1991年7月1日発売
経営危機に直面した佐世保重工(SSK)は、銀行団と大株主間の思惑、利害が複雑に絡み合い、再建計画は漂流を続けていた。更には地元自治体、及び福田政権をも巻き込んで救済策が模索されていた。経済界の重鎮永野重雄は、来島どっくグループの社長坪内寿夫にSSKの再建を要請する。苦悩の末、要請をうけた坪内は、私財280億円を投入、ドロ沼の労使対決から見事にSSKを蘇らせる。迫真の実名経済小説。
不幸な生い立ち、不運の連続ながら、清く正しく生きる宮脇年輝。そんな年輝のもとに、またまた不運がやってきた。なんと、妖怪・天邪鬼に取り憑かれ、一緒に暮らすはめになってしまったのだ。天邪鬼の悪戯に悩まされる年輝。でもこの天邪鬼、ただの妖怪じゃなくて、なにかとてつもない秘密があるらしい。『星虫』の著者がおくるハート・ウォーミングな書下ろしファンタジー。
鉄に潜み、刀に形を変え、ひっそり受け継がれてゆく、魔。それは人に憑いて、その運命を変える。一介の僧侶だった斎藤道三は、戦場で一振りの古い刀を拾ったことから出世の階段を登りはじめる。道三の愛妾が生み落とした赤ん坊は、刀とともに忍者集団に拾われ、シナと名付けられた。魔剣に憑かれた美貌の少年シナの運命とは。絢爛豪華に描く、鮮烈歴史ファンタジー巨編、デビュー。
京都発城崎行き特急「あさしお3号」の車内で、十津川警部の友人で作家の沢田功が殺された。事件を追う十津川は、城崎で沢田と会う予定になっていた画家の滝村敬をマークする。しかし、滝村にはアリバイがあった。「あさしお3号」より14分前に城崎に到着した特急「北近畿5号」から隆りる姿が目撃されていたのだ。十津川警部は鉄壁のアリバイを崩せるか?表題作など3編。
刑事上がりのおれは、現在、浅草の高層ホテル『ハイライズ下町』の夜間警備責任者。アメリカ流に呼べば、ホテル探偵ということになる。ある夕方、警備室に奇妙な電話がかかってきた。今夜、ホテルの泊まり客を殺すから、それを制(と)めてくれ、というのだ。どうやらいたずらではないらしい。これが事件のプロローグだった…。近代的高層ビルの30時間を描くサスペンス。文庫書下ろし。
飢饉の奥州から江戸へ出てきた百姓の息子が、奇妙な稼業を転々としながら意外なきっかけで大店の婿養子となる「けつめど」、密偵でありながら潜入先越後新発田藩の善政を知り、あえて将軍の意向に反する復命をして、後に新発田藩主から直々に感謝状を受ける幕府御庭番を描いた「おんみつ侍」。-さまざまな生きざまを艶やかに、そしてせつなくも滑稽に描いた侍シリーズ番外編。
癌で夫を亡くし、暗い日々を送っていたジャネットは、あるパーティーで魅力的な男性シェリダンと出会う。二人はやがて、結婚の約束を交わすまでの仲に。が、幸福の絶頂で事件は起きた。シェリダンがレバノンでテロリストに誘拐されたのだ。しかも、彼の正体はCIAのスパイ。人質解放交渉は遅々として進まず、CIAの対応に業を煮やしたジャネットは、単身、中東へ飛んだが…。
ハーマン・ゴールドは〈ゴールド航空アンド運輸〉の経営者として航空機製造に精魂を傾け、優秀な戦闘機乗りになった息子のスティーブンは各地を転戦し、次々と戦功をたてる。熾烈な新機種開発競争、受注をめぐる虚々実々の駆け引き、落とすか落とされるかの息詰まる空中戦、パイロットたちの熱い友情…。第二次大戦から朝鮮戦争までの時代を背景に、大空に憑かれた男たちの活躍を描く。
閑散とした真冬の避暑地ノース・ウォルポールで、ボストンの大富豪ドレグゼル夫人が殺された。そして、明らかにされた彼女の遺書には、巨額の遺産を自然保護団体に遺すことが記されていた。死体の発見者で元新聞記者のマックは、記事の執筆を元依頼され、取材を開始する。夫人が殺されたのは開発絡みなのか、それとも…。大富豪未亡人殺人事件の謎に挑む元新聞記者マックの活躍。
「見晴しが丘」はかつて「雷山」と呼ばれ富士山の見える「のぞき岩」があった。この地で育った中年サラリーマンと、地方出身の青年フリーター。“故郷をなくした”二人の人生が交叉する一瞬…。都市郊外の光景と人間模様を鮮かに描く長編小説。
この男は蛇に似ている-これが、はじめてロイ・マーシュと顔をあわせたときに私立探偵ジョン・カディのうけた印象だった。ロイと離婚訴訟中の妻ハンナが夫を恐れるのも無理はなかろう。カディはそのハンナから頼まれて、彼女のボディガード役として離婚協議の席にたちあったていたのだった。話し合いは、ハンナから家の所有権を求められたロイが激昂し、そのまま物別れに終わった。だが、ロイはおとなしくひきさがっているような男ではなかった。ハンナの家に忍びこむと、幼い娘のかわいがっていた子猫を虐殺したのである。娘を巻きこんだ卑劣なやり口に怒りをおぼえたカディは、ロイと対決すべく彼の家へのりこんでいったが…。夫の暴力の影に怯える母と娘をまもるべく、ボストンの知性派探偵がたちあがる。待望のシリーズ最新作。
リゾート小惑星シルヴァーサイドがついに完成した。華やかな開幕セレモニーにつめかけたあまたの名士や貴婦人たちのなかに、われらが快盗マイジストラルの姿もあった。狙いは、銀河に名高い宝石《エルトダウンの炎》。だがこの宝石を狙っているのは彼だけではない。宿命のライバル、フウ・ジョージも、この警戒堅固な小惑星に乗りこんできていたのだ。エレガントな快盗の胸のすく活躍をえがく人気沸騰シリーズ第2弾。
人類の長年の夢がようやく実現した。太陽系外の星系への植民がついに可能になったのだ。多国籍企業アライド・トランスコンの傘下にあるディアスポラ事業団は、すでに最初の恒星間世代宇宙船ウル号を2083年にイプシロン・エリダニへ向けて出発させた。さらにタウ・セチをめざす巨大な第二の宇宙船、乗員1万人のメンフィス号の完成も目前に迫っている。だが、この宇宙計画に反対するテロ・グループが暗躍しはじめていた…。
星々に憧れ、なんとかメンフィス号に乗に組む1万人の開拓者に選ばれたいと望む人々とは対照的に地球の貴重な資源と人材を宇宙へ送るのは無意味だと考えるグループがいた。なかでも、エレミアに率いられるホームワールドは、宇宙計画をすすめる企業アライド・トランスコンに対しつぎつぎと妨害活動をしかけてくるが…。宇宙開発にたずさわる人々の姿を最新の科学知識を縦横に駆使して迫真の筆致で描きだす力作長篇。