1993年10月31日発売
ニューオーリンズの街を熱くするカーニヴァルの興奮は、山車にのった〈王〉の登場で頂点に達した。そのとき、沿道のバルコニーにいたカウガール姿の人物が腰の拳銃を抜き、おどけた調子で〈王〉に狙いをつけると、引き金をひいた。次の瞬間、〈王〉は床にくずおれた。事件を目撃したスキップ・ラングドン巡査は、被害者を知っていた。学校時代の友人の父親、ニューオーリンズの政財界を牛耳るサンタマン家の主人チョンシー・サンタマンだ。市民権運動の熱心な活動家として人望も厚かった彼が、なぜ?サンタマン家の知りあいということで交通巡査から殺人事件の捜査に抜擢されたスキップは、初めての経験にとまどいと興奮を覚えながら捜査にあたった。だが、旧家の歪んだ人間関係の裏には、思いも寄らない衝撃的な秘密が…。猥雑なエネルギーに満ちた街を舞台に、旧家の悲劇を重厚な筆致で描く、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
ルパートは、フォレスト王国の第二王子。父王にうとまれている彼は、ある日、ドラゴン退治に行くようにと命令を受けた。ドラゴンの住み処にたどりつくには、デモンどもが跳梁する危険なやみの木の森を通り抜けていかなければならない。邪魔な第二王子を厄介払いしようという父王の目論見は見えすいているが、命令とあってはしかたがない。ルパートは気のいいユニコーンを乗馬がわりに、ドラゴン退治の旅に出発したが…。
生きたドラゴンと生贄の王女を伴ってフォレスト王国にもどったルパートを待っていたのは、やみの木の森が突如拡大を始め、デモンどもが村や町を荒し回っているという知らせだった。デモンを統べる邪悪の領主が太古の闇からよみがえったのだ。邪悪の領主に対抗できるのは、森の奥に蟄居する大魔法使いただ一人。大魔法使いに協力を要請するためにふたたび旅立ったルパートの運命は。新鋭が贈る壮大な冒険ファンタジイ。
サイゴンの広報室に勤務する下士官ペインは、いま軍事法廷の裁きを待っていた。彼は、同僚の元特殊部隊員ウイリンガムを戦場で射殺した罪に問われていたのだ。ウイリンガムは、特殊部隊中佐が組織した私兵部隊の不正行為に関係した疑いをもたれていた。ペインはそのウイリンガムの調査を軍とCIAから要請されていたのだ。だが、いったいなぜ、ペインは同僚を射殺しなければならなかったのか?戦場の闇に潜む秘密とは?
心ならずも同僚の過去を探っていくうち、ペインは、罪もない住民を虐殺して私腹を肥やす軍人たちの陰謀を知る。私兵部隊の一員だったウイリンガムは、不正の証拠隠滅を図る上官から裏切られ、九死に一生を得ていたのだった。私兵部隊の所在をつかんだペインとウイリンガムは対決のためジャングルの村に向かう。だが、そこでは思いがけない展開が彼らを待ち受けていた。極限の戦場での友情と正義を描いて感動を呼ぶ力作。
賭博師のボーモンは、建設会社を経営する友人のマドヴィッグから大胆な計画を打ち明けられた。地元の上院議員の後ろ盾となって、市政の実権を握ろうというのだ。が、その矢先、議員の息子が殺され、関係者のもとにマドヴィッグを犯人とほのめかす匿名の手紙が届けられた。窮地に立たされた友のため、ボーモンは自ら事件の渦中に飛び込んでいく。非情な世界に生きる男たちを鮮烈に描くハードボイルドの雄篇。新訳決定版。
わたしは自分の目を疑った。これは二年前にイタリアで盗まれたルーベンスの名画だ。それがなぜこのアメリカの、複製画輸入会社の倉庫なんかに?事件解決の糸口をつかむため、わたしはイタリアへ飛んだ。が、そこにはとんでもない危険が待ちかまえていた…。謎解きの面白さ溢れる『偽りの名画』につづく、美術館学芸員クリス・ノーグレン・シリーズ第二弾。
2021年、全世界でなぜか子供が生まれなくなって四半世紀が過ぎた。出生率が低下していっても、自分の子供はおろか、文明を受け継ぐ人類の子孫さえ得られなくなるとは、当初は誰も予想だにしていなかった。だがいまや、どんなに素晴らしい文化遺産を残そうと、数十年後にはそれを見る人間は一人としていなくなるのだ…。それが明らかになったとき、社会はどうなるか?絶望と無気力が、世界中を覆った。イギリスでは国守ザンが絶対的な権力を握り、できるだけ最後まで国民の生活水準を維持すると約束していたが、老人の自殺があいつぎ、出産を夢見る女性は想像妊娠をした。ザンのいとこで大学教授のセオは、ある日ジュリアンという若い女性と知りあい、惹かれるものを覚えた。だが、彼女は反体制組織のリーダーの妻だった。組織のメンバーから、セオはザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。組織がザンに目をつけられ、ジュリアンが助けを求めてきたとき、セオは思いがけない逃亡生活に巻き込まれていった。イギリスのミステリ界の実力派が新境地を拓いた、話題の近未来サスペンス。
大西洋横断ヨット・レース優勝などで名を馳せ、いまは造船所を経営している英国の冒険家ブラックバーンは、愛する妻が殺されたことを知った。二人一緒に帆走に出かけるはずだった船が、偶然妻が一人で乗っているあいだに何者かによって爆破されたのだった。警察の推理を聞いて、ブラックバーンは耳を疑った。遺産相続を狙った、娘のニコルの仕業ではないかというのだ。そんなはずはない、と彼は激しく否定した。勇敢なヨット乗りだったニコルは、双子の弟が死んでから不安定になり、ある日過激な環境保護組織〈ジェネシス〉に身を投じると宣言して出奔したまま消息を絶っていた。そんな折、核実験への抗議運動を報じる新聞写真の中にニコルが写っているのをブラックバーンは発見した。いまや残されたただ一人の家族への思いに衝き動かされ、娘に会うため、彼は旅立ちを決意する。それが、神のつくった最後の土地、嵐吹きすさぶパタゴニアの海まで続く苛酷な闘いの旅になるとは知らずに…。英国冒険小説の新旗手が放つ、白熱の冒険サスペンス。
聖徳太子の『未来記』に記された現界と夢界の秘密を巡って、神異僧・明恵は、鎌倉幕府や高千穂御先衆と壮絶な戦いを繰り広げてきた。一方、壇ノ浦にその幼い命を散らしたはずの安徳帝が存命していることを知った、平家の侍大将・悪七兵衛景清は、散逸した三種の神器のひとつ、天叢雲の剣を奪取すべく、女木島などの名だたる海賊衆の支援をうけて、謎の商人・大黒大夫のもとへとのりこんだ。最古の呪術者の王統を継ぐ安徳帝の目的とは!?いよいよ佳境を迎える超歴史伝奇大河ロマン第四弾登場。
ウィンチンガム卿は、まさに崖っぷちに立っていた。無謀な賭けで十万ポンドという損失をこうむり、このままでは財産の全てを失うしかない。自暴自棄になったウィンチンガム卿は、不承不承ながら、かれの被後見人であるティナ・クルームの大胆な企てに同意してしまう。ティナは、社交界にデビューさせてくれれば、そこで「金持ちの夫」を見つけるし、その男から卿の借金を返済できるだけの「結婚支度金」も手に入れてみせる、というのだ。こうして共謀者になった二人には、この計画はたやすく成功するかのように見えたのだが…。