1992年4月1日発売
ドサッ。結城凱大尉の車のナビゲーターシートに何かが落下した。純白のドレス、長いヴェール、手にしたブーケ、花嫁だった。「ほら、青」体を起こした花嫁は信号を指差し、凱は思わずアクセルを踏んでいた。バックミラーには血相を変えて追ってくる新郎と参列者たち。その直後、どこからか消音銃が追跡者の肩を裂き、後方へ吹っ飛ばした。「あーあ、貸し衣装なのに」プロの業を見せつけた彼女は「高速機動特殊執行部隊のランドルフ大佐」と名乗った。彼女こそ高機が誇る(豹の瞳)だった。新鋭の書下しコンバット活劇。
柳下二匹先生は、女子大の講師である。ホラ吹きでのんびり屋だが、なかなかの博識で、なにより自然が大好きである。釣りや山歩きを通して鍛えられた観察眼や洞察力は、時に刑事も真青の鋭どさを発揮する-。埋められていたはずの死体が消えた。柳下達が熊野古道で出くわした事件は、始めから不可思議だった。さらに、美人陶芸家が殺され、滝につるされた状態で発見された。地元の警察は、捨身行という荒業を行い、山を駆け巡るという修験者に疑いを抱いたのだが…。
八ケ岳の岩場から、絞殺された若い女が投げ込まれた。彼害者は東京のOL西岡万沙子。事件を追う諏訪署の道原刑事は、同じころ万沙子の親友の塩谷涼子が、木曽川で水死体で発見されたことを突き止めた。しかもその前年、涼子の弟勝史までが木曽御岳で遭難死していたのだ。3つの事件に関連はないのか。だが3人につながる人物には、鉄壁のアリバイがあった。長篇山岳ミステリー。
ケン・コズマはウォドロン軍の戦闘兵30人を指揮する4級戦闘士だ。ジャハラでのザルカンダ軍との戦闘で勲功をたて、生れ故郷テルミナに帰還したケンは、突然憲兵局に逮捕される。ウォドロン人には絶対許されない、戦いへの懐疑を抱いたためだ。軍事法延が開かれ、懲罰兵士として、最悪の地獄の戦線ザンタナに送りこまれたケンを待ちうけていたものは…。銀河を舞台に描く壮大なロマン。書下し長篇。
ティモシー・コーンーくずれたロフトに猫と住み、雑巾のようなスーツを身にまとう。ウォール街の企業情報会社で働く彼は、地下鉄で轢死した同僚の仕事を引き継ぐ。大手不動産会社の内情調査だ。やがて、近親相姦と麻薬に溺れる経営陣の、銀行に対する不審な動きが浮かび上がる。表題作のほか人工受精クリニックで起きた連続殺人を追う「精子銀行の謎」を収録。病める現代を鋭く抉る傑作ハードボイルド。
ごつう儲けるを合言葉に21歳の女社長の肉体に忠誠誓う「ごきぶり商事」の面々。3人の常務にドヤされながらも金儲けのアイデア絞り出す第4常務のぼくは窮地に立たされてしまった。社長はんと恋人の登志子はんが同時に妊娠したのだ。ところが西成暑の瀬目田印刑事に乗せられて、新郎1人に新婦が2人という史上初のステレオ結婚式を挙げることになってしまって…。連作ユーモア・ピカレスク。
尾崎士郎「墨股一夜城」、南条範夫「初対面」、中山義秀「四季の小車」、山岡荘八「売ろうもの関白」、杉本苑子「耳塚のすみれ」、田辺聖子「淀君と北政所」、長部日出雄「利休の眼」、吉川英治「大谷刑部」、井上靖「真田影武者」、五味康祐「切腹」-。草履取りから豊太閤太政大臣にまで成り上った天下人秀吉を中心に、彼を取巻くさまざまな人間群像を10人の大家、実力派が華麗に描いた傑作アンソロジー。
花の女流シナリオ・ライターを目指す小林まり子は、零細テレビ製作会社の一年契約社員。超人気キャスター宇奈月冴子のイブニング・ニュース・ショウのスクリプターをやらされている。その冴子が本番前に局のトイレで全裸の首切り死体で発見された。そして冴子と噂のあった後藤プロデューサーも。視聴率アップを狙う局プロデューサー中谷は番組に霊能者の大空幽子を出演させ犯人を推理させる。書下し長篇。
快楽の法則の信奉者、遊び好きなサン・タンジェ夫人と、彼女に教えを受ける情熱的な若き女性ウージェニー。そして夫人の弟ミルヴェル騎士や、遊蕩児ドルマンセたちがたがいにかわす“性と革命”に関する対話を通して、サドがみずからの哲学を直截に表明した異色作。過激で反社会的なサドの思想が鮮明に表現され、読む者を慄然とさせる危険な書物。
シャーロック・ホームズの輝かしい冒険のなかに、まだ公開されていない大事件があった。それはあのドラキュラ伯爵にまつわる怖しい怪事件であった。なんとホームズは、ドラキュラ伯爵とすさまじい死闘を演じたことがあったのだ…。ハードボイルド作家として知られるローレン・D・エスルマンが、ホームズ・パロディーに挑戦した若き日の快作、遂に登場。
南郷弁護士の助手・金丸京子のもとに、山で遭難死したはずの親友・宮川秋子から、パーティの招待状が届く。南郷とともに出掛けると、出席者の1人がまるで神隠しにでもあったかのように、突然いなくなってしまう。秋子と一緒に山に登った仲間たちも、その後、次々と消えてしまう。いったい死者が、何のために?幽霊を追う南郷の名推理と意外な真相。
真木学は官僚出身の代議士だ。欧州経済の視察団長に選ばれる。短期間の各国訪問は早朝から行動しなければ…。だが、彼は晴れ姿のPRのため、予定を無視し、昼過ぎにタラップに立った。懐には派閥のボスからの小遣いと関係会社の餞別が唸る。「国のため」と叫ぶたびに私腹は肥えるばかり…。(第一話・金満代議士)。元代議士の秘書だった著者が全読者に公開した極秘小説集。
日本の推理界を代表する探偵たちが、一冊に集合した。法医学博士の天才型探偵・神津恭介、義理と人情の熱血私立探偵・大前田英策、若き捜査検事・霧島三郎、ぐず茂と呼ばれる検事・近松茂道、近松誕生のきっかけとなった検事・遠藤茂道。本格推理の巨匠・高木彬光のシリーズ・キャラクター五人の文庫未収録作品だけで編んだ、『五人の探偵たち』の姉妹編。
業界一の化粧品メーカーが打ちだした来年のテーマは、“戦前で時間が停まったような街”上海。キャンペーンガールも、つば広の帽子に中国服、当時そのままの上海レディだ。取材で神戸ー上海を結ぶ鑑真号に乗ることになった女性誌記者弓芙子。だが、出港前から彼女の命を執拗につけ狙う謎の女が現われる。そしてついに密室と化した船内で血の兇行が。
ブラニガン百貨店の人事担当者クレアは、面接相手を前にして途方に暮れていた。彼女は犯罪者の更生プログラムを推進していたが、社長のレオの紹介でつい最近まで詐欺の罪で刑務所にいたというメイスに会ったのだ。ところが、男にはどこかセクシーで、妖しい、危険な勾いがした。