1991年11月発売
ドジな三流夕刊紙の記者の可能克郎は、終電に乗り遅れて、深夜サウナにもぐりこんだ。中にはいろいろな常連がいたが、ひときわ異彩を放っていたのは、布袋さまのような恰幅のいい頭の禿げた老人だった。名前も年齢も定かならぬ老人が、客の経験した事件の謎を名推理でたちどころに解決してしまうー。軽妙なタッチで綴る長編ユーモア・ミステリー。
リルガミンの女王アイラスは、即位より1年、気の休まる時がなかった。街に襲いかかる災いの数々、姉・ソークスの謎の失綜…。そしてついに、宮廷付きの魔法使いタイロッサムが迷宮に身を潜め、魔物を召喚しはじめたのだ。君は怪物を倒し、謎を解くことができるか。
テロの嵐が吹き荒れるローマ。野心に燃えるアメリカ人の青年ジャーナリスト、デーヴィッドは大胆きわまりない計画に着手した。秘密のベールに包まれて過激テロ集団『赤い旅団』の内幕を、ノンフィクションと偽って創作しようというのだ。が、同じく『赤い旅団』を追う美貌の女性カメラマン、アリソンと出会ったときから、彼らふたりの周囲には危険な罠が…。映画化された異色サスペンス。
ミステリー・ファンには根強い人気のシャーロック・ホームズ。生誕一世紀を経た現代にも生き続けている。そのホームズが宿敵モリアーティ教授とともにライヘンバッハの滝で死んで、再登上するまでに四年間の“大空白時代”がある。その空白時代にホームズはいったいどこで何をしていたか?ゴルフ存亡の危機を察知したホームズは、敵の狡猾な罠と妨害を排除しながら、由緒ある高貴なスポーツ、ゴルフを救ったのである。
友と別れたアレクサンドロスの前に、謎の男イカロスが現れた。イカロスは、アレクサンドロスに対して、海底に眠るアトランテイスの秘宝オリハルコンの剣を探す助力を申し出た。一方、アレクサンドロスの仲間たちは、デルフォイの神殿に向かっていた。マケドニアの運命を担うアレクサンドロスの未来を占ってもらうためだった。若き日のアレクサンドロス(アレキサンダー大王)の活躍を描く、シリーズ第2弾!
新人OLの仲江翠はアパレル・メーカーの広報課に勤めている。忘年会の帰り、彼女は若い女子社員に人気のある仕入部の星恭一郎を自分のアパートに招く。星はたちまち彼女に夢中になり、週末を彼女の部屋で過ごすようになる。しかし一方で翠は星の上司である荻島俊之とも関係をもっていた。大人の恋を楽しむ時は荻島、結婚の相手は質実剛健の星。翠は二人を上手に使い分けているはずだったが…。メランコリック・ラブロマン。
スペイン内乱直前に赴任した木滑大使が現地で集めた膨大な数の美術品の一部が、大使の遺言により長崎県立美術館に寄贈、公開された。その翌日、公開実現に奔走した大学教授が、全身の血を抜かれるという残虐な方法で殺害された。しかも以前から、開係者には美術品を公開するなという執拗な脅迫が繰り返されていたのだった。若い美術記者の菊村と木滑の孫娘の燿子が、歴史をさかのぼるかのごとく、絵画に隠された謎を追う。書下し長編サスペンス。
おれの名は藤堂風牙。しがない新聞記者稼業で糊口をしのいではいるが、これでも誇り高き忍者の末裔だ。あやうく轢き殺しそうになった若者が自殺したという取るに足らないベタ記事ネタの背後を探るうち、おれは途方もない犯罪計画に出くわした…。史上空前のスケールで展開するニュー・ヒーロー物語ここに登場。
聖なる夜に人はみな、心静かに己れの罪を悔い改めーというわけにいかないのが世のならい。大学構内で出回った贋札造りの犯人探しに奔走するシャンディ教授。いきのいい女探偵のオフィスにころがりこむ死体。クリスマス劇の天使が射殺される一方で、二人の娘とその貧乏亭主に遺産めあてに殺されてしまうと疑心暗鬼の父親。ましてや妻殺しを計画する夫にいたっては…。はらはらさせたり、泣かせたり、一転絶妙のコンゲーム。趣向をこらした書き下ろしのクリスマスミステリーが13編。
小諸久美子は、27歳のベテラン看護婦。葬式の帰りという喪服の4人が、交通事故の重傷患者として運ばれてきた。3人は滝川建設の社員で、残る1人は好意で葬儀場から乗せた男。その男は付添婦・石室嘉代に『金子』と名乗って死亡した。だが、それは偽名で、滝川建設のライバル東丸不動産のエリートだったことが判明。しかも、東丸側は男の行動を否定した。やがて、石室が失踪し、滝川建設の社員が殺される。久美子は石室の子を預かって、事件の解明に挑むのだが-。書下ろし長篇サスペンス・ミステリー。
健治たちが化石採取に出かけた時のこと、変な男に声を掛けられ、三葉虫の化石を手渡された。それは、“復讐ノ時ハ迫レリ、反銀河同盟”と書かれた挑戦状だった。きっと、健治たちが以前やっつけた時間犯罪人たちが、再び活動を開始したに違いない。彼らは悪人を追ってデボン紀にタイムスリップー。そこでは、時間の流れを変えようとする恐ろしい企てが…。
男の欲望をそそる紺の制服に身を包んだスチュワーデス亜佐。人気のない機内で豊満な肉体を晒す。男を惑わす秘密の花園は馨しい香りをはなち、男の熱い欲望を子宮奥深く注ぎ込まれる。淫花から蜜を垂れ流し、熱く燃えたぎった肉体を制服に包んだスチュワーデス亜佐の淫らなフライトはー。
主人公のハバカク・パートンの祖父は熱心な清教徒で、ジャマイカ島東部のモラント湾地域に入植して砂糖黍農園を拓いたのだった。パートンは農園の中の広くて白い家で何不自由なく育った。不幸は突然おとずれる。10歳の時コレラが流行し、祖父、父、兄を一時に奪われたのである。村の教会の世話役だった男が、いかにも信心深い男やもめが敬虔な未亡人に話すのにふさわしい言葉を聖書を引用して悔やみを言いにきた。3年後、世間知らずの母はこの男と再婚した。しかし、この男の狙いは最初から農園をわが物とすることで、13歳のパートンはバルバドス島の農園に年季奉公にだされた。パートンが水夫となってバルバドス島を抜けだし、何年かのちジャマイカ島にたどりついた時、母は死に、自分は失踪人とされ、妹2人は家から一歩もだされず小間使い同然とされていた。ヤケになり、泥酔しては喧嘩し、ついに人を殺して海軍に逃げこんだパートンを拾ってくれたのは、負けず嫌いで腕っ節が強いのを見こんだ現地謀報部のキャメロンだった。
ゴッホ今泉のイラストが発端だった。肌を鱗に覆われた爬虫人類たちが恐竜に跨り、荒野を駆け巡る-。その世界に衝撃を受けた榎戸洋司が、彼らの生き様を書き下した。超ファンタジー小説集。
出会った時からずっと、2人はいつでも2人きりで満天の星空の下にいるような気がした…。そしていつも何となく悲しいような感じがした。-二人の運命的な出会いと愛のかたちを通し、かなたにある希望と幸せを描いた「キッチン」に続く第二作品集。芸術選奨新人賞受賞。