1993年5月発売
政治の季節の影を引きずり、精神を病んでしまった彼女。その心を開かせたのは、ちょっぴりどじな彼の純情だった…。軽やかな語り、ユニークな青春像。気鋭作家が描く、注目の書き下ろしロマン。
適当に勤勉で適当に豊か、適当に教養があり適当に健康、そしておしなべて不倫に目がなく、家庭は崩壊寸前-そんなミドルクラスの人々が織りなす出逢いと別れの輪舞曲。アプダイクの不倫小説集。
あたし、健康な女子高二年生。固肥りだけど、体臭が強くて、肌がところどころ、ざらついてるのが悩みなんです。一年のときから美術の先生が好きになって、ずっと、思いつづけていて、先生が結婚してから、とうとうガマンできなくなって、「一度、外で会ってください」と言ったんです。そして、とうとう先生にせがんで第三京浜ぞいのモーテルに連れこんで、もらったんです。先生ははじめ迷惑そうだったけれど、でも、あたしとベッドに入ると、先生、すぐ熱心になってきて…。
まだ武生が幼い頃、自ら命を絶った父。純粋な愛にすべてを生きて-。父の幻を追い求めるうち、いつしか武生は世界じゅうをあてどもなく彷徨う旅人となった。何かが満たされない。孤独な心が乾き疼く…、だが、タイの小島で野生のままに生きる青年ノムと巡り会い、彼の魂は初めて揺さぶられる…。
亡父の跡を継いで出版社社長を勤める四十歳の桂子さんは、夫の急逝に見舞われる。フロッピイに記憶された夫の遺言。彼との関係が疑われるどこか危うげな女たち。未亡人となった桂子さんの前に出現した謎の財界の大物と或るプロジェクトー。竹林の別荘、豪奢な邸宅、上流階級が集う秘密クラブで繰り広げられる濃密な〈交歓〉。華麗典雅な筆致で描く、知的刺激に満たち倉橋ワールド。
九歳の少年ルークは“悪魔の子”だった。これまで自分の弟や幼児を刃物でめった刺しにして殺していた。しかし、日頃はおとなしく、天才的なIQをもつ彼は、自分が殺人を犯したことを全く覚えていない。両親から凄惨な性的虐待を受け、その苦痛と恐怖がトラウマとなって多重人格者となり、自分の知らぬ人格が凶暴な殺人者となるのだ。むしろルークは、子供を弄ぶ残虐な大人たちの犠性者だった。ルークと同じように幼児虐待の辛い体験をもつ探偵バークは、治療センターに保護監禁されている少年のために敢然と立ち上がる。真の“悪魔”をさがしだし、彼らに代償を払わせなければ、バーク自身も自分の過去との決着がつかないのだった…。魔都ニューヨークに暗躍する無法の探偵バーク・シリーズ第6弾。幼児虐待をテーマに現代の犯罪と悲劇を追求してきた人気ハードボイルド・シリーズ最終作。
歴史・時代小説の魅力あふれる作品群を創造する巨匠・気鋭が、その知的想像力を発揮し、大きな感銘をあたえるべく力を込めた代表作を収録した年度版アンソロジー。
戦争と革命の世紀の口火をきったヨーロッパ大戦とロシア革命。ウクライナの古都キエフにはいずれの勝者になることもなく市街戦を闘った市民義勇軍がいた。20世紀文学に不朽の名をとどめるブルガーコフの世界を凝縮した処女長編。