1993年5月31日発売
黄色い煉瓦のオズの国、『ガリバー旅行記』の小人国…。多元宇宙を旅するぼくらが見たものは、かつて親しんだ小説そのままの世界だった。本の中の世界はみんな宇宙のどこかに実在していたのだ。だが、どんな宇宙に逃れても、邪悪な異星人は執拗にぼくらを追ってくる。ぼくら一家に安住の地はないのか?そんな時、ぼくらの前に思いもよらぬ人物が現われた…。巨匠が最大の情熱を傾けて描き上げた力作長編、ここに完結。
〈同盟〉には、アリの政治的立場だけでなく命まで狙う動きがあった。それを知ったアリは初代アリがコンピューター内にのこしたデータのすべてを手に入れ、後見人である叔父からさえも独立した勢力基盤をひそかにかためはじめる。おりしも首都ノヴゴロドで反体制派による破壊活動が頻発し、アリの身近はさらに緊迫するが…。人間製造の技術を手にした人類の姿をえがいて数々の問題を提示する傑作巨編、堂々の完結。ヒューゴー賞受賞作。
19世紀初頭のイングランド。結婚式を翌日に控え、友人たちと独身最後のパーティを楽しんでいた産科医クロフォードは、ふとしたはずみで、とある宿屋の中庭にあった石像の指に結婚指輪をはめてしまった。ところが、その石像の正体は眠りについていた吸血鬼だったー。クロフォードの行為は吸血鬼との結婚の儀式になってしまったのだ。目覚めた吸血鬼は、クロフォードを自分のものにしようと執拗に後を追いはじめた…。
嫉妬深い吸血鬼の魔手を逃れて大陸に渡ったクロフォードが出会ったのは、やはり吸血鬼の一族に魅入られていた詩人バイロンとシェリイだった。クロフォードたちは力を合わせて自分たちにとりついている吸血鬼を撃退したものの、安息の日は訪れなかった。吸血鬼の一族が総力を結集して襲ってきたのだ。不死の一族とクロフォードたちとの壮絶な闘いがはじまった…。史実と虚構のはざまにくりひろげられる幻妖の伝奇物語。
わたしは恐怖を知っている。心理コンサルタントとして、患者に恐怖心を克服させるのが仕事なのだから。が、死体を切り刻み、その一部始終をヴィデオに撮る異常殺人鬼を追っている今は、湧き上がる恐怖を抑えることができなかった。しかし殺人鬼は必ずこの手で探しだす。殺された、愛するソニアのために…。心に傷を負った男の復讐行を描く鮮烈のサスペンス。
アマゾンの熱帯雨林で乱開発を進める業者が、首を切られて殺された。さらにオーストラリア近海で原油流失事故を起こしたタンカーの船長と石油会社の社長、事故対策責任者が相次いで殺された。環境破壊を引き起こした当事者が何者かに殺されるという事件が続発していたある日、環境保護雑誌「アース・マザー・マガジン」の女性記者テス・ドレイクは、テレビ制作会社に勤務する男ジョゼフに出会った。灰色の瞳をもつその男の謎めいた魅力にひかれ、テスはたちまち恋に落ちた。だが、その彼が突如姿を消してしまった。テスはニューヨーク市警の警部補クレイグの助けを借りて行方を追うが、数日後彼が変死を遂げていたことを知る。やがてジョゼフの住んでいたアパートが発見され、クレイグと共にそこを訪れたテスは、不思議なレリーフを見てそれを写真に収める。その時からだった。テスのまわりで奇怪な事件が次々と起き、やがて彼女自身も何者かに命を狙われ始めた。しかも奇妙なことに、その暗殺者を追って別のグループも動き始めたのだ。いったい何が起こっているのか?
時局は変遷し、第一次ソロモン海戦。少年向けの軍事冒険作家南郷武は、報道班の一員として、新設された第8艦隊旗艦鳥海に乗っていた。目指すはガダルカナル島ルンガ沖の米上陸船団だ。ミッドウェー海戦で日本軍の攻勢を食い止めた米軍は、早くも本格的な反攻作戦に着手し、ガ島への上陸を開始していたが、日本機の執拗な空襲で荷役作業は進まない。第八艦隊は豪州重巡キャンベラ、米重巡シカゴ等を次々に撃破し、幸運の女神は日本軍に微笑みかけていた。直後、南郷は見た。目前に陸のごとき巨大な氷山が迫るのを…。
フランスに滞在中のイギリス人を拘禁せよ-。戦争が再開されると、ナポレオンは命令を下した。ちょうどパリを訪れていたヴェルニータと両親は帰国もかなわず、官憲の目を逃れて隠れるほかなかった。しかも、父が急病で亡くなってからは、お針子をして得たわずかな収入で、やっと暮らす毎日。このままでは飢え死にしてしまう…。意を決したヴェルニータは、つくった服を高く買ってもらおうと注文主であるナポレオンの妹ポーリーンのもとに出向く。そこで彼女は、ひとりのエレガントな紳士に出会った…。