1993年5月発売
悪夢の鍵を握る土方歳三に会うため二百年の時空を超える霊花…。維新の嵐吹き荒れる明治元年の箱館・五稜郭へ。そこで彼女が見たのは、巨大コンピューター“ガイア”の思惑も交錯する混迷を窮めた箱館戦争だった。歴史を造るのは人間か機械か。人類の生命力を見せつけるがごとく、一代の戦鬼・土方歳三は激動の時代を駆け抜けてゆく。待望の書下ろし歴史SF。
曲垣賞に沸く秋の競馬場で、一人の男が刺し殺された。たまたま居合わせた警視庁特犯課の新米刑事・小湊進介は、先輩刑事の海方惣稔とともに捜査を開始するが、今度はその犯人が射殺されてしまった。次々と連鎖していく被害者と殺人犯の奇怪な輪。そんなことがあり得るのだろうか?常軌を逸した連続殺人事件は、二転、三転、四転、五転…。読者をだますことに全精力を傾注する著者が、その面目を遺憾なく発揮した、本格推理の最高傑作。
奇術ショウの仕掛けから出てくるはずの女性が姿を消し、マンションの自室で撲殺死体となって発見される。しかも死体の周囲には、奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われている小道具が、壊されて散乱していた。この本の著者鹿川は、自著を手掛かりにして真相を追うが…。奇術師としても高名な著者が、華麗なる手捌きのトリックで観客=読者を魅了する泡坂ミステリの長編第1弾。
あたしの名前は向井典子、13歳。母さんが、あたしを妊娠している時、父さんと別れたので、父親の顔は知らない。家では毎日、母さんにボコボコ殴られ、学校に行くと今度はクラスメイトにいじめられてばかり。だからいつも、校舎の屋上で一人で本を読んでいたんだけど、ある日、決心したんだ。みんなに復讐してやろうと。だって、あたしには、強い味方がいるんだぞ。文庫書下ろし。
360度人工の明りが目に入らないところ、そこが俺の休暇の土地さー。ネバダ砂漠でひとりバイクを乗りまわして、休暇を過ごす公認会計士との出会いを爽やかに描いた表題作。暴走族に因縁をつけられ、骨董もののシトロエン2CVで目隠しレースに臨む「チキンレース」。ほかに「元禄異種格闘技戦」「ボトムライン」「ご町内諜報戦」など、多彩なアイデアとスタイルがはじける第一作品集。
新宿のマンションで発見された若い女性・小室聖子の絞殺体は局所が無惨に切り刻まれていた。桑島刑事はその恋人を容疑者と断定し、顔も名前も割り出しながら、行方は全くつかめなかった。その一年数カ月後、今度は同じ手口で局所を傷つけられた男の絞殺体が見つかった…。男と女の性の妖しい深淵と、それにもてあそばれた者の悲劇を、本格ミステリーの手法でえぐり出した異色作。
オファレルは46歳のCIA暗殺工作員。妻には身分を偽り、他人の記憶に残ることを極力避ける。家族を愛し、酒はマティーニを一日一杯。週末には必ず車を洗う。そんな彼の原則が徐々に崩れ始めた。娘の離婚騒動、孫を襲った麻薬疑惑、そして殺人という行為への罪悪感…。だが、家族のためにもう一度だけやらねばならない。彼は最後の標的、駐英キューバ大使リベラの元へと向かった。
第二次大戦末期、ドイツ占領下のフランスの片田舎ではレジスタンス組織が不慮の壊滅を遂げ、アメリカの情報機関OSSによる秘密作戦も大失敗に終わった。内通者は誰か?そして〈オルレアンの鬼〉と恐れられたゲシュタポの幹部、クラウベルト大佐はどこへ姿を消したのか?裏切りと謎に満ちた野望のパズルに、英米の諜報活動に一族を捧げたレイルトン、ファーシングの両家が挑む。
〈交響曲〉作戦チームの計略で捕えられたソ連・NKVD将校のラミリズ・レイルトン。実兄キャスパーの苛烈な尋問によって明かされたのは独ソ両国の諜報活動をめぐる戦慄すべき事実だった。そしてついに暴かれる〈オルレアンの鬼〉の秘密ー。重要な鍵を握る工作員が次々に口を封じられるなか、〈交響曲〉チームはクラウベルトが残した暗号を解読、運命の街ニューヨークに集結した。
女性として初めて、英国秘密情報部の長官に昇りつめたダビナ・グレアムは、恋人と訪れたベニスで、アメリカの国防長官の爆殺事件に遭遇した。続いて、パリとワルシャワでも要人の暗殺が発生。恋人の裏切りに遇い、部内の権力闘争に晒される中、ダビナは秘密のベールに包まれた組織に迫る…。権謀渦巻く壮絶な情報戦をしたたかに生き抜く一人の女性の姿を描いた、シリーズ完結編。
2037年ヨーロッパは強大な経済力を誇っていた。世界で初めて人間のクローンの大量生産に成功したからだ。人間の姿をしながら頭脳の機能だけもたないヒト・クローンは、あらゆる産業に需要があり、そこからもたらされる莫大な利益は世界中から狙われていた…。集められた情報の断片から、ジグソーパスルのように浮かび上がる壮大な陰謀の構図。近未来世界の恐怖をスリリングに描く。
何だって上手くできそうで、何一つ上手くいかない16歳の夏。ニューヨークのハイスクールに通うビリーは倦怠感に苛まれていた。真面目一辺倒の教師達、始終セックスしているアホなクラスメイト。命令と質問しかできない疲れた両親。でも、年上の大学生アルフレッドだけは煌めいて見えた…。夏の匂いと、高まる皮膚感覚の中、同性愛という“至高の関係”を始めた二人の少年を描く。
人間と歴史への深い洞察たぐいまれなる想像力と諧謔味あふれる独自な語りによって中世風土のなかに極楽往生をねがい生をいとなんだ日本人のタマシイを現代に昇華させる梅原文学の扉が開かれた。