1993年7月31日発売
「マミイィ!」助けを求める叫びが、惑星アルタイル中に響きわたった。これほどの思念を送れるとは、たいへんな超常能力の持ち主に違いない。惑星政府は発信者の捜索に全力をあげた。そうして救出されたのは、大規模な地滑りで壊滅した鉱山基地でただひとり生き残った少女ローワンだった。卓抜した才能に恵まれた彼女が、超常能力者として、女性として成長してゆくさまを、人気女性作家が情熱あふれる筆致で描く意欲作。
限定核戦争と細菌戦のために壊滅状態になった近未来のアメリカ。すべての大都市を破壊して、あらゆる州を荒れ地に変えた災厄にもかかわらず、人々は生き延びていた。金や生命を狙う暴徒や浮浪者が徘徊する土地を抜け、数千キロ彼方のユタをめざす旅人たちと一匹狼のティーグを描く「西部」、車椅子の教師と不良生徒たちの物語「辺境」など、コミュニティの中心から離れ“辺境”でたくましく生きる人々を描く傑作連作集。
父の形見の老朽船で海運業を営むポールは、英国議会の議員から驚くべき事実を告げられた。コンビュータ技師である兄のチャーリーが、政府の極秘プログラムを持って失踪したというのだ。船の修理費が必要なポールは、絶縁していた兄の捜索を不本意ながらも請け負う。だが彼は、やがて自分が世界の行方を左右する熾烈な争奪戦を展開することになろうとは、知るよしもなかった。冒険サスペンスの名手が新境地に挑む野心作。
ヴェトナム戦争が泥沼の様相を呈していた1969年。ハンバーガー・ヒルにほど近いエヴァンス基地に、一人の若者が着任した。彼の名はローク准尉。ヒュイ輸送ヘリコプターのパイロットだった。戦意に燃えてヴェトナムにやってきた彼は、その翌日から戦場の苛酷な現実を見る。小さな機関銃二梃しかもたないヘリで敵の砲火のただなかに降り立つ危険な輸送任務。朝まだきの発進の胸の高鳴り。そして戦友の無意味な死。やがてロークは、前線の実情を理解しない軍上層部と、その意を体した副中隊長のクレーブル大尉の卑劣さに怒りを募らせていく。その怒りは、クレーブルが臆病さから仲間を見殺しにしたとき、ついに頂点に達した。脆弱なヘリコプターを駆り、自らの腕だけを頼りに危険な任務を遂行する一匹狼パイロットの冒険と成長を圧倒的な迫力で描破、出版前から大きな話題を呼んだ航空戦争小説の白眉。
ロークはふたたびヴェトナムに帰ってきた。今度はカイオワ偵察へリのパイロットとして、ヴェトコンや北ヴェトナム正規軍を駆りだすのが任務だ。一方、クレーブルも自分の軍歴を守るため、ヴェトナムに戻ってきていた。アメリカ軍の撤退が始まり、厭戦ムードの広まるなかで、ロークは戦場で失なったものを取れ戻すためにヘリを飛ばす。やがて、そんな彼の前に、北ヴェトナム軍の大規模な前進基地が現われた。「ヘリコプターの戦争」と呼ばれたヴェトナム戦争の様相を、自らパイロットとして従軍した著者が、手に汗握る飛行シーンをまじえて描く戦争巨篇。
精神科医のデイヴィッド・エイバハートと牧師の娘レイニーは、結婚してシカゴで新しい生活をスタートさせた。だが、三番目の子供ランドールが自閉症であることがわかったとき、エイバハート家の試練が始まった。デイヴィッドはランドールを施設に入れることが本人と家族のためと考えたが、レイニーは自分の手で育てることが母親の使命だと主張して譲らなかった。そして、レイニーはデイヴィッドの反対を押し切って、さらに三人の子供を生む。このことが原因で二人の間は気まずくなっていった。いっぽう子供たちは、ランドールの存在や両親の不和に揺れ動きながらもそれぞれ個性的に成長、やがて波乱の青春時代へと突入していく。家族の絆とは何のなか?1950年代から70年代終わりまで、ヴェトナム戦争を経て激しく変わっていくアメリカを背景に、生命と家族の意味をあらたに問い直す感動のベストセラー。
本書は、あらゆる女の物語、母を失ったあらゆる娘の物語、時とともに力が衰えていくあらゆる女家長の物語、がむしゃらに人生を突っ走ってきたが、ある時ふと手綱を緩めてしまうあらゆる寡婦の物語である。
年上のアメリカ人の愛人リタはヒップでドライ。退廃ムード漂うオージィ・パーティにマモルを誘ったりもする。そしてある日、リタの許に現われたティーン・エイジャーのエミル。詩を書き、自閉症ぎみのエミルは、リタにはない魅力でマモルを強く惹きつける。ふたりの、愛しいものの間で揺れ動くマモルの心。やがて、エミルの過去、リタの企みが表出して、複雑な人間関係を綴っていく-。セックスと、ドラッグと、ロックの中を漂うラブ・ストーリー。
石神探偵事務所の扉を、清麗女学院理事長・塩谷が叩いた。娘・美香の誕生会で奇妙な出来事が起きたのだ。差出人不明の小包が届き、中から小さな硝子細工の鼠が出てきた。美香が大の鼠嫌いと知っての悪戯か。彼女は怯えて、学校へも行かず家に閉じこもってしまった。不気味な送り主を捜し出してほしいとのことだ。硝子細工を包んでいた山吹色の包装紙に事件解決の鍵があると睨んだ狩野俊介は出所を洗うが…。少年名探偵・俊介の素顔を多角的に描きだす魅力満載のスペシャル版。全篇書下しの異色ミステリー集。
コンスタンティノープルの宮廷を舞台に二人の皇帝を巡る貴族達の陰謀劇に巻き込まれたギリシャの貴族アレクシオスは、親友のジェノア人ステファーノを喪った。外国勢力の排除を目論む有力貴族シドネスによって毒殺されたのだ。その仇敵を討つと、弟レオンと自称用心棒のジャンニ・ゲンティル等と陽に染まる金角湾を出帆してトレビゾンドに脱出した。麗しの都は二度と彼等を迎えることはないのか。皇帝の側近の貴族を剣で葬った逆賊の烙印を押され、これから向かうトレビゾンドはビザンツ帝国とは縁が深い…。雄渾作。