1991年7月1日発売
太平洋戦争が終わって数年、焼け跡の広場で少年たちは三角ベースで遊んでいた。ラジオは「尋ね人」や「リンゴの唄」を流し、ポケットには宝物のような英字ビスケットが入っていた…誰の心にも残る、あの、なつかしい日々をつづった自伝的長篇小説。
父親の死が近づいているのに女優のゆり子は番組に出演しなければならない。録画撮りが始まって、彼女はスタジオのあちこちに時計があることに初めて気づく(時計)。停年の翌日から家の前を掃き出した貞冶が知る町の顔、妻の声(朝の竹箒)。息子のような若い男に恋心を覚えた京子の戸惑い(二足のハイヒール)。日常に溶けこんだ“物”たちを通して浮かびあがる男と女、オトナと子供の様々な人生。
突然ひらめいた旋律を追い掛けていたぼくの右脚に、スリップした車のバンパーがぶつかってきた。それがぼくと静香との出会いだった。それから2年、ぼく達はとても仲の良い夫婦として暮らしていた。でも、魅惑的で謎めいた少女ルルがぼく達の前に現われた時から、少しずつ何かが変わりはじめた。とろけるような音楽、倒錯した性、そしてドラッグ…。新感覚トライアングルLOVE STORY。
中津藩下級武士の次男に生れた福沢諭吉は幼少から合理精神の持ち主。長じて蘭学に通じ、英語を学んで、世界に目を開いて行く。咸臨丸で渡米したことは、身分と自由についての考え方に強い確信を持たせた。著書「西洋事情」はベストセラーに。時は動乱の幕末、上野の山に砲声を聞きながら、慶応義塾は開講する。若者たちとともに、新しい日本を目指して!
経営危機に直面した佐世保重工(SSK)は、銀行団と大株主間の思惑、利害が複雑に絡み合い、再建計画は漂流を続けていた。更には地元自治体、及び福田政権をも巻き込んで救済策が模索されていた。経済界の重鎮永野重雄は、来島どっくグループの社長坪内寿夫にSSKの再建を要請する。苦悩の末、要請をうけた坪内は、私財280億円を投入、ドロ沼の労使対決から見事にSSKを蘇らせる。迫真の実名経済小説。
不幸な生い立ち、不運の連続ながら、清く正しく生きる宮脇年輝。そんな年輝のもとに、またまた不運がやってきた。なんと、妖怪・天邪鬼に取り憑かれ、一緒に暮らすはめになってしまったのだ。天邪鬼の悪戯に悩まされる年輝。でもこの天邪鬼、ただの妖怪じゃなくて、なにかとてつもない秘密があるらしい。『星虫』の著者がおくるハート・ウォーミングな書下ろしファンタジー。
鉄に潜み、刀に形を変え、ひっそり受け継がれてゆく、魔。それは人に憑いて、その運命を変える。一介の僧侶だった斎藤道三は、戦場で一振りの古い刀を拾ったことから出世の階段を登りはじめる。道三の愛妾が生み落とした赤ん坊は、刀とともに忍者集団に拾われ、シナと名付けられた。魔剣に憑かれた美貌の少年シナの運命とは。絢爛豪華に描く、鮮烈歴史ファンタジー巨編、デビュー。
京都発城崎行き特急「あさしお3号」の車内で、十津川警部の友人で作家の沢田功が殺された。事件を追う十津川は、城崎で沢田と会う予定になっていた画家の滝村敬をマークする。しかし、滝村にはアリバイがあった。「あさしお3号」より14分前に城崎に到着した特急「北近畿5号」から隆りる姿が目撃されていたのだ。十津川警部は鉄壁のアリバイを崩せるか?表題作など3編。
刑事上がりのおれは、現在、浅草の高層ホテル『ハイライズ下町』の夜間警備責任者。アメリカ流に呼べば、ホテル探偵ということになる。ある夕方、警備室に奇妙な電話がかかってきた。今夜、ホテルの泊まり客を殺すから、それを制(と)めてくれ、というのだ。どうやらいたずらではないらしい。これが事件のプロローグだった…。近代的高層ビルの30時間を描くサスペンス。文庫書下ろし。
飢饉の奥州から江戸へ出てきた百姓の息子が、奇妙な稼業を転々としながら意外なきっかけで大店の婿養子となる「けつめど」、密偵でありながら潜入先越後新発田藩の善政を知り、あえて将軍の意向に反する復命をして、後に新発田藩主から直々に感謝状を受ける幕府御庭番を描いた「おんみつ侍」。-さまざまな生きざまを艶やかに、そしてせつなくも滑稽に描いた侍シリーズ番外編。
癌で夫を亡くし、暗い日々を送っていたジャネットは、あるパーティーで魅力的な男性シェリダンと出会う。二人はやがて、結婚の約束を交わすまでの仲に。が、幸福の絶頂で事件は起きた。シェリダンがレバノンでテロリストに誘拐されたのだ。しかも、彼の正体はCIAのスパイ。人質解放交渉は遅々として進まず、CIAの対応に業を煮やしたジャネットは、単身、中東へ飛んだが…。
ハーマン・ゴールドは〈ゴールド航空アンド運輸〉の経営者として航空機製造に精魂を傾け、優秀な戦闘機乗りになった息子のスティーブンは各地を転戦し、次々と戦功をたてる。熾烈な新機種開発競争、受注をめぐる虚々実々の駆け引き、落とすか落とされるかの息詰まる空中戦、パイロットたちの熱い友情…。第二次大戦から朝鮮戦争までの時代を背景に、大空に憑かれた男たちの活躍を描く。
閑散とした真冬の避暑地ノース・ウォルポールで、ボストンの大富豪ドレグゼル夫人が殺された。そして、明らかにされた彼女の遺書には、巨額の遺産を自然保護団体に遺すことが記されていた。死体の発見者で元新聞記者のマックは、記事の執筆を元依頼され、取材を開始する。夫人が殺されたのは開発絡みなのか、それとも…。大富豪未亡人殺人事件の謎に挑む元新聞記者マックの活躍。