1993年12月31日発売
重力定数が10億倍の宇宙に迷いこんだ宇宙船乗組員の末裔たちは、呼吸可能な大気に満たされた〈星雲〉で生き延びていた。彼らは宇宙船の残骸である円盤状の筏〈ラフト〉を中心にして社会を形成し過酷な環境に耐えてきたのだが、〈星雲〉の寿命が残り少なくなったいま、人々の命運も尽きようとしている…。この危機を打開すべく、勇気と好奇心にあふれる少年リースの冒険が始まった。ハードSFの気鋭が放つ、長篇第1作。
鎌倉時代の平安京に住む女官オクラ、明朝の中国の農村で村人から師と仰がれるトゥ・シャン、開拓期のアメリカで呪術師をしているペレグリーノ、第二次大戦下のロシアで戦うカーチャー。世界各地でごくわずかな確率で生まれている不老不死の人々は、さまざまな事件や災厄にもかかわらず、たくましく生きているが…。3000年以上の歴史を生きる不老不死の人々の波爛万丈の冒険を巨匠アンダースンが描く傑作長篇。
ゴブリンとあだなされる孤児ナズュレット。彼は4歳のときからヴェロンニャ王立全寮制男子校で過ごしてきたが、19歳の秋、独り立ちするために学校をあとにした。旅の途中で奇妙な建物に迷いこんだナズュレットは、そこで出会った魔法使いとおぼしき男ポウルに見込まれて弟子入りすることになった。その出会いが運命を変えるとも知らずに…。長じてヴェロンニャ国王の右腕となるナズュレットの波乱の生涯を描く3部作開幕。
狂熱風雲王とアムネシアの王女のあいだに生まれた男、グレン。育ての親のもとを抜け出し、放浪の旅を続けるグレンは、ある時ザハシャラモドンの町で囚われの身になった。持ち前の運と力で町を乗っ取ったグレンだったが…。一方アクラ山の頂上火口では、存在するものすべてを敵とする、究極の破壊者〈タルカス〉の誕生が迫りつつあったー。SF界の奇才・中井紀夫が渾身の力をこめて描き出す、大人のための神話物語第4弾。
ついに〈タルカス〉が誕生した。存在するものすべてを敵とする、究極の破壊者が目指すのはアムネシアー。そこはいまや戦乱の地となっていた。長年のグユの圧政をはねのけ蜂起したアムネシアだったが、狂熱風雲王はあらゆる手段でこれを押し潰そうとする。そして戦いがクライマックスを迎えようとしたとき…。〈タルカス〉が姿を現わした。中井紀夫が渾身の力をこめて描き出す、大人のための神話物語、堂々の第1部完結。
アメリカは優れた航空技術と数を頼みに北ヴェトナムの空を制しようとしていた。ソ連は劣勢の北ヴェトナム空軍を支援するため、腕利きのミグ・パイロット、チェルノフ中佐を派遣。一方、アメリカで宇宙飛行士になる訓練を続けていたバニスター少佐は、横暴な将軍の策謀でふたたびヴェトナムへ戻ることに。激しさを加えるハノイ上空の戦場で、米ソの名パイロットが激突する。『ローリング・サンダー』に続く航空戦争小説。
陸軍特殊部隊のローカート中佐はヴェトナムで多くの特殊工作に従事していた。その彼に極秘命令が下る。敵の生命線であるホーチミン・ルートを叩くため、監視チームを率いて、必要な情報を収集せよというのだ。ローカートはチーム内に敵方の工作員がいるとも知らずにラオスに潜入する。そのころ上空では、バニスターとチェルノフの死力を尽くした闘いが繰り広げられていた…。本物の迫力を持つヴェトナム戦争小説の白眉。
元ニューヨーク市警警官のジャック・デヴリンは、兄のジョージが飲み歩いている間に何者かの暴行を受け、瀕死の重傷を負ったことを知った。兄の足跡をたどると、明け方から昼にかけて営業する違法深夜クラブの存在が浮かび上がってきた。自らの手による報復を決意したデヴリンは、犯罪の渦まく街の裏側を支配する魔窟、深夜クラブの只中へと踏み込んでいく。
