1990年発売
根室本線を走る二両編成のミニ急行「ノサップ」が、広大な根釧原野のまんなかで列車強盗に襲われた。シーズンオフで乗客は少く、犯人の奪った金額は拍子ぬけするほどわずかなものだったー。今どきめずらしい列車強盗事件の裏にかくされた意外な犯意を、十津川警部が解明する、大好評のトラベル・ミステリー。
パリに憧れる23歳のツアー・コンダクター湯川真美子の今度の仕事は香港パックツアー。いまいちノリのこない真美子が香港最初の夜に遭遇したのは、なんと殺人事件。伝説の秘宝・「キング&クイーン」をめぐる香港マフィアの抗争に巻きこまれてしまったのだ。スリルとユーモアと過激なアクション、そしておしゃれな恋もハイピッチで展開する。傑作ロマンチック・サスペンス。
洋裁学校の学生・恵子は、偶然モデルのゆい子と知り合う。華やかで容赦なく人を魅きつける彼女に誘われるままに恵子もいつしかモデルの道を歩き始めた…。その世界は強い個性をみせながらどこか虚無のかげれをみせる男や女たちがいた。女がいちばん綺麗で、可愛いらしかった1960年代。さまざまな伝説と神話が生まれた高度成長のさなか、キラ星のごとく輝き、70年代の夜明けとともに燃えつきていった青春の状烈な愛と死の長編小説。
暴力団浜内組の幹部を追跡中、同僚を誤射した志田司郎は、刑事を辞し、妻子とも別れ、たったひとりで、波止場に単喰う巨大な暴力組織に立ち向ってゆく。近代経営の仮面の影に巣喰う悪との凄まじい闘い。日常を捨て“追いつめ”てゆく異常な執念を描く、日本にハードボイルド小説を樹立した画期的長編小説。直木賞受賞作品。
国家権力の介入によって、岬一郎を応援していた町内の人々の心が離れはじめた。確固とした信念のもと、日本政府の呼び出しに応じない岬一郎。最後の理解者で元雑誌編集者の野口志郎とともに、彼は孤独に追いつめられていく…。「日本SF大賞」受賞の著者渾身の力作大長編。
舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説」「ふたり」「新宿の名人」など八篇を収録。
大学卒業間際、花咲美也は恋人の恋川圭介に絶交宣言をつきつけられる。唇は許しても、体は許してくれない美也に圭介は大不満なのだ。傷心の旅に出た美也だが、彼女の身辺で殺人事件が発生。その原因は、男と家を出ていった母親にあるらしいとわかって…。書き下ろし青春ロマン・ミステリー。
百将乱れ起つなか、ついに怪傑曹操が、劉備をはじめとする群を制し、天下一統を果たそうとする。だが、江南の雄孫権が立ちはばみ、流亡の将軍劉備もまた、名将孔明を得て、曹操反撃に決起する。戦機は熟し、世紀の大戦へとひろがってゆく。智謀・奇謀、密計・奸計をもって、時代の制覇をめざす英雄群を描いた、壮大無比の物語。
なぜ120年も前に死んだ人物を恐れるのか?矢的遥は、からくり人形のコレクターとして著名な加島大治が、「べんきちはゆるさないぞ」と記した紙を見て震えおののく姿に愕然とした。べんきちとは、江戸末期の天才からくり師大野弁吉のことだが、一代で巨万の富を築いた加島とどのような関わりがあるのか?そして加島の娘が不審な死を遂げ、「ぐうじんかんをわすれるな」という奇妙な脅迫文が発見された。“弁吉と偶人館”という手掛かりをもとに、矢的は意外な歴史の真相へと踏み込んでいった…。
生徒の数は500人。先生いれて521人。各学年、2クラスずつのちょっと小さな学校だ。じつはこの物語は、あの小学校で起こったことなのです。とても不思議なことなので、だれも信じてくれません。でもわたしはあのことを、空を見上げるたんびに思い出しますし、なにひとつ忘れません。ちょっと長いお話ですが、なにひとつ忘れずに話すことができますので、それを話してみたいと思います。武田鉄矢が7年かがりで書きあげた、ファンタジック・ワールド。
政略結婚に反発する米原朋子の婚約披露パーティに出席した長女綾子は、朋子の代りに駈け落ち相手と新幹線に乗る破目に。次女夕里子がつかまえた不審な男は朋子の本当の恋人。では綾子と一緒の男は誰?三女珠美をさらった朋子の婚約者は、彼女の目の前で射殺されてしまうし…。一体なにがどうなってるの。
僕が5歳のとき信州の別荘で起こった忌まわしい事件は、僕自身の記憶と両親を奪い去った。それから10年。僕の「事件の記憶」を取り戻し、「事件の真実」に迫ろうとする男が現われ、そして殺された。僕は目撃者。僕は犠牲者、加害者、探偵。僕はトリック、さらに記録者。でも僕は誰?新本格の星、いまデビュー。
賭け事をする男とだけは、一緒になるな、という亡母のことばを遺言と受けとめて、独りネオン街で生きる秋子。しかし遺言に逆らうように、秋子が恋をする相手は、あいまいな人生の追随者。時の流れるままにいくつかの恋をくりかえす、秋子のあやうげな青春…。絶妙の倦怠感を漂わせながら、若い女性の心情を描いた俊英の恋愛小説。
うまいもの(しかも安くて)を二人で食べて、「うまいな」「おいしいね」と言い合えるのが、人生の幸福というもの。おでん、すきやき、たこやき、てっちり、きつねうどん…おいしいタベモノを前に、ときめく男女の以心伝心。味わいながら、笑ったり、しゃべったり。御馳走と人の情を豊かに描く、極上の小説集。
何も語らずに逝った母の人生を辿る長篇小説。母が残したわずかな写真と叔母の話をたよりに、雪深い新潟山平村から秩父、浅草、安倍川、天川原、市谷富久町そして葛飾白鳥へ足を運ぶ。わずかに探りあてた手懸かりには、悲しいことばかりが映しだされていた。薄倖な越後の女の生に捧げる感動のレクイエム。