1990年発売
不器用な生き方しかできないけれど、誰からも愛されてきた、ハンガリア移民の父。その武骨な手で世の荒波から守られ、美しく成長して法律家になった娘。だがこの幸せな家庭を、米連邦移民局からの一通の召喚状が粉々に打ち砕いたー。1990年度ベルリン映画祭・金熊賞に輝く感動の名画完全小説化。
なぜに心が波立つのか。昔から幾度となく考えてみた。だが、記憶は氷山の一角をのぞかせるだけで、肝心な部分は深い淵に沈みこんだままだ。-幼い頃。神輿が繰り出して、笛の音が流れる祭の日。何かが起こっている。閑静な住宅街に光る狂気のナイフ、幼児を狙う水曜日の通り魔はあなたの隣に。書下ろし社会派ミステリー。
多々良一学は慶長元和の戦国豪傑の気風を色濃く宿す武辺者であった。しかし、ようやく平和の風に慣れた寛永のいま、この男は、周囲に、はなはだめいわくな男であった。“反時代”の悲しみを描く絶品の表題作ほか7編。
美女が織りなす蠱惑のミステリー。38歳のルポライター・柚木草平のもとに持ち込まれた怪事件は謎だらけ。10歳の娘、現役女子大生、キャリアエリートウーマン、依頼人のOL、そして被害者、容疑者までもがすべて佳い女。心が乱れる捜査の連続。シャレた会話と小気味よいストーリー展開、サントリーミステリー大賞読者賞受賞の大型新人が拓いた新境地。これぞエンターテイメント、これぞハードボイルド。
伝説のピアニスト、バローは生きていたのか?四十余年ぶりの新録音がCD化され、話題沸騰。“Historic Return”(奇跡の楽壇復帰)を仕掛けたのはスイス在住の西洋拷問史家、島村夕子であった。おりしも、バローの宿敵ライヴィッツが失脚。しかし、ベストセラーを続けるCDに疑惑の影が。…美に憑かれた女のゆくところ、“ジェ・オゼ”の秘密めいた残り香と、謎また謎。
取材で英国に来たまではよかったマリナ。ロンドンの空港でドシンとぶつかったのがガイ。彼は形見のブレスレットを持って、はるばるアフリカから貴族のパパに会うためにやってきた。でも、彼がいくら息子だと言ってもパパは信じない。問題は、ガイがあまりにも田舎っぽいせい。そこで彼を猛特訓。彼は貴公子に大変身。一度はパパも認めかけてくれたのに、自分こそ本物だという少年が現れて。
ひとり娘の女子大生・亜矢子が、伊勢・志摩に旅行に出たまま、帰ってこないー。元国務大臣で太陽薬品社長の平山から相談を受けた警視庁捜査一課の十津川警部は、元刑事だった橋本豊に捜索を依頼する。橋本は伊勢市内の旅館で、亜矢子が西尾あや子という偽名を使っていることをつきとめる。その夜、旅館のおかみと女子従業員が何者かに殺された。十津川警部の推理が冴える長編ミステリー。
岡山から倉敷へ向う新幹線「ひかり」の中で、女性の死体が発見された。死因は青酸中毒。被害者の右頬から胸にかけて古い火傷の跡が。所持していたセピアがかったモノクロ写真の意味するものはー。たまたま同乗していたOL・加奈子は、事件に興味を抱くが、その推理を嘲笑うように加奈子の周辺で第二の殺人事件が。昭和四十年代の青春の光と影を背景に展開する長編ミステリー。