一流製薬会社・津久田健薬の研究所主任が殺された。何人かの容疑者が挙げられる中、その内の一人で、被害者の直属の部下でもある村田信彦が忽然と姿を消した。信彦は逃亡先の村で、農業を営む美しい未亡人、幸子と出会う。お互いの素姓も知らぬまま深い仲となる二人。だが、信彦を執拗に追跡する刑事の手は、すぐそこまで迫っていた。再び逃亡の旅に出る信彦だが、彼の行く手には、樹海の奥に潜む妖しい欲望の罠が待ち受けていた。村人も近づこうとしない、その樹海が孕む真の姿とは?そして、信彦は犯人なのか…。
英語教師・望月梨恵子は、中高一貫教育で有名な白雲学園の副理事長兼副校長である。といっても、年齢は二十八歳で、まだまだピチピチギャルの仲間に近い、若々しい豊満な肢体の女教師なのだ。梨恵子の夫が、当学園の理事長兼校長の息子だったが交通事故死し、梨恵子が夫の役職を継ぐことになった。梨恵子は教育熱心で、学園への責任感も強い。だが、当学園の学生の性に対する興味と欲望は並はずれていて、トラブルがつきない。梨恵子は、未亡人という特性を活かし、みずからの肉体を武器に学生たちとの勝負に出る…。
半神とはいえ、顕聖二郎真君の寿命は二千年の時を刻んでいる。その気になればどんな絶世の美女、仙女でも思いのままになる天界の神が翠心を妻に迎えると決めた。魏徴と裴氏の仲立ちで納采をすませたが、彼の行動はどこか荒んでいた。その頃、離宮の造宮と後宮の増員で遊興を重ねる大唐の二代皇帝・李世民は泰山封禅の意向をもらした。中華を統一し皇帝の位を天に祀る報告をする儀式で、秦の始皇帝以来だれひとりこの念願を達成したものはいない。唐の星辰に風雲あり。そこに“大逆”の気配を読むものがあった。傑作巨篇。
1802年10月、アミアンの和約によってナポレオン艦隊との間に束の間の平和が訪れた。オーブリー艦長はソフィー号の乗組員たちと一刻の休息を満喫した。フランス南部の軍港ツーロンにも旅し、旧知のパリエール艦長を軍医のマチュリンと訪ねた。だが、この旅の途中でフランスは再び英国に宣戦を布告、2人は苦心惨憺の末、故国に戻ることができた。そして休む間もなく、オーブリーは海軍第一卿メルビルに懇願し、首尾よくポリクレスト号の艦長に任命されるのだった…。
両親の死後、准男爵の兄ピーターと暮らすヨランダ。ある日、兄が決闘で相手の侯爵を殺してしまった。不利な立場となったふたりは、難を逃れるため、フランスへと向かうが、途中スリにあい一文無しになってしまう。そこでヨランダは一計を案じ、旅行中のイルケストン公爵の召使として雇われる。
父の死後、叔母の邸で暮していたツェリーナは、突然ロシア行きを言い渡される。後見人の叔母には逆らえず、しかたなくロシア行きの船に乗ったツェリーナ。そんなツェリーナになれなれしく近づいてくる男がいた。身の危険を感じたツェリーナは、とっさに同船していたシャルノック卿に助けを求めた。
数年ぶりに、故国ドンブローツカに戻ったイローナ王女。だが、国は内紛によって二分されていた。そんな時、ロシア軍の侵攻開始の報せが入る。速やかに国内の団結を図らねばならない。そこで、イローナに反国王派のセアロス公との縁談がもちあがる。イローナは王女としての決断を迫られる…。
アスコット競馬場にほど近いラングストン荘園に、デルメザは兄ジェラードと住んでいる。競馬大会が近づいたある日、トレヴァーノン伯爵が館を借りたいと頼んできた。ジェラードは引き受けたものの、女性の噂が絶えない伯爵のこと、妹の身を案じ、デルメザに「秘密の隠し部屋」に隠れるよう厳命する。
「スラヴォニア国王と結婚せよ」女王陛下のジオーナへの命令は、あまりに突然だった。会ったこともない52歳の相手との政略結婚。やがて、イギリスを発ったジオーナは、スラヴォニア国内で反乱が起きていることを知る。先頭に立っているのは、前国王の息子で“見えないひと”と呼ばれる男だった。