1991年2月発売
レスビアンの私は、楚々とした美女・高子に女同士だけが味わえる恍惚の味を教え込んで恋人にした。だが、高子は男のもとへ走り、やがて私は拾てられた。相手が男であることで凄まじい嫉妬に陥った私は、高子を殺そうと決意するが…。嫉妬が生み出した奇怪な犯罪を描く表題作をはじめとする異色官能サスペンス集。
子を捨てて自由な恋愛に生きる母親。女が女を愛してしまった果てのない自問。孤独な精神の無菌室を壊して再生をはかるまでの手記が三番目の父親へ託された。第104回芥川賞候補作、「海燕」新人文学賞受賞作を含む大型新人の第一創作集。
強引にポーランドに侵攻したナチス・ドイツを、占星学でいう白羊宮(牡羊座)の守護星、軍神マルス(火星)になぞらえて象徴的に描いた、ホレーニアの代表作。当然のごとくナチスの逆鱗にふれ、発禁処分にもなった幻の小説。
人妻に惚れて家出した兄を追って、妹のダンサー、アキは夜の深海魚たちが乱れ狂う、ミラーボール廻る世界へ…。いつか兄のことも忘れ、肉悦の啜り泣く快感の日々に溺れていく…。華やかなダンスホールを舞台に、男と女の官能の世界を、スリリングに、かつ情感豊かに描く著者の最新官能長編。
なんでもその海賊はすご腕で、イスラムやイスパニアの商船をかたっぱしから海に沈めてるらしいぜ。たしか『海賊ゴメス』っていってたっけ。16世紀初頭のポルトガル-。大航海時代をむかえてにぎわうリスボンの酒場ではそんな噂が流れていた。その正体は…。貴族と海賊のふたつの顔をもつ男、レオンとその仲間たちがポルトガル王宮を狙う悪に戦いを挑む。光栄ゲーム『大航海時代』待望の小説化。
フリーライター浅見光彦は雑誌の取材で名門「菊池一族」発祥の地、熊本県菊池市に向かう。新幹線車中で知りあった美女、菊池由紀は泣いたかと思えば笑いだす情緒不安定。彼女も菊池市に向かうという。ところが、熊本駅で彼女を尾行してきた長野県警の丸山刑事に彼女の父親が長野県“親王塚”で殺されたことを知らされる。容疑は由紀の恋人辻綾一にかかっており、彼女がその逃亡を助けた疑いがあるという。何故由紀の父親は殺されたのか?菊池一族にまつわる因縁とは何なのか?謎は深まり、名探偵浅見の推理が始まる。
東京の北への玄関口、上野駅に再開発計画があるという。地上300mの超高層駅ビル、不忍池地下の大駐車場。地元の下町では賛成派と反対派に意見が分かれていた。大林繭美はタウン誌を発行しながら、この愛すべき街を守ろうと忙しい毎日を送っていた。ある日、ルポライター浅見光彦は軽井沢の作家から1通の奇妙な手紙を託された。そして、数日後、差出人は谷中霊園で「自殺」した。情緒あふれる東京の下町に浅見光彦の推理が冴える書き下ろしミステリー。
アメリカ中部の大都市、地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補が自宅で全裸の絞殺死体となって発見された。変質者によるレイプか、怨みが動機か、捜査に乗りだしたサビッチ主席検事補は、実は被害者と愛人関係にあった間柄、容疑が次第に自分に向けられてくるのを知って驚くー。現職検事補による世界的ベストセラー。
検事が一転容疑者となる…。思いもかけぬ展開に、権勢欲、出世欲、金銭欲、所有欲、性欲、あらゆる欲望の渦巻く複雑な人間ドラマがあらわになり、意外な結末へとなだれこむ。歴史に残る法廷ミステリーの傑作というにとどまらず、制度そのものへの批判を含んだ社会小説としても評価された一級品。ハリソン・フォード主演で映画化。
平安時代。闇が闇として残り、人も、鬼も、もののけも、同じ都の暗がりの中に、時には同じ屋根の下に、息をひそめて一緒に住んでいた。安倍清明は従四位下、大内裏の陰陽寮に属する陰陽師。死霊や生霊、鬼などの妖しのもの相手に、親友の源博雅と力を合わせこの世ならぬ不可思議な難事件にいどみ、あざやかに解決する。
思いもよらない事件が発生した。走行中のトラックから冷凍胎児が落下し、直後、運転手が毒殺されたのである。黒い噂のある光陽医科大付属病院長・森岡剛造との関連が浮かんだが、彼もまた、毒殺死体となって上高地で発見された…。事件の鍵を握るのは森岡の愛人ただ一人。だが、彼女には殺人を犯し得ない完璧なアリバイがあった。やがて、第三、第四の殺人が…。法廷推理の第一人者が、上高地・京都・東京を舞台に、二重、三重のトリックで描く傑作長編本格推理。