1991年8月発売
窯神伝説窯神伝説
時は昭和2年。加藤唐九郎から借り受けた芝居の台本が、焼物原料業を瀬戸で営む加藤庄三の後の人生を変える。瀬戸の窯神・加藤民吉と九州に置き去りにしたとも伝わる現地妻との哀しい物語であった。民吉が新しい焼もの技術を九州で盗み出したという通説は違うのではないか。「第69回オール読物新人賞」「第12回小説CLUB新人賞」受賞作家である著者自らが、カルチャー・サスペンスと名付ける書下ろし最新作。
十三の墓標十三の墓標
「パパもママも帰って来ないの」5歳の少女が警視庁に勤務する坂口正二を訪ねて訴えた。姉夫婦になにがあったのか、若き刑事は不吉な予感に襲われた。義兄の死体は福島県石川町で発見された。また王朝時代の女流歌人〈和泉式部〉の研究家吉川は数日前に佐賀県有明町で義兄が歩いている姿を目撃したという。この離れた二つの町を結び付けるものは和泉式部の墓。そして、姪の証言から「イズミ」という謎の人物の存在が浮かび上がり、事件はがぜん美女伝説めいてくる…。余部鉄橋、天橋立股のぞき、猫啼温泉、旅情ゆたかに展開する傑作ミステリー。
尋ね人の時間尋ね人の時間
都市に暮らす人々はいま、豊かな物質と過剰な情報の洪水の中で疲れきり、たしかな「自分」を見失っていはしないだろうか。「尋ね人の時間」は自分捜しの物語だ。失踪した鳥を探し求める鳥篭のように、失われたわれを求めて尋ねさすらうカメラマンと女子大生の哀しくも結ばれぬ関係ー。現代人の心の空洞を描く芥川賞受賞作。