見かけたアーチャーは、その翳りのある美しさに心魅かれ自分のアパートに連れ帰った。しかし女は、何もいわずに致死量の睡眠薬を持ち出して姿を消した。夫の依頼をとりつけたアーチャーは捜査を開始するが、両親のもとに身代金を要求する脅迫電話がかかってくるにおよび事件は深い傷口をみせはじめた。悲劇にもてあそばれる人間の苦悩を浮きぼりにする巨匠の野心作。
伝統ある良心的な大新聞〈シアトル・スター〉の社長から、極秘の依頼が舞いこんだ。花形記者のハガートが記者倫理に反する収賄行為をしているらしいので、ことの真偽を確かめてほしい、というのだ。株の買い占めによる乗っ取り工作で揺れる〈スター〉にとって、花形記者のスキャンダルは命取りになりかねないからだ。わたしは〈スター〉の記者となって、調査を開始した。が、その矢先、ハガードが殺されたのだ…。真実を重んじる心優しい探偵ジョン・デンスンが、持ちまえのオフ・ビートな捜査法で新聞社内の不正を暴く、好評シリーズ第3弾。
マヤ遺跡発掘に協力するため、ギデオンはメキシコへ飛んだ。遺跡から人骨が見つかり、人類学者の彼が鑑定を依頼されたのだった。だが仕事は鑑定だけではすまなかった。骨と同時に発見された古文書に記された呪いが隊員たちを襲いはじめ、ついに殺人へと発展したのだ!ジャングルの呪われた遺跡でスケルトン探偵が推理の冴えを見せる本格の香り高き最新作。
短篇小説の名手として名高いロアルド・ダールがもつさまざまな魅力。切れ味鋭く、鮮やかで、洒落たオチ。発想の奇抜さ、面白さ。“残酷で、皮肉で、薄らつめたく、透明で、シニカルな”大人の想像の世界を、子供にも充分理解できるような平明なことばづかいで語る、ストーリー・テリングの妙。そしてダール特有の“毒”の味。本書はそんなダールの魅力を堪能できる、素敵な新作9篇を収録したファン待望の傑作短篇集。
切なく響くフイドルの音色。スチールギターがむせび泣く。カントリーの聖地ナッシュビルの日本人私立探偵は走る。見果てぬ夢とこわれた心のかけらを集め、物語が始まる。長篇ハード・ボイルド。
強烈な衝撃がバーダイン号を襲った。悪魔のウインクって奴だ。ネコとノイズは、そいつのバケの皮を剥ぐためにここ死の海域へやってきたのだ。パネラ、テオ、ドーゴンボー、ミネルヴァ4つの恒星に囲まれた死の海域は、別名魔の四面体とも呼ばれ、この70年間に150件の遭難をひきおこし多くの人命をのみこむ魔界と化していた。事故の際には、青い人型の光が目撃されるという。それは宇宙空間をさ迷う幽霊なのか?自滅の恐れと戦いながらもミニ・スーパーノヴァの使用を決めた二人。成算はあるのか?ネコとノイズ、殺戮のファイル一挙公開。
佐古田組の佐古田史朗は弟分の島孝一を連れて、東京から雪の札幌へ乗り込んだ。ゴルフ場で急死した会社社長がメンバーズロッカーに隠しておいて税金のがれのための二重帳簿が盗まれ、遺族から捜索を依頼されたのだ。犯人と目される仙頭昭のマンションを突き止め侵入するが、彼は何者かに殺害され、目的のものは持ち去られていた。誰かが上前をはねたのだ。冬の札幌で繰り広げられる哀切な長篇ハードボイルド。