1991年8月1日発売
雪に覆われた山中の砦に、アンジェリクは三人の子どもたちと取り残された。ある夜、そこへ何者かが瀕死の男を運びこんだ。男の胸にはルビー入りの十字架が…。謎の神父オージュヴァルとの運命の出会いと息づまる二人の対決。長い苛酷な冬が終わり、アンジェリクの愛と勇気がすべてに打ち克つまでを描く感動の最終巻。
ぼくが21歳だった5年前の夏、ビデオ映像研究会のスター、白石真利恵は、ベランダから落ちて死んだ。不慮の事故のはずであった。そして5年。真利恵の恋人、伊貫はメンバー全員を集め、ゲームを提唱した。ゲームを通じて彼女を殺した人間を探りあてようというのだ。ラスト1ページ、ラスト1行の底深い戦慄。
ロングアイランド・シティにある私の事務所からは、マンハッタンのきらびやかな夜景が一望できる。だが反対に、持込まれる仕事は血なまぐさい死体つきだ。敵は私を中年女だと軽く見ているが、そのへんのタフ・ガイに腕力で負けていては、私立探偵はつとまらない。そして今日も、高級将校の死体がひとつー。
鯛釣り名人波太郎はアメリカから戻ると下田から西伊豆、浜名湖へと修行の旅を続ける。沖泊り源平とのカツオ釣り勝負は写真家と地元漁師が加わって大波乱。負けた方が陸に上がる条件で再び対決を迎えるが事態は一変、美女暁子と波太郎は北海道へ飛ぶ。魚に対する敬意と海の愛し方を説く、真の男の冒険行。
初期作品「鴉の死」、長篇『火山島』をはじめとして常に“幻のふるさと”韓国・済州島の地を描くことにより己れの“存在の危機”を表現し続ける在日の作家金石範。深い谷間の奥の観音寺に住みついた一人の飯炊き小坊主の世の常識を超えた伝心の“聖性”を描く『万徳幽霊奇譚』と架空スパイ事件の“主謀者”とされた若者の悲劇『詐欺師』。痛烈な諷刺と独特のユーモアの“稀有なる人間像”の創出。
僕は、リー・マルコム。ケープ・コッドの近くの小さな町に生まれ育った。家族は、親父のフランク、長兄のポール、次兄のジョーイと僕の4人。あと、大きな雑種犬。母親は、僕が2歳の時に家を出ていったそうだ。僕に野球を教えてくれたのはジョーイだった。親父に話してグローブを買ってもらい、キャッチボールから教えてくれた。ジョーイは、高校卒業後1週間目に、交通事故で死んでしまった。町には草野球チームがあり、ケープ・コッド・リーグという野球連盟に属していた。ある日、僕のチームのコーチで、リーグの副会長をしていたジョー・マレッタに頼まれ、ジュニア・チームの審判を代役でやった。この審判ぶりがマレッタに認められ、僕は、1試合15ドルで、アルバイトでリーグの審判をすることになった。これが、すべての始まりとなった。やがて卒業の時がやってきた。僕は、州立大学へ進学するか、マレッタが教えてくれたフロリダの審判養成学校へいくか迷っていた。誰もが一度は通過しなければならない大人への入口。人生というゲームで出会うさまざまな出来事。アメリカが輝いていた50年代、素晴らしいアメリカ野球の世界を、審判という変わった視点から描く、爽やかな青春小説。
アモーレ化粧品会社に勤めるOL村上加奈子は同僚と共にゴールデンウィークにサンファンからカリブ海を一巡する豪華な船旅と島々の観光を楽しむ「カリブ海クルージング」に出かけた。ツアーのメンバーは加奈子たちと2組の夫婦、商社マン2名、添乗員の一行。客室400の豪華船「サンシャイン」号のクルージングが始まったが、加奈子は妙な胸騒ぎが…。南海の楽園に何かが起こる…。豪華なクルージングに忍びよる殺意。書き下し長編ミステリー。