1992年4月1日発売
私の髪を撫でる、その同じ指で、同じ腕で、彼女のことを抱くのですか?出会いから22歳の今日まで、私は彼だけをみつめ続けてきた。記憶の水底にたゆたう暗い予感におびえ、「同級生」という名の距離をみずからに課しながら。そんなある日、偶然ひき会わせた親友が、一瞬にして二人の歳月を飛び越え…。深く静かな水底のような恋を描く、初の書下ろし長編。
現代の侍になるんだ-。武士道精神に生きる混血児ヒロの父親を求める無垢な心情と行動と破滅。東西文化の融和は果たして可能か?軽いタッチで永遠のテーマに挑む異才の最新長編。
1892年8月11日、マサチューセッツ州フォール・リヴァーの名士の娘、リジー・ボーデンは父と継母を斧で斬殺した容疑で退捕された。しかし、彼女は裁判で無実を申し立て、結局その主張が陪審から認められて釈放された。事件が迷宮入りしてからほぼ30年後、家族と一緒に海辺の村に避暑にきていた少女アマンダは、自分の隣の家で暮らすのがあの悪名高いリジー・ボーデンであると知って、思わず胸をときめかした。あの人は本当にむごたらしいやり方で両親を殺したのだろうか?だが、村で偶然に出会ったリジー・ボーデンは、厳格ななかにも優しさを感じさせる年配の女性で、アマンダはすぐに好きになってしまった。そんなある日、昼寝からさめたアマンダは、大嫌いな継母が斧でめった切りにされているのを発見した。13歳の少女が体験したひと夏の恐怖を、禁酒法の時代を背景にきめ細かな心理描写で描く戦慄のサスペンス。
時速80マイルで走っていたトマス・ブレインは、突然の自動車事故のため、頭はガラスを突き破り、胸にはハンドルが突き刺さり、背骨が折れ、苦痛を感じる暇もなくあっさりと死んだ。だが、目を覚ますと、そこは100年以上も先の未来。しかも、死から生き返らされたブレインは、幽霊やゾンビイが跳梁跋扈する超未来世界で、恐るべきハンターに追いかけられるはめに…。話題のSFX映画『フリージャック』の原作ついに登場。
神が降臨してきたかのような姿だったー。真昼の太陽を浴びた黄金像そのままの青年。だが彼は、現人類をはるかにしのぐ能力をもつミュータントだった。スリリングな追跡ドラマの表題作をはじめ、雨の夜に妖精の訪問をうけた男の物語「妖精の王」、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原型となった「小さな黒い箱」など歿後十年を経て、全世界でますます評価の高まる幻視者ディックの世界を満喫できる傑作集第三巻。
12歳以下の子どもたちが“生後堕胎”の名のもとに殺戮される戦慄の未来を描いた問題作「まだ人間じゃない」、異星人による奇妙な侵略をうけた地球の物語「フヌールとの戦い」、広告戦争が極限まで達した騒々して未来社会を描いた「CM地獄」などの秀作中短篇8篇をおさめたほか、詳細な自作解説や、孤高の天才ディックが心情を赤裸々につづり、作品世界への鍵となる貴重なエッセイも併録した決定版ディック傑作集第四巻。
魔法の源である〈力の言葉〉-。権力を求める者たちがそれを手に入れようと熾烈な闘争を繰り広げる世界、パンデミア。その北辺の小王国クラスネガルで、王女イノスは幼なじみの少年ラップとともに平隠な毎日を送っていた。そんなある日、イノスは南方の大国に花嫁修業にいくことになり、クラスネガルを旅立った。後に残されたラップは、王宮の厩番見習いとして働くうちに自分に透視能力が備わっていることに気づくが…。
クラスネガル王危篤。ラップは、遠国のイノスにそれを知らせるべく、アンドルという男と一緒にクラスネガルを出立した。ところが旅の途中でアンドルの姿が豹変した。まったくの別人に変身したのだ。しかもアンドルは、ゴブリン族の中にラップを置き去りにして単身イノスのもとに向かった。アンドルの狙いは何か?いっぽうイノスの周囲では、彼女の父が持つ〈力の言葉〉を狙う者たちが暗躍を始めた…。壮大な四部作開幕。
吟遊詩人マリウスは、最愛の妻オクタヴィアを連れて、彼の第二の故郷ともいうべきトーラスの居酒屋〈煙とパイプ〉亭を訪れた。そこに腰を落ち着け、新婚生活を送るつもりだったのだ。しかしそのマリウスに、居酒屋の息子のダンは、偶然知って胸を痛めていたイシュトヴァーン将軍の秘密を語り聞かせたー。イシュトヴァーンとマリウス、かつて幾多の冒険をともにしてきた二人の運命は、ふたたび深く交差していくのだった。
