1993年11月25日発売
TV局に勤める夫と女優の浮気に気づいた35歳の人妻。6年越しの煮え切らない恋が重くのしかかる、33歳のツアー・コーディネーター。長い間追い求めていた香りを完成させた途端に、妻に去られてしまったパーフューマー。恋愛と結婚、仕事と家庭など、様々な問題の間で揺れ動いて、自分の感情に素直になれない男と女。その微妙な心理を花に託して巧みに描いた掌編8編を収録。
CBAネットワークの看板番組〈ナショナル・イヴニング・ニュース〉の人気キャスター、スローンの家族3人が誘拐された。犯人からは何の反応も要求もない。一体何のために、誰が?どうして本人ではなくて、家族か?人命尊重と報道義務のジレンマに苦しむCBA。しかもスローンはかつて、人質を犠牲にしてもテロリズムに屈すべきではないという強硬論を唱えたことがあった…。
CBAはFBI、警察当局と別に独自の捜査班を組織し、その結果を毎日報道することにした。リーダーは、かつてスローンと、誘拐されているジェシカの愛を争ったこともある敏腕取材記者パートリッジ。彼の献身的な努力と、テレビ局の頭脳と取材能力の限りを尽した調査は実を結び、犯人像が少しずつ見えてくる…。報道機関の社会的使命と企業論理の対立を巧みにとり上げた人間ドラマ。
待たれていた男ー、チャーリー・マフィンがいよいよ帰ってきた。MI6の上級職員として復帰した彼だが、待っていたのは経費にうるさい次長と無能な新人。憂鬱な日々を送っていたが、ある亡命ロシヤ人の情報から要人暗殺計画の存在を嗅ぎつける。暗殺者も標的も、日時も場所も判然としないその計画とは?チャーリーは独自の推理でテロリストを追う。待望のシリーズ第8作、遂に登場。
1963年ハロウィーンの夜、ケネディの遊説をひかえて緊張するテキサスの重警備刑務所から、ブッチとジェリーが脱獄する。二人は8歳の少年フィリップを人質にして逃亡を計るが、少年に性的いたずらをしようとしたジェリーをブッチは射殺する。一方、ブッチを追うテキサス・レインジャー隊長レッドは、昔ブッチを少年院に送り込んだ人物であった…。ヒューマン・ドラマの話題作。
「この赤子は八幡神の生まれ変わりじゃ。武門二流、源平両家の血が流れている。すなわち、武門の頭領ということじゃて」はるばる鎌倉を訪ねてきた京都の大学者小野大雪は、八幡太郎の生涯を見事に予見していた。前九年の役の若きヒーローとして、歴史の表舞台におどり出た八幡太郎に対する、王朝貴族体制のさまざまな迫害と圧迫。太郎を支える新興武士勢力と陸奥の傀儡たち。そして太郎をめぐる美女の群れ…。新しい時代の魁として、歴史の過渡期を悠然と闊歩していった神話的巨人の雄渾で痛快無比な生涯が、鬼才谷恒生により初めて蘇る。
著名な精神医学者・酒井俊太郎教授の家で「兄と妹」として育てられてきた、史朗と養女の妙子。二人が互いの深い愛に気づいたのは、史朗が研修医として通う医科大の看護学科に妙子の入学が決まった頃だった。しかし、それは誰にも悟られてはならない禁断の愛。そんな二人の前に、大物代議士の娘・盛田聖子が現われ、強大な父の権力を背に、史朗に恋の炎を燃やす。そして、妙子を慕いつづける、史朗の親友・信吾。火のように熱いそれぞれの想いのなかで、やがて、おぞましい秘密の暴かれる日が…。