1991年7月1日発売
トロツキー、イサム・ノグチ、ニコラス・マーレイを虜にした、世界的壁画家ディエゴ・リベラの妻フリーダ・カーロ。夫の愛人やジョージア・オキーフらとの同性愛をも噂されたスキャンダラスな熱情は、だが何よりも、絵画に捧げられていた。メキシコ革命の洗礼、瀕死の事故とその後遺症という聖痕…。フリーダは苦痛を描いて生命を伝え、死を描いて豊穣なる大地の再生を祈り続ける。ブルトン、ピカソ、エイゼンシュテインらが熱き称賛を送った、メキシコを代表する画家フリーダの“自画像”を鮮烈に描く。
この地球を「誰が」救うのか?地球が病んで、動物たちが姿を消しはじめたとき、みんなを救うために「虹の戦士たち」があらわれるという予言を、君の柔らかな心に届けたい。アメリカ・インディアンに伝わる偉大なる「小さな物語」。
私は両耳をつかまれて、高々と持ち上げられた可哀想なうさぎー。理不尽ないじめに苦しむ少女に兆す暗い思いを豊かな筆緻で描いた表題作のほか、子守歌に恐怖と孤独を覚える少女を見つめた佳篇「こぎつねこん」を収録。平林たい子賞受賞の話題作。
降り続く砂に覆われ、廃墟と化していく都市の崩れゆくビルの地下で、前時代の戦車の復元に情熱を燃やすキキと少年たちー。不毛な光景の中、哀しくも美しい愛を求める若者たちの、こころやさしい近未来純愛長篇小説。
本書では、1941年12月の日本軍によるマレー半島占領から始まり、当時16歳のラザク青年がマラッカの興亜訓練所で日本語を学び、南方特別留学生に抜擢されて来日、広島文理科大学で原爆に遭遇し、わずか1年半の日本留学を止むを得ず中止して帰国するまでの、太平洋戦争に重なる4年間の青年時代をとりあげている。
八ヶ岳周辺のゴルフ場にゴルフバッグに詰められた女性のバラバラ死体が分散して送られてきた。長野県諏訪署の道原伝吉刑事は、すべてのバッグの送り主である東京の開業医、赤城貫三郎から捜査を開始する、が、事件は怨恨の線が強く迷宮入りかにみえた。だが、道原の執念は数年前に起きた赤城医師の医療ミスに辿りついて…。長篇山岳ミステリー。
コンピューターメーカー・東洋電気と警察庁が、ある目的のためコンピューターによる“個人監視システム”を極秘に完成させた。しかし天才ハッカーを擁する秘密組織がこのことを察知、「二日以内に百億ドルを用意せよ」と警察庁を脅迫する。協力を要求された東洋電気は、システムの開発者・長我部萌子にハッカー対策を要請。だが、長我部はなぜか突如失踪、二日間のタイムリミットが迫る中、長我部を求め、彼女の同僚・吾妻圭介が必死の追跡を行なうが…。巨悪の殺意が吾妻を襲う。疾る戦慄、溢れるスピード感、期待の大型新鋭が抉る情報社会の裏面。新感覚ニューウェイブ・ハードサスペンス書下ろし力作。
一代で財を成した一ケ原高顕が死んだ。妻子を持たない高顕の莫大な遺産の相続にあたって、生前彼が残した遺言書が一族の前で公開されることになった。一族は高顕がオーナーだった、“回廊亭”と呼ばれる旅館に集められた。さらに、一族の他に、本間菊代という老婆が関係者という形で、回廊亭に招待されていた。だが、菊代の真の目的は別なところにあった。半年前に回廊亭で起きた心中事件の真相を探るためにやってきたのだった。その夜、第一の殺人が。心中事件に絡んで巻き起こる回廊亭での怪事件、何がここで起こったのか?そして、何がここで起こるのか。著者の新境地を拓いた、書下ろし長編推理小説力作。
田坂元太郎は、大手の家庭電化製品販売会社の開発係長。33歳。バリバリ働いて、女性にはモテモテなのに、評判の恐妻家であった。ところが、ある夜、不倫の味を知り、人生観が一変した。女性はすべて恋人である。彼はカチカチカクテルを発明し、OL、社長秘書、モデル…と次々に昇天させ、その結果、出世の糸口を掴んでいく。娯楽と実益をかねた、勤め人の清涼剤。
