1992年12月1日発売
サドの代表的著作、ジュリエットの物語『悪徳の栄え』と対をなす妹ジュスティーヌの物語には三つのバージョンが残存している。本書はその最初の版である「原ジュスティーヌ」とでも称すべき中篇である。バスティーユ牢獄中にて書かれ、革命のどさくさに粉れて紛失され、100年ののちに陽の目をみた本書はサドの思索のエッセンスが凝縮された異色作である。
建設業界を背後から牛耳っていた元総理と建設土木業界の首領の相次ぐ急死は、政界はもとより、業界に大きな衝撃を与えた。日本高速道公団が発表した常越高速自動車道の建設計画に対し、業界内の調整がまったく白紙の状態だったのである。公共事業を足場に次期総裁選を目指す政治家たちの暗闘と、入札にからむ建設土木業界の裏工作を描く長篇企業小説。
平凡な結婚生活をしていたはずの虫子粂喜だったが、妻の万利子に逃げられてしまう。執拗に妻の居場所を捜す虫子は金沢で猪野愛児と夫婦同然の暮らしをしていた万利子を見つけ強引に連れ戻すが、また逃げられてしまう。再び虫子から逃げた万利子は、猪野と釧路で密やかな暮らしを始めるが…。女の身勝手と男の執念を鬼才が描く長篇クライムサスペンス。
1992年9月、海上自衛隊呉基地に輸送艦『みうら』ほか2艦が集結した。PKO(国連平和維持活動)によるカンボジア派遣部隊の出港である。ところが、巨大津波が『みうら』を直撃。衝撃波で『みうら』は天下分け目の関ヶ原合戦直前にタイム・スリップ。異常事態に、伊達進助一尉はPKO軍団を結成、生き残り戦に挑む。佐々木小次郎らを配下に、抜群の破壊力を誇示し、桑名城攻略戦に…。そして、武器・弾薬に限りのあるPKO軍団は関ヶ原にある策略をしかけた。最新兵器と圧倒的物量の激突。関ヶ原合戦の行方は?伊達は家康の本陣を目指すが…。大迫力の書下ろしスペクタクル巨編“大逆説シリーズ”第7弾。
小川家は、郊外の分譲地にあった。駅まで歩いて20分。スーパーも自動販売機もない。週一回はひどい霧にすっぽり包まれるという寂しいところ。だから隣りに宮沢家が引っ越してきたときには、大歓迎だった。しかし、どうした偶然の一致か、宮沢家と小川家の家族構成は、各人の年齢までピタリ同じだった。平凡な家庭に起こる戦慄の事件。超人気作家が描く新恐怖小説。
夏目涼太郎は六本木に生まれ、家業である銭湯の番台で女の裸を見ながら育った。美大生の彼は、アルバイトで始めたヌード・カメラマンの仕事が忙しく現在は休学中の身だ。悪友の岩田は、家業の魚屋を嫌って何やら怪しげなカフェバーを始めた。地元育ちの若者と多国からの出稼ぎモデルが繰り広げる、恋とスリルとウイットたっぷりの『六本木バナナ・ボーイズ』第二弾。
骨肉相食む戦国の世、島津家は親子兄弟が堅固な団結力をもって、薩摩・大隅・日向、やがては九州全土の征服を目指した。20歳の初陣で大勝した義弘は、輝かしい武名を残すが、関ケ原の合戦に敗れ、家康陣の前を敵中突破、“島津の早駈け”で名を挙げた。兄義久と協力して、薩摩藩の繁栄の礎を築く。南国の猛将の生涯を通して、島津一族の絆を描いた長編力作。
文久三年十月、奇兵隊総管(隊長)に長州藩士・赤根武人が就任した。彼には密かな野望があった。百姓や町人すら兵にする奇兵隊の実力中心主義を押し進め、“だれもが同じ地位に横に並ぶ”組織を実現しようというのである。しかし、理想に向けて武人が邁進するにつれ、隊の創設者・高杉晋作との溝が深まり、連合艦隊砲撃の日、決定的な対立を迎えた…。
