1993年6月15日発売
北海道の巨大な迷路で男の惨殺死体が発見されたが、その体には異様なものが。謎を解く鍵は、被害者と同じ異形の姿をしていたという古代の預言者モーゼ。推理作家・荒尾十郎は、真相を求めて、モーゼの墓伝説の地へ。そして露になる驚愕の真実。古代伝承をふまえ叙情豊かに描く異色のトラベル推理。
本名・北野弓子、芸名は長山レナ・風見圭子・簗瀬ルミと変わって十年ぶりに会った女は昔とちっとも変わらぬ美貌を誇っていた。かつてひょんなことから同棲した女が急に売れ出したとき、二人の仲は破局に向かった。再会した男と女の胸中に流れる甘く苦いノスタルジー。虚構の世界に生きる男女を描く連作集。
刑事をやめて、ルポライターと探偵業をこなす柚木草平。ある雨の日に、彼のもとに不思議な事件が持ち込まれた。謎の糸をたぐり寄せるたびに、出逢うのはいろんなタイプの美女、美女、美女。殺人事件の謎ときから、掃除、洗濯、料理をこなし、おまけに『いい女』にも強い柚木がさり気なく活躍する人気シリーズ。
名コンビ笹谷美緒&黒江壮が、寝台特急「あけぼの1号」で北津軽の「斜陽館」に着いたころ、前夜に上野を発った「北斗星5号」が男の刺殺死体を乗せて札幌に着いた。奥羽本線と東北本線の2本のブルートレインを結ぶトリックの裏にさらに巧妙・緻密なトリックが隠されていた。美緒&壮ははたして見破れるか。
数百億円の遺産と会社の実権を残したまま女主人は密室で殺された。容疑者は相続人全員。遺産と実権を狙い愛憎、陰謀が渦巻くなか、武蔵野の風情を残す豪邸“土筆庵”で次々とおこる密室殺人。美貌の女刑事・鮎川阿加子も犯人の誘いに乗せられて…。四つの密室が複雑に絡み合いながら事件は意外な結末へ向かう。
銀河有数の金属鉱山を持つソリテア星系は正体不明の〈雲〉に覆われ、通常の方法では進入することができない。唯一の手段は死んだばかりの人間に操縦させることであり、そのためソリテアを訪れる船は必ず死刑囚を2名乗せることになっていた。この星系への運航免許を得たキャリロン社は、読心能力を持つ青年ベネダーを惑星ソリテアに送りこむ。だが、帰路に殺される運命にある女囚カランドラはまったくの無実だったのだ。
死刑囚カランドラを伴って惑星ソリテアを脱出したベネダーは、隣接する惑星スポウルで知性を持つ植物〈入道雲〉の群を発見した。思いがけないファースト・コンタクトに全ソリテア星系は沸きかえり、ベネダーたちは読心能力を駆使してこの生物との対話に取り組むことになる。やがて〈入道雲〉はソリテア星系を包む〈雲〉にまつわる恐るべき秘密を語りはじめるのだった…。冒険SFの第一人者が新境地を拓く本格宇宙SF。
サバイバル・インストラクターの富臣は、元陸上自衛隊のエリート。新興プロレス団体・NMFの山ごもり合宿を引率中、若手レスラーと喧嘩になった。富臣は「野見流合気拳術」で相手を一蹴する。富臣に拳闘家としての魅力を感じたNMFのスーパースター・神代は勝負を挑む。忘れかけていた闘いへの情熱が再び湧き上った富臣は、野見流奥義「いかづち」完成のため特訓を開始する。長篇アクション小説。
本来ならば〈高貴なる血〉をひく者として王位に就く筈だった王女ディアナ。幼くして父の国王を失ったため、叔父のカイオスが暫定的に王に。ディアナが王位を継承するには同じディアを持つティークと結ばれる必要があった。〈運命〉に導かれるように恋に落ちる二人。が、カイオスの陰謀によりディアナは将軍ムールの許へと嫁がされてしまう。ディアナがティークの不義の子を身篭ったことから悲劇が始まった…。
インドネシアのジャワ中部にある仏教遺跡ボロブドウル。「丘の上の僧房」「曼荼羅」を意味するという。8〜9世紀の建造後、長く火山灰の下に埋もれ、1814年の発見で世界的な文化遺産として修復された巨大仏蹟は、夥しい数の石仏や彫刻で訪れる者を圧倒する。若き日にこの地に魅せられて以来、再訪を重ねる著者の熱い想いを綴る。その他ジャワに生きた男達の物語「ジャワ往還記」他1篇を収録。
衰亡する貴族を圧して天皇の外戚に上りつめた平清盛。栄華に驕り、高位顕官を一族が独占し、はては法皇の幽閉、遷都の強行…。だが、清盛こそが新時代の担い手であった。荘園を実質統治し、農工商を殖産しえるのはすでに武家であり、その先駆者が清盛であった。源氏との覇権争奪に勝利した稀代の戦略家、法皇・貴族社会と相克した風雲児・清盛。その偉大な生涯を活写する歴史大作。
幕末、京の都に名を馳せた「新選組」副長・土方歳三、多摩に生まれ、薬行商をしながら剣を磨き、天然理心流の奥義を極めた剣の達人。さらに近藤勇と幕府の浪士組に参加、池田屋襲撃で一躍その名をとどろかせる。士道の美学に殉ずるべく、一人我が道をゆく若き剣士は、北辺の地に炎のごとき最期の咆哮をあげた…。断髪に洋装、進取の気風あふれる土方歳三の、波爛万丈の生涯。
僕は殺されることにも慣れてしまったが、同時にまた憎まれることにも慣れていた。子供の頃から、まわりの誰もが僕を憎み、そのうちの何人かが僕を殺そうと決心するまでにその憎悪を募らせたのだ。僕が自分でも気づかずにいるちょっとした目つきや小さな仕草だけでも人が僕を殺したいほど憎むことを、何度も殺されて僕は知りつくしてしまっていた。
アメリアは、あと八日で十歳になる女の子。ある朝、家族みんなとけんかして、部屋にとじこもります。泣きつかれたアメリアの目に飛びこんできたのは、赤ちゃんのころ、お父さんが作ってくれた木馬のエスメレルダ。何気なくエスメレルダのたて髪にふれたとき、突然強い風が部屋を吹きつけ、気がついたときアメリアは、ほんものの空飛ぶ馬の背にいたのです。