1993年10月5日発売
やおい-やまなし、おちなし、いみなしの略だといわれる。少年と少年との耽美な物語、あるいはそれを愛する少女たちのことをいう。そんな少女の一人が自ら死を選んだ。その死は、少年の失踪と誘拐事件を引き起こし、元警察官阿南を若者たちの内面へと導くことになった。気鋭が挑む新感覚のハードボイルド。
K氏という小説家を主人公とする小説を、ひとりの小説家が書こうとする。その過程で起きる不思議なできごと、秘かに郵便物にまぎれこんできた小さな落葉、深夜に誰かからFAXで送られてくる小説、駅からずっと同じ道を歩きつづける印象的な女-。巧みなタッチで日常と非日常のはざまを戯れる、奇妙な味わいの連作短篇集。
東京・新宿のネオン街で起った夜の女殺しに続いて、旅客機爆発墜落事件が発生…。捜査線上に浮かんだ、数年前の自殺事件。一見何の関係もないかに見えるこの二本の糸を、刑事の常道、運・根・勘と最先端の科学捜査力で解決に挑む、本格推理長編。
かねて念願の劉備陣営に加わった趙雲は劉備の信頼も厚く、つかのまの平安な日々を送っていた。しかし、劉備が身を寄せていた荊州の刺史・劉表の死につけこみ、荊州を狙う曹操の大軍が襲ってきた。その猛攻に劉表の後継者・劉〓@59DDは曹操に下り、劉備陣営は窮地に陥る。そして、軍師・諸葛亮の指示により人民をつれての逃避行がはじまった。混乱の中、趙雲は幼主・阿斗を見失ってしまう。阿斗は糜夫人に抱かれて敵中を逃げまどっているというのだ。ついに趙雲はたったひとりで曹操率いる大軍の中へ躍りこんでいった。自分の腕だけを信じて…。三国志一の名場面「長坂坡単騎駈け」を新しい視点で描く異色作。1800年の時をこえて、英雄・趙雲が今、よみがえる。「放浪の子竜・趙雲」の続編、ここに登場。
同心・田上玄之介は、廓の放火の犯人捜しの最中、遊女殺しの罪を着せられた。事件に裏を感じた玄之介の手先・刃研の七こと通称・犬七。彼は女犯に脅しときわめつけの無頼者だが、世上に疎い玄之介の手先を買ってでては、身内の悪にも牙が剥けられる一匹同心への自覚を促す。そんな犬七が嗅ぎつけた材木商・菱喜と先任同心・加茂精三郎への疑惑。
鏑木兵庫と松代鬼平は共に刀を下げたまま対峙していた。人斬りの現場を見られた松代が兵庫に挑んだのだ。だが腕が違った。詫びた松代との話の中で、互いに犬同心を斬っていたことを知る。『生類憐みの令』を嵩にきて、庶民にたかる犬同心への天誅は当然なのだ。人を斬るより犬を殺した方の詮議が厳しいという狂気の沙汰に、男たちの怒りは、やがて犬を狩り犬同心を狩る必殺剣となって…。