知将・越中富山城主佐々成政は、国の東西を羽柴秀吉の軍勢に挾まれ、絶体絶命の危機に陥った。徳川家康の版図・信濃に援軍を求めるには、厳冬の飛騨山脈を越えねばならない。成政は重臣たちの反対を押し切り、雪と氷の地獄に挑んだが、自然の猛威の前に兵たちは次々に倒れた。が、この無謀とも言える飛騨雪中行の背後には、驚天動地の陰謀が隠されていた…。長編歴史推理小説。
三十五万石彦根藩主の子ではあるが、十四番目の末子だった井伊直弼は、わが身を埋木に擬し、住まいも「埋木舎」と称していた。「政治嫌い」を標榜しつつも、一代の才子長野主膳との親交を通して、曇りのない目で時代を見据えていた。しかし、絶世の美女たか女との出会い、それに思いがけず井伊家を継ぎ、幕府の要職に就くや、直弼の運命は急転していった…。
なぜ、広い世界に目を向けようとしないのか?-米国総領事ハリスの嘆きは、同時に井伊直弼の嘆きでもあった。もはや世界の趨勢を止めることはできない。徒らに攘夷を叫ぶことは、日本国自体を滅亡させることだった…。腹臣長野主膳、それに直弼の密偵として、また生涯を賭して愛を捧げたたか女を配し、維新前夜に生きた直弼の波瀾の生涯を描く、不朽の名作。
「天下の英雄」か「侵略の鬼か」-。加藤清正は、日韓両国の間で、まったく正反対の評価を下され、さまざまな伝説が生まれた。ところが清正は、合理主義者で理財家、秀吉周辺の人々にまで付け届けを欠かしたことのない気配りの人で、世渡り上手であった。つまり彼は、〈虎退治の豪傑〉ではなかった…。日・中・韓の資料を駆使し、清正伝説の虚実を抉る歴史大作。
前田家に奥入れした二代将軍秀忠の娘珠姫に従うお付人一統-。利長の命と前田家の支配を狙うお付人一統に利長もついに起った。前田家が残した「前田日記」をめぐって展開される決死の攻防。
あたしの名前は大沢ルミ。学校からの帰り道に、変な二人組に誘拐されそうになったの。何とか逃げ出したんだけど、その次の日、ヒゲゴジラことうちのパパが中華街で連れ去られちゃって…。あたしたち一家を狙う秘密組織って一体何?オヨヨ大統領って何者なの?ギャグ、パロディ、風刺ー大人も子供も楽しめる傑作コメディ。〈オヨヨ大統領シリーズ〉の第1作。
メアリアンはゆっくりと人々から切り離され、孤立してきた。隅っこに追い詰められて、今はそこに座りこんでいる。手に膝をのせて。ほかに道はない。ほかに行くところはない。ディックの青春小説。
今年もクリスマスがやってきた。各種催し物の開催を初め、用事は山盛り。二男一女を抱えるジェーンには頭の痛いシーズンだ。おまけに今回は、疎遠にしていた旧友が性格最悪の息子を連れて遊びに来たから、たまらない。立ちこめる険悪ムードの中、事はついに殺人事件にまで発展し…。慣れない編み物片手に、真相解明に取り組む主婦探偵ジェーン。好評『ゴミと罰』に続く第二弾。
成城署の真名部警部は、偶然知り合った脳性マヒの少年の並外れた知性に瞠目するようになる。教えたばかりのオセロ・ゲームはたちまち連戦連敗の有様だ。そして、たまたま抱えている難事件の話をしたところ、岩井信一少年は車椅子に座ったまま、たちどころに真相を言い当てる…。数々のアイディアとトリックを駆使し、謎解きファンを堪能させずにはおかない連作推理短編の傑作。