1991年7月1日発売
この男は蛇に似ている-これが、はじめてロイ・マーシュと顔をあわせたときに私立探偵ジョン・カディのうけた印象だった。ロイと離婚訴訟中の妻ハンナが夫を恐れるのも無理はなかろう。カディはそのハンナから頼まれて、彼女のボディガード役として離婚協議の席にたちあったていたのだった。話し合いは、ハンナから家の所有権を求められたロイが激昂し、そのまま物別れに終わった。だが、ロイはおとなしくひきさがっているような男ではなかった。ハンナの家に忍びこむと、幼い娘のかわいがっていた子猫を虐殺したのである。娘を巻きこんだ卑劣なやり口に怒りをおぼえたカディは、ロイと対決すべく彼の家へのりこんでいったが…。夫の暴力の影に怯える母と娘をまもるべく、ボストンの知性派探偵がたちあがる。待望のシリーズ最新作。
リゾート小惑星シルヴァーサイドがついに完成した。華やかな開幕セレモニーにつめかけたあまたの名士や貴婦人たちのなかに、われらが快盗マイジストラルの姿もあった。狙いは、銀河に名高い宝石《エルトダウンの炎》。だがこの宝石を狙っているのは彼だけではない。宿命のライバル、フウ・ジョージも、この警戒堅固な小惑星に乗りこんできていたのだ。エレガントな快盗の胸のすく活躍をえがく人気沸騰シリーズ第2弾。
人類の長年の夢がようやく実現した。太陽系外の星系への植民がついに可能になったのだ。多国籍企業アライド・トランスコンの傘下にあるディアスポラ事業団は、すでに最初の恒星間世代宇宙船ウル号を2083年にイプシロン・エリダニへ向けて出発させた。さらにタウ・セチをめざす巨大な第二の宇宙船、乗員1万人のメンフィス号の完成も目前に迫っている。だが、この宇宙計画に反対するテロ・グループが暗躍しはじめていた…。
星々に憧れ、なんとかメンフィス号に乗に組む1万人の開拓者に選ばれたいと望む人々とは対照的に地球の貴重な資源と人材を宇宙へ送るのは無意味だと考えるグループがいた。なかでも、エレミアに率いられるホームワールドは、宇宙計画をすすめる企業アライド・トランスコンに対しつぎつぎと妨害活動をしかけてくるが…。宇宙開発にたずさわる人々の姿を最新の科学知識を縦横に駆使して迫真の筆致で描きだす力作長篇。
男と女の心を誘惑し、罪な恋のとりこにする愛の女神アプロディーテー。あろうことか、この女神の御名においてあなたを愛す、と口ばしりながら、カッサンドラーに迫る美貌の神官が現われた。しかし、太陽神アポローンに仕える彼女は人間の男に愛を捧げるわけにはいかない。これを知った神官は今度はアポローンの仮面をかぶってカッサンドラーの寝室に忍びこむが…。トロイア戦争の伝説を女性の視点から語り直した野心作。
外惑星連合軍と航空宇宙軍の壮絶な闘いが終結した。外惑星連合軍にとって、はじめから勝算の見込みの薄い闘いではあったが、やはり兵士たちにとって敗れたショックは大きかった。戦後処理のため敵軍が敷設した宇宙機雷処分の命を受けたガニメデ宇宙軍所属の掃海艇CCR-42の艇長・田沢も例にもれなかった。その田沢に対して、厳重に機雷封鎖された木星の小衛星に設置された研究所のデータ回収が言い渡されたが…。
保安会社を経営するスタフォードは、かつての恋人から奇妙な相談を受けた。巨額の遺産を相続した彼女の夫が、不審な行動をとりはじめたというのだ。調査を始めたスタフォードは、遺産を詐取しようとする邪悪な企てに気づき、これを阻止すべく灼熱のケニヤに飛んだ。遺産の背後に、アフリカ全体を揺るがす巨大な陰謀が隠されているとも知らずに…。『サハラの翼』のスタフォードが再び活躍する巨匠の傑作冒険サスペンス。