カリフォルニア州の風光明媚な町カーメルで、死体が続けて二体発見された。いずれも、自動車の中で排気ガス自殺をしたものと見なされたが、元鑑識捜査官のディウィット部長刑事は、他殺と判断していた。邪悪な妨害を受けながらも、執念の捜査を続けるディウィットは、遂に犯人を突きとめる。だが、彼は知らなかったー。この時から、本当の闘いが始まることを。意想外の展開で魅了する傑作サスペンス。全米ベストセラー。
マイアミに満月が昇る夜、一人の女が不安に怯えていた。ときどき意識を失い、その間の記憶が全くないのだ。女は悩みを同棲中の刑事に打ち明けようとするが、満月のたびに起こる殺人事件の捜査に追われる男はとりあわない。実は女の中には他に四人もの人格が潜んでおり、共謀の末に体を乗っ取ろうとしていたのだ。ピュリツァー賞受賞の女性記者が、多重人格がもたらす悲劇をノンフィクション・タッチで鮮烈に描き出す話題作。
殺されたのはいったい誰なのか?インディアン保留地近くで見つかった歯のない男の死体からは、身元を示すものが入念に消されていた。わずかな手がかりを追い、リープホーン警部補はワシントンへ飛んだ。やがて事件は、チー巡査が捜査中の事件と意外な結びつきを見せるが…。舞台を西部の大自然から喧騒渦巻く都会に移し、新たな展開を見せるシリーズ注目作。
「こんな時間に赤い車を転がしてると大ケガするぜ!」深夜の高速道路で愛車、赤いRX-XIを飛ばしていたマイに“走り屋”たちがからんできた。彼らから聞かされたナゾの赤い車の存在に興味を引かれて、マイの体当たり取材がはじまる。2138年、トキオ・ネオシティでユニークな活動をつづける映像制作会社SUPER-NOVA。元気がウリのカメラマン、マイの活躍を描く表題作ほか、ナニワ娘が大旋風をまきおこす中篇を収録。
本書は、戦後最高の幻想作家、日影丈吉の最晩年の作品を中心に編んだもの。死後も選挙通知が届くために律儀に投票所に通う大男の話「墓碣市民」、病室の壁のマンガめいた顔が患者たちと交わる「壁の男」、天使性と悪魔性を備えた新米看護婦たちを描く表題作「鳩」などユーモアと恐怖の絶妙の混交を示す最新作7篇。さらに日影文学を知るうえで貴重な資料となるばかりでなく、内容的にもきわめて質の高い未発表の初期短篇「ヨハンの大きな時計」「硝子の章」と日記抄「三冊の日記帳から」を収録した。
東京の大学で修士課程を終え、研究所に招かれて札幌にやってきた青年。彼が勤務する知能工学研究所は深い森のなかにあり、庭に何体ものグリフォンの彫刻があることからグリフォンズ・ガーデンと呼ばれている。そこにはその存在を公表されていないバイオ・コンピュータがあった。彼とともに東京を離れて札幌の大学院に進学した美しい恋人、彼女と暮らす札幌市内の2LDK、古い建物のなかの図書館…。「あなたの世界は完結しているのね」研究所の仲間に言われたひとことがきっかけになって、彼はそのバイオ・コンピュータのなかにひとつの世界を構築することを思いつく。そしてふた組の恋人たちの物語がはじまる…。
アメリカの企業がほとんど外国に買収された2001年。ニューヨーク州シピオの町では刑務所までが日本人によって運営されている。学習に障害のある金持ちの子弟相手の大学をクビになったハートキは、囚人たちの教師としてこの刑務所に雇われることになった。ところが大脱獄事件が件こり、ハートキが勤めていた大学が囚人たちに占拠され、元同僚たちが人質にとられてしまった。ヴォネガット節がますます冴える、ジェイ・マキナニーも絶賛の最新長篇。
ニューヨークの画廊で青年実業家ネッド・ライアンが殺害された。直前に妻のジェニファと言い争っており、殺人の容疑は当然ジェニファに向けられた。無罪を主張するジェニファは、かつて敏腕検事として知られたネッドの父親マイケル・ライアンに弁護を依頼する。ネッドと仲たがいをしていたマイケルだったが、わが子を殺したかもしれぬ義理の娘を弁護する気にはなれなかった。しかしジェニファがネッドの子を宿していることを知ると、やがて生まれてくる孫のため弁護に同意せざるをえなかった。ジェニファへの疑いを抱きつつも、マイケルは、有能な女性弁護士ミラーの協力を得て、法廷で無罪を勝ち取るために死力をつくす。被害者の父親が容疑者を弁護するという異例の裁判劇を、迫真の法廷シーンをまじえて描き、アメリカで四カ月間ベストセラーを記録し続けた話題の法廷ミステリ。