1991年11月1日発売
イスタンブール沖に浮かぶ帆船の上でテレビのミニシリーズを製作中の映画クルーが、クルド人ゲリラの一団に襲われ、人質に取られた。ゲリラたちの目的は、映画クルーの解放とひきかえに、クルド国家建設のアピールを全世界に放送させること。アメリカ領事館のテロ対策専門家ポール・サイラスはトルコの警察当局と協力して人質の解放に全力を傾ける。だが、ゲリラのリーダー、リトル・フォックスは狡猾で、なかなか〓@68D2を見せなかった。その矢先、リベラルな言動で知られる映画の主演女優アマンダ・モーガンが、人質の身代わりを申し出て、事態は思いもかけない方向に進んでいく…。祖国建設の悲願を叶えようとするクルド人ゲリラのリーダーを軸に、アメリカ、トルコ、そしてソ連の特殊部隊までを巻き込んで展開するテロと暗闘。ロス・トーマスらに絶賛された期待の新鋭の冒険アクション。
挫折したピアニスと声楽家の恋を描き、人間と芸術のかかわりに迫る表題作、ぼけかかった妻がぼけてしまった夫の心を再発見する「ホラスとマーガレットの52回目の結婚記念日」、老人に教わった魔法で少年が空を飛ぶファンタジックな「崖」など-。ストーリーの面白さ、テーマの切実さと奥深さ、登場人物の魅力が渾然一体となって、人生の歓びと不思議と恐怖を映しだす。
俺は“キツネ”。元ヤクザだ。幼馴染みの玲子と飲み屋を経営している。そんな俺のもとへ古巣の福岡組の徳光が厄介な話を持ってきた。金の入った大型アタッシュ・ケースを預かってほしいと言うのだ。つい引き受けてしまったのが運の尽きだった。福岡組から狙われ出したばかりか、元相撲取りの蒼の海というおかしな野郎の面倒まで見る羽目になり…。元ヤクザと元相撲取りの最強コンビが暴力団を相手に凄絶な闘いを繰り広げる-。ハードボイルドの枠を超えた大型新鋭渾身の究極のエンターテインメント。
巡視船「おおすみ」は、台湾の密輸船を追って尖閣諸島の領海へ入り込んだ。が、そこには中国海軍の駆逐艦「長征」が待ち受けていた。なぜ、中国の軍艦が?ブリッジの緊張が最高潮に達した時、突如、超高速機動艇が出現した-。海上自衛隊が極秘に導入した最新鋭の軍艦「シーデビル」だ。電撃的速攻で「長征」の行く手を阻み、密輸船を撃破。しかし、捲土重来を期す中国海軍は、新たに東海の大艦隊を南下させ始めていた…。不可侵の海域をめぐって、日・中が遂に激突、アジアの秩序は崩壊するのか。
祖母の親戚の結婚式に招待された工藤秋生は、香港に到着したとたん、パスポート泥棒に遭い、迎えに来た朱明に救われた。翌日、今度は警察を騙る数人と黒ずくめの太陽眼鏡の不気味な男に絡まれた。美麗華酒店の祝宴で、秋生は広東人が交わす話題に興味をひかれた。中国が広東省深〓(しんせん)市の大亜湾に建設した原子力発電所の試験運転がはじまろうとしている時、反対運動が再燃。香港からわずか五十キロの距離にあるここは、風水師によれば、龍脈に当たる危険な場所というのだ。超弩級の活劇が全篇を埋め尽す、大型新鋭の傑作。
また一人、奇妙な傷を負った死体が発見された。槍穂高連峰涸沢岳の岩稜ルート、通称「飛騨泣き」で、腹部に横一文字の切り傷を刻んだ転落死体が、4件続いた。どの死体にも傷口に生体反応がなく、明らかに死後のもので、傷の幅は約3ミリ。被害者らに繋がりはなく、長野県警豊科署の道原刑事は、怨恨による無差別殺人と断定したが…。長篇山岳サスペンス。
倉庫から焼跡から撲殺された男の焼死体が発見された。色めき立つ捜査陣。だが、残されていた手がかりは“寺村久作”という男の名前だけだった。男の身元は?戸籍すらない男“寺村”の影を求めて必死の捜査は続く。そこへ女の声で電話があった。身元不明の男が近所に住んでいた“寺山”ではないかというのだ。二人が同一人であるという可能性は高いのだが…(「死者の証明」)。他五篇。
大蔵省事務次官・冬村国治は、財政再建に不可欠として、大型間接税の導入に意欲を燃やし、大蔵の決意を示すため、次の事務次官に異例の人事を用意した。が、冬村の構想に、前首相の梅里が反対の意向を表明した。人事権は官僚の牙城であった。全局長の辞表を携えて直談判におよんだ冬村に、梅里は意外な条件を出してきた(「大蔵省次官室」)。第一線で苦闘する管理職達を描いた異色作品集。
人類が辿り着いた最後の街・世紀末都市。だがそこは文明の廃棄場だった。鳴りしきるサイレン、崩れた裏通りを彷徨う男達、殺し屋、刑事、バーテン、タクシー・ドライバー…。悪魔の薬P2で幻覚を起こした患者が、凶悪犯罪を重ねた。刑事達は街の闇を縫って、P2密売の大物らを追跡したが、目指す相手は次々に死体となって転がっていく。黒幕は?P2蔓延の狙いは?著者初の本格ハードボイルド。
幸せはただひとつ、例外を愛すること。月と木靴、天と地とのはざまで、その心はいくども引き裂かれた。しかし、彼女は生涯、並はずれたものへの夢を織りつづける旅人だった。ミュッセ、ショパンら多くの男たちとの奔放な愛、男装のフェミニスト、二月革命のミューズと、スキャンダラスな呼称に彩られたサンドが一生を通じて真に追い求めていたものは何だったのか、画期的視点から描く伝記ロマン。
イギリスの中産階級に生れ、オクスフォードを出た青年ニコラス・アーフェは、すでに人生にある種の虚しさを感じていた。ある女性とのエロティックな恋が終ったのをきっかけに、英語教師としてエーゲ海の孤島に渡る。そしてそこで不思議な老人コンヒスに出会う。次々と起きる、複雑怪奇な出来事…。サスペンスあふれる恋愛小説、冒険小説、そしてオカルティズム哲学の稀有な物語。