1990年発売
樹霊の生命の叫びを聴け!偉大なる知性を秘めた全能の〈父母の樹〉は滅びの時を悟って永い眠りから覚め、異能の少年・広久に使命を与えた。植物の逆襲がいま、はじまる…。警鐘のハードロマン巨篇。
夏のにぎやかさが去った9月、霧生湖の畔で若い女の死体が発見された。顔は鳥についばまれて無惨であった。派出所の警官である桐田は、湖の周辺に散在する別荘をあたったところ、事件前夜、銀行の保養所でオフラインパーティが開かれていたことを知る。パソコン通信の仲間が集まっていたのだ。その内の1人、「元姫」というハンドルネームの女が消えていた。死体が他殺か自殺か、「元姫」と同一人物かもわららぬまま、桐田の地道な捜査が始まったが…。大型新鋭が、智略の限りを尽して綿密に組み立てた書下し推理。
鎌倉時代も末、都では皇統が2つに分裂、皇位継承を争って権謀術教がめぐらされ、機に乗じて公卿世界への介入を企む幕府と、それに反撥し討幕の意志を鮮明にする宮方の、鋭い対立が表面化していた。一方、河内の土豪・楠木多聞正成は、父・正遠に従い横暴を極める荘官襲撃に赴くが、隣国の土豪・当器氏の騙し討ちにあい、父は死亡、領地も奪われ、捲土重来を期して都へ逃れていた。傑作歴史長篇。
皇統分裂と、機に乗じて介入を謀る鎌倉幕府。宮方に志を寄せる正成だったが、陰険な公卿社会を嫌って河内へ戻り、ひたすら兵力の備蓄に努めていた。やがて宿敵・当器一族を滅ぼし河内を収めた正成は、元弘元年、後醍醐帝笠置山に篭るの報に接するや直ちに本拠赤坂城に挙兵、笠置に向う鎌倉方数万の精鋭を迎え討った…。一代の英傑・正成の出自とその天才的な軍略家像を活写した傑作歴史長篇。
極道の世界を取材中のルポライター。吉岡は、相沢組の組員・門脇が、工藤組の顧門・沼田を私刑にする現場にいあわせた。門脇は、沼田の愛人・玲子をも手に入れるが、組の幹部・杵島と対立を深めた。そんな折、吉岡は、玲子の夫・神崎史朗から相談をうけ、玲子の生いたちを知らされる。そして、玲子のマニラへの逃避行。吉岡はその後を追った。マニラで吉岡を待ちうけていたものは…。書下し長篇冒険小説。
児童書の編集者・綿畑克二は、童話の『不思議の国のアリス』の世界をこよなく愛す青年だった。ある日、スナック「蟻巣」で眠ってしまった綿畑は、夢の中で美少女アリスと出会った。しかも彼はアリスの婚約者であり、殺猫犯人の容疑者として追われていた。やがて目が醒めた彼は編集長・明野重治郎が殺害されたと知らされるが、再び睡魔に襲われ、アリスの待つワンダーランドに引き戻される。長篇ミステリー。
ヴェトナム戦争の末期、SISの特務隊員サラ・ルーカスは、450万ポンド相当の金と米ドルを輸送中に強奪された。事件後10年が過ぎ、過去の経歴を隠してサラは、トム・カートライトと幸せな家庭を築いていた。ところがサラの突然の失踪。トムは妻の捜索に香港へ飛ぶが、見えない敵に行手を阻まれる。冷酷非情な人々の陰で蠢くヴェトナム戦争の亡霊に、決然と挑むトム。鬼才イーグルトンの入魂の筆致が冴える。
近藤勇、土方歳三、沖田総司、芹沢鴨、あるいは山南敬助、永倉新八、原田左之助、斎藤一などなど…新選組を率い、担い、争いながら修羅場を駆け抜けた。男たちが彩る壮絶多恨の人間絵巻。
『チャンピオン・ライダー』『さよならと言ってくれ』などで、若者に絶大な人気の泉優二が、若き日々を過ごした東京下町を舞台に、はじめて書き下ろした自伝的な青春小説。学生運動などは何処かよその世界の話。金もない定職もない。夢と音楽だけを胸一杯に抱きしめて、バイクとともに走り抜けた、あの季節あの街あの仲間たち…。これだけは書いておきたかった!遥かな東京ダウンタウン・ストーリー。
端午の節句は武者人形に鯉のぼり。さあ、いよいよお江戸の夏。花火に映える両国の川開きに山王祭り、7月7日は七夕でそろそろ幽霊の噂が、八百八町の夜の闇を駆けめぐる頃…、懐かしい江戸の夏の風物詩にからむ怪事件・難事件に立向う半七・平次・佐七の三大捕物名人に加え若さま侍・顎十郎・ハイカラ右京・砂絵のセンセーも登場して、ますます好調。異色の捕物ミステリー・シリーズ第2弾。
ソ連首脳訪日を目前にして、右翼テロリストが動き出した。政府は万全の警備体制を敷くべく、緊急関係閣僚会議を招集する。だが、ソ連は独自の警護に乗り出し、国際紛争工作員、コードネーム“鷹”を上陸させた。この情報を密かにキャッチした防衛庁統合幕僚会議調査二課(J2)は、こともあろうに右翼の巨頭に鷹の抹殺を依頼したー東西両陣営の熾烈を極めるスパイ戦の果てに待つものは…。長篇ハードアクション。
同和証券・営業本部証券部長の道原浩は、偶然知り合った小牧真由美との情事を楽しんだ。だが、1年後、日本大衆党の“爆弾男”と異名をとる芝草謙三に呼び出された道原は、芝草の秘書である真由美が、“道原を強姦罪で告訴する”と脅された。困惑する道原に、告訴取り下げの条件として芝草でつきつけたのは、“裏情報の提供”であった。やむなく条件を飲んだ道原は、インサイダー取引に…。その裏側に仕組まれた二重の罠!?芝草の動きに気づいたジャーナリストの依田健吾が真相に迫るが…真由美が変死体となった発見された。インサイダー取引に絡んで永田町で繰り広げられる、“悪の論理”を鋭く抉った、長編推理小説の秀作。
小出達夫・39歳・塗装工として、川崎の工務店に勤めている。深夜、ホステスをしている愛人宅に向う途中、2人組の男と諍いになり、元プロボクサーの彼は2人をあっけなく倒してしまう。そのとき手に入れた挙銃が彼の人生を変えてしまった。殺戳と陵辱の限り、性と暴力の魔性にとり憑かれた男を描く。勝目文学の極み。