1992年12月31日発売
ツアー旅行でオックスフォードを訪れたロース・ストラットンは、観光バスがホテルに着くとすぐに、夫をロビーに残したまま、部屋にあがった。はやく風呂にはいりたい。そうすれば、関節炎で痛む足もすこし楽になるかも…。しばらくして散歩からもどってきた夫は、裸のまま床に横たわる妻の死体を発見した。死因は心臓麻痺。だが、モース主任警部には腑に落ちない点があった。オックスフォードの博物館に寄贈するためローラがアメリカから携帯してきた高価な中世の装身具が、部屋から消失していたのだ。ルビーを填め込んだ黄金の装身具を盗みに入った者が、たまたま現場を目撃されてローラを殺害したとは考えられないだろうか?モースの疑念をさらに掻きたてるかのように、翌日、ツアー関係者のひとりが死体となって川面に浮かんだ。アメリカ人観光客と英国人ガイドたちの錯綜する証言をもとにモースが華麗な推理を展開するシリーズ最新作。
売れない純文学作家フレッドは一念発起、アメリカの土を踏んだ。ところがどう道をはずれたか、畑ちがいのコンピュータ会社に就職し、プログラマーにされてしまった。右も左もわからぬフレッドが命じられたのは、軍のためのAIロボット開発プロジェクト。かくて文科系人間フレッドは、人間も人工知能も右往左往する悪夢の悲喜劇に巻きこまれてゆく…。SF最後の鬼才スラデックがギャグと毒を満載して贈る抱腹絶倒の怪作。
いにしえより、魔力を持つ半神的種族デリニと人間との対立に揺れ動いてきたグウィネド王国。現在王国は、人間の王の統治下にあった。ところが、王が何者かに暗殺されてしまった。残されたのは弱冠14歳の王子ケルソン。父の王冠を継ぎ、その暗殺の真相をつきとめようとするケルソンだが、前途には思いもかけぬ邪悪な陰謀が待ち受けていた…。トールキン以後のファンタジイ・ブームの火つけ役となった人気シリーズ開幕。
数多くの傑作を世に送り出し、冒険小説の王者と称されたマクリーン。彼の唯一の短篇集である本書は、『女王陛下のユリシーズ号』を生み出すきっかけとなった記念すべき処女短篇「ディリーズ号」や、ドイツ海軍の誇る巨艦が撃沈されるまでの数日間を克明に再現した「戦艦ビスマルクの最期」、軽妙なショート・ショート「金時計」など、さまざまな角度から海と人間のドラマを描いた珠玉の14篇を収録。冒険小説ファン必読。
まずい。ついに借金が払えなくなってしまった。万年金欠の広告代理店を経営するぼくは、社用の車を売らなければならないほど追いつめられていた。そこへ降ってわいたのが、一流石油会社からの大仕事。もちろん二つ返事で引き受けたのだが、なんとそこにはさらなる借金と危険な謀が待っていたー。悲劇の中年男ボーモントが奮闘する苦あれど楽なしミステリ。
高校時代は陸上選手として将来を嘱望されながら、おしくもオリンピック出場を逃したクリスティン。夢やぶれた彼女は、ある日、アルバイト先で警察のスカウトを受け、未知の世界に飛びこむ。クリスティンに割り当てられた仕事は、麻薬のおとり捜査官。中毒者を装って密売人から麻薬を買い、動かぬ証拠をつかむのが任務だ。腕利きの捜査官ジムと組んで街に出た彼女は、おとり捜査の危険をまざまざと見せつけられる。それは自らも麻薬漬けになる、捨身の任務だった。ジムもすでに麻薬に冒されていたが、クリスティンは彼への愛から、自分も危険な世界へのめりこんでいく。やがて二人に、ボーモントの暗黒街を牛耳る大物、ゲインズの尻尾を掴めとの指令がくだる。ゲインズを潰して、この仕事から足を洗おう-。そう決心した二人だったが、その背後に警察署長代理ネットルの野望が隠されているとは知るよしもなかった。かつておとり捜査官だった著者が、体験をもとに女捜査官の捨身の闘いを迫真のタッチで描き、世界で大反響を呼んだ話題作。
スイスの保険調査員ペーター・ロッスリはサルティーヌに同行してパリのレストラン巡り。次から次に出てくる料理とワインに胃の休まる暇もない。取材先のレストラン〈フロリレージュ〉で酷評されるのを恐れた店主からとっておきのコニャック〈ドリュモン〉を贈られる。ところがそれを飲んだサルティーヌ七転八倒のすえ死に至ってしまう。コニャックのなかから毒物が検出され保険調査員ロッスリは急遽コニャック地方の名門メーカードリュモン社へ調査に出向くことになった。