1991年12月発売
租界都市上海・植民地都市香港を舞台に、美しい祖国への夢破れアイデンティティーに苦しむイギリス華橋と腐りきった旧制度の大家族に心底愛想をつかしながら逃れるすべのない女性のロマンスの行方を描く「戦場の恋」他、6篇を収める。崩壊していく文明の本質を鋭く問い直す恋愛小説集。シリーズ完結。
ボウエン夫人の自慢は庭の草木の手入れ。地面に挿し木をしてやるだけで野菜や果物はすくすくと成長し、庭を覆うほど繁茂する。あるとき、彼女は誤って自分の指を斧で切り落としてしまうが、病院から戻ってみると何と…(「園芸上手」)、ポーの「黒猫」を思わせる恐怖小説の逸品(「人殺し」)など戦慄の8篇。
パパは遠くへ行ってしまった。マイブリットとはもう友だちじゃない。いつだって、みんなけんかばかりしてるー。両親の別離や友だちとの触れ合いを通して世の中をみつめ、成長していくヨアキムの世界を描く物語。1990年国際アンデルセン賞受賞。
『むずかしい愛』は、現代人の日常生活の中でのさまざまな“すれちがい”のおかしさを集めた、ユーモアとエスプリに満ちた短篇集である。活字中毒者が繰り広げる微笑ましい恋愛光景を描いた「ある読者の冒険」、写真マニアの秘かな願望を探る「ある写真家の冒険」他、全12篇を収録。
“無類の虚気者”と囃された少年時代から、天下布武の旗印のもと、広く眼を海外にまで向けながら戦国の世を疾風怒涛の勢いで駆けぬけ、天下統一目前にして、本能寺で非業の死をとげた不世出の天才・織田信長の壮絶で孤高の生涯を描く書下ろし歴史長編。
28歳の社長秘書・千秋は、セクシーな本妻と美貌の愛人を持つ、精悍な社長から、快楽と金品を手に入れようと誘惑を続けるが…。貪欲に自身の欲望を追求する知的美人OLの昼と夜の顔を赤裸々に描いた官能長編。
現代メキシコ最大の小説家が、近代的な意味における「小説」そのものの創始者にしてその変革者セルバンテスを、その時代的文脈において、そしてとりわけジョイスを初めとする現代の文化的冒険との関連において論じるとともに、読むこと=書くことの根源的な批判を企図した。極めて今日的なセルバンテス論の白眉。
「日刊ゲンダイ」毎週末好評連載。同時進行、ウイークリー馬券小説。待望の単行本化、第1弾。昭和61年6月15日の「福島テレビ杯」から、昭和62年12月27日の「有馬記念」までを収録。健坊の勝率やいかに。
曹操はすでに没し、大勢は蜀に傾きかけたかに見えたが、曹操の息子、曹丕は、司馬懿仲達を軍師に立て、最後の反撃を試みる。対する孔明をはじめとする蜀の三軍師は、精鋭を率いて一気に勝負に出た。ここに、孔明と仲達の死力を尽くした戦いが繰り広げられる。三国の戦いはついにクライマックスを迎えた。炸裂する新兵器“地雷火砲”、五虎将の咆哮が中原に響きわたる。幻の名著、周大荒著「反三国志演義」初の小説化。
恋したりフラレたり、金を借りたり断わられたり、あざけり合ったり、憎み合ったり、ネコをかぶったりと、もつれた糸がこんがらかって……。職業も年齢も異なる 5 人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。見事なまでの離れ技で織りなす構成、洒落た文体で交わされる小粋なやりとり。 文豪・三島由紀夫による、反則レベルのスタイリッシュ・エンタメ小説。山本容子の挿画を添えて、手紙を書くのが苦手なあなたに贈る粋な文例集。 解説 群ようこ【目次】登場人物紹介古風なラブ・レター有名人へのファン・レター肉体的な愛の申し込み借金の申し込み処女でないことを打ちあける手紙同性への愛の告白愛を裏切った男への脅迫状出産の通知招待を断わる手紙結婚申し込みの手紙恋敵を中傷する手紙心中を誘う手紙旅先からの手紙年賀状の中へ不吉な手紙英文の手紙を書くコツ真相をあばく探偵の手紙探偵解決編の手紙身の上相談の手紙病人へのお身舞い状姙娠を知らせる手紙姙娠を知った男の愛の手紙陰謀を打ち明ける手紙余計なお世話をやいた手紙裏切られた女の激怒の手紙閑な人の閑な手紙結婚と新婚を告げる手紙すべてをあきらめた女の手紙家庭のゴタゴタをこぼす手紙離婚騒動をめぐる手紙悪男悪女の仲なおりの手紙作者から読者への手紙
アルプスの観光地・ユングフラウヨッホを訪れた三毛猫ホームズの一行。片山は、展望台で、氷河を滑り落ちかけた日本人女性観光客を救出。その女性・多田靖子の姉は、結婚式の当日、婚約者に逃げられたのを苦に自殺していた。ところが靖子は、このヨーロッパで姉をふった男を発見して…。ホームズがアルプスで名推理。