「ポルシェ959で高速道路を350キロで走ってみせる」元レーシング・ドライバー・唐山から、公安二課に不敵な挑戦状が届いた。唐山の真の狙いは?急遽、特捜刑事に任命された高速隊のはみ出し者、天宮駿介は激しいバトルのすえ、中央道・阿智P・Aの先で唐山を追いつめた。が、突然狙撃され、しかもポルシェは忽然と姿を消した。迫真のカーアクション傑作。
明治維新前後の混乱期。官軍となった薩摩・長州藩士の中には、心驕って汚職や不正を働く輩も。このため、一般民衆の生活はあまり向上せず、かえって負担が重くなり、苦しくなった。新政府の不正を暴き、理想の世を築くために、欲も野心もなく、純粋な情熱を傾けて戦った男たち。反逆者の汚名をうけ、空しく命を失った彼らの波乱に満ちた生涯を描く傑作歴史小説。
1945年8月、出撃を目前にした「神風」特攻隊員原田に信じ難い命令が下った。「戦争は終わった。全員引き揚げよ!」憤怒と恥辱にまみれ、玉音放送に聞き入る原田。この時、彼は復讐を誓った。“いつの日にか、この無念を晴らしてやる!”1991年12月、真珠湾。日米首脳が一堂に会した開戦50周年記念式典の上空に一機のゼロ戦が飛来した。機上には、「神風」の鉢巻きをしめた老いた原田が…。ミリタリー・ノベルの鬼才が放つ問題作。
ダービーの優勝をめぐるブランスカム伯爵の陰謀-。それを知ったアルチェスター侯爵は、復讐を決意する。名もなく、貧しい娘をにせの貴婦人に仕立てあげ財産目あての結婚をもくろむ伯爵に押しつけよう。侯爵は復讐を胸に孤児院を訪れる。そこには、骨と皮ばかりにやせた娘キストナがいた。
深夜、部屋に忍び込んでくる男の影にサラは身を硬くした。ここはニューヨーク-。どんなことが起こってもおかしくない街。でも、引っ越し早々に、いったい何者が?しかし、じっとしているわけにはいかない。サラはテニスラケットを手にすると侵入者に向かって思い切り振り下ろした。
コロラド州デンバー。ダンは、亡き伯父であり、共同経営者だったチャーリーの屋敷の扉を開けた。チャーリーの遺言によって年若い未亡人コリーンに遺された会社の株を譲ってもらうためだった。いったい伯父はなぜあんな遺言を残したのだろう。このままでは、社の実質上の経営権は彼女に奪われてしまう。
奥州八戸よりの旅を急いで江戸は飛鳥天王社の境内にさしかかったのは、妻お霜と愛児のおみやを同道した吾妻一平であった。北町奉行となった遠山左衛門尉景元の密命を受けた一兵が、八戸に闇太郎様にまつわる奇怪な謎を探っての帰途であった。江戸に近づいた一兵は、ふと目にした「闇太郎様」と書かれた紙切れに誘導されて踏み込んだ荒れ寺で、墓場のような地獄の闇を思わせる深い穴の中へと落とし込まれてしまった。日本に亡命したイエス・キリストは八戸太郎と改名、その子孫は生きつづけているという。それが妖しの闇太郎様か、黒頭巾に面を包んだ遠山景元は秘かに常磐津文字千賀を訪ね、元大目付松本左膳の屋敷への潜入を命じた。遠山金さん奉行の活躍は、伝奇傑作長編。
連戦即決で解決したはずの人質篭城銀行強盗事件の陰に、意外にも大手不動産会社と与党大物政治家を長とする土地問題等委員会に一大疑獄が隠されていた。特捜の若手検事たちが再三、正体不明の殺し屋に襲われる事態に、ガードについたのがご存じ竜崎軍団だった。一方、パリの国際刑事機構から、警察庁外事課へ麻薬取締まり強化の指令が飛んできた。いまや全世界を恐怖に陥れている新麻薬クラックをめぐっての国際的陰謀が、この日本国のどこかで実現しようとしている。銀行強盗事件・特捜検事襲撃など、一見無関係に見える二つの線がつながってきた。-悪の世界三大組織を敵に回して奮闘するはおなじみの美女リタ・グレイと竜崎軍団、そして伴、アップテンポに展開する激賛、戦慄の第20弾。