1991年4月発売
藤堂エイスケ、34歳。一流商事会社の課長代理。人間は朝起きて夜寝るものだという思想の持ち主。そして“私”25歳。夜に起きて、朝に寝るという生活。このふたりが恋仲になったのだが…(表題作)。ほかに、紳士然としていた男が、実は女になることにあこがれていたという性倒錯の世界を描く『ゆめのパパ』など、全8篇を収録。
忘れかけていた、ぬくもりが伝わってくる〈家族〉を舞台にした連作「トマトジュースをもう一杯」。『のみや』という飲み屋に集まるサラリーマンたちと怪僧・宋海が繰り広げるユーモア連作「千鳥足劇場」。臨終間際の租父が見せたウインクの意味は?意外な結末でアッと言わせる7篇の物語やタイムトラベル装置のついた車で旅する2人の男の珍道中など、奇想天外、抱腹絶倒のショートショート集。
時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった…。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。
太平洋戦争も終りに近づいた昭和二十年三月、継ぎはぎだらけのマントをひるがえして、ひとりの老人が日米決戦の場に飛び立った。空を見よ。鳥だ!飛行機だ!いや〈大日本帝国スーパーマン〉宮本武兵衛だ!武兵衛と、クリプトン星人の風上にもおけないゴロツキの〈アメリカ・スーパーマン〉との、生命をかけた壮絶な戦いを描いた表題作をはじめ、荒唐無稽なユーモア小説三編を収録。
かつて、独立のためにイラク軍と戦ったクルド人の戦士ウル・ベグが、単身アメリカに潜入した。目的は、一度はクルドを支援しながら土壇場で裏切ったアメリカに復讐すること。標的は元国務長官ダンツィグ。事態を察知したCIAは、当時ウル・ベグを鍛え、ともに戦った元秘密工作員チャーディに白羽の矢を立てた。チャーディは、裏切りの借りを返すべく、ふたたび戦場に身を投じる。
チャーディは、かつてウル・ベグたちクルド人ゲリラと行動をともにしていた元恋人、ジョアンナに接触。情報収集のかたわら、ダンツィグ警護の任につく。一方、メキシコでは、若手工作員トレウィットが、ウル・ベグ密入国の謎を解く重大な手がかりを発見していた。標的に迫るウル・ベグ。見え隠れするKGBの影。背後に潜む巨大な陰謀とはなにか?著者渾身のスパイ・サスペンス巨編。
現代アメリカ文学随一の実力派作家が描く「ヴェトナム以後」。「アメリカの夢」が崩れ、道を見失いかけた時代。ひたむきで、不器用にしか生きられない心優しい人びとの、孤独と不安、ひそかな願いを、深い共感をこめて描く10篇。
ファッショナブルな仕事に生きる男と女の出会い、別れ、そして再会。時の流れの中から浮び上る5つの愛のかたちを描く新鋭の連作。TOKIOで最もトレンディな街代官山を舞台に描くラヴ・ストーリー。
モース主任警部は病院へと急ぐ救急車に横たわっていた。その朝、吐血して意識を失っているのを発見されたのだ。モースの脳裏に、自分の死亡記事がちらりとよぎった…。しかし、診断はたんなる胃潰瘍だった。長年の酒と煙草がたたったらしい。命に別状はないが、しばらく入院しなければならないという。退屈な入院生活の気晴らしに、モースはたまたま手にいれた『オックスフォード運河の殺人』をひもといた。ヴィクトリア朝時代の殺人事件を扱った研究書である。その書によると、1859年、一人旅の女性を殺した廉で二人の船員が死刑となっていた。しかし読み進むうちに、モースは著者がいくつもの重要な事実を見落としているのに気がついた。死刑になった二人は本当に有罪だったのか?モースの頭脳がめまぐるしく回転しはじめた。歴史のミステリの名作『時の娘』を髣髴とさせる設定で描く、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作。
故郷銀河から3200万光年離れた島宇宙M-87で、宇宙航行種族を求めてさまようローダンたちは、微弱なハイパー・インパルスをキャッチした。発信源をたどった《クレスト4》は、巨大赤色恒星の周回軌道上で驚くべきものを発見した。発信源は、三百隻ずつの転子状宇宙船がでたらめに接合された統計三千隻の大宇宙船団だったのだ。ローダンは発信者とコンタクトをとるため、コマンド隊員とともに転子状船に乗りこむが…。
わたしの名前はニタ。15歳になったばかりの女の子。“研究所”と呼ばれる建物で、描型エイリアンのリペルと暮らしている。リペルは外に出ちゃダメっていうし、わたし以外に人間はいないしで、毎日たいくつ。でも、リペルに入ってはいけないといわれた建物に行ってみたら、同じ年ごろの男の子がいたのだ。その子と二人でリペルを説きふせ、わたしたちは人間がいなくなった理由を調べに、研究所の外へ冒険の旅に出た…。
銀河を越えて送られてきた遺伝子情報をもとに,十肢生物ナーによって作られた人類。だが、人類をあくまで庇護しようと考えるナーと、自らの独自性を追求する人類とのあいだには、深刻な対立が生じてしまった。人類がその解決策として選んだのは、ナーに別れを告げることだった。宇宙を航行する巨大なスペース・ツリー〈イグドラシル〉に乗りこみ、自分たちの故郷、3700万光年の彼方にある地球めざして旅立つのだ…。
遥かな地球をめざす壮大な銀河間航宙の途上で人類は、二つのブラックホールが一つに融合しようとする、恐ろしい光景に遭遇した。しかもそこから発生する膨大なエネルギー流が、前方に迫ってきている。スペース・ツリー《イグドラシル》も瞬時に呑みこまれてしまうだろう。人類が助かるには、ブラックホールとブラックホールのあいだのわずかな〓@68D2間を、決死の覚悟で通りぬけるしか方法はない…。好評『創世伝説』の続篇。