軍需物資を満載してソ連に向かう輸送船団の護衛作戦ーそれは北極圏の想像を絶する寒さと暴風雨にさらされる、英国海軍最悪の任務だった。しかもキャメロン大尉の乗るフリゲート艦スプリンターには、さらに困難な任務が課せられていた。独ソ戦の勝敗を左右する重要人物2名を、ムルマンスクへ極秘裡に護送せよというのだ。だがバレンツ海では、強力なドイツ艦隊が満身創痍の輸送船団を待ち受けていた。シリーズ第5巻。
お願い、わたしの生物学上の父を探してー。閑散としたオフィスに突然飛び込んできた少女にサムスンは面食らった。大富豪クリスタル家の一人娘が、血液型から自分は実の子ではないことが判明したと涙ながらに訴えるのだ。さっそくクリスタル家の系譜を探り始めたサムスンは、こころならずも名家の巨富をめぐる醜悪な争いに巻き込まれてゆく。暴力を憎む心優しき知性派探偵アルバート・サムスン、文庫初登場。改訳決定版。
離婚調停が泥沼化し、わたしは意気消沈していた。ベルリンで開かれる名画展の仕事に飛びついたのもそのせいだ。が、わたしはたかが一介の美術館学芸員、そこで思わぬ冒険が待っているとは夢にも思っていなかった。名画展の主任が「この中に贋作がある」と言い残し、謎の死を遂げるまでは…。軽妙な語り口と本格派の香りが魅力の、エルキンズの新シリーズ。
ナチ・ドイツの崩壊を目前にした1945年春。英米軍は西から、ソヴィエト軍は東から、ベルリンに迫っていた。そのソヴィエト軍のなかに密かに〈大天使〉作戦なる計画を企む者たちがいた。〈大天使〉作戦-それは、東部戦線の全ソヴィエト軍を結集してドイツ軍を撃破したのち、その兵力で英米軍を攻撃、いっきょに全ヨーロッパを席捲しようという極秘の軍事作戦だった。作戦の計画文書を手に入れた英国は、ソ連の企みを撃破するため〈守護天使〉作戦を発動する。ドイツの最新鋭機を使って、チェコ領内にいる計画の中心人物シャポシニコフ元帥を秘密裡に抹殺するのだ。かくて密命を帯びた英軍パイロット、クルーズが、戦乱のドイツに潜入する。だが、クルーズはゾヴィエト側に恐るべき最終手段があることを知るよしもなかった。「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリィ」の元編集者が史実をおりまぜて壮大なスケールで描く航空冒険巨篇。
ロシア革命-激動の時代歴史の暗部に日本人がいた。広漠たるロシアの雪原を血に染めて絶望への行軍が続く。謀略に運命を踏みにじられた日本の女と男…。莫大な金塊のゆくえは?TOKUMA冒険&推理特別書下し。
画家の真野亮介は、T電機工業に勤める親友の向井潤三の怪死に驚いた。向井は、M鉱山の廃坑内で落盤による圧死体となって発見されたのだ。亮介は、向井から数日前に謎の鍵を託されて不吉な予感していたが、それにしてもいったいなぜ?しかも向井は出張中のはずである。向井の事故死を信じられない亮介は、美人OLの神殿真由美、易者の影山真改という強力な助人を得て真相を追うが、やがて第二の殺人事件に巻き込まれる…。巨悪の壁に挑戦する男たちを、情感あふれる筆致で描く傑作サスペンス・ミステリー。
狂熱の大都会、レミントン・シティのタフガイ、ダン警部と、コンビのポップ刑事は、連続殺人事件を追っていた。七人の犠牲者は少女を含め、いずれも娼婦だった。浣腸後、犯され、腹を切り裂かれたのだ。街ではテロが頻発し、警官は次々と駆り出されていく…。二人だけの捜査を強いられたダンとポップは、恐怖がとり巻く街に、容赦のない戦いを挑んだ。破壊と報復で血塗られた闇夜に、彼らが見た狂気の真相とは何か?そして再び、残虐な殺戮が…。飢えた天使が摩天楼を地獄に変える時、ダンの怒りのマグナムが炸裂する。