1994年8月5日発売
〈十字架屋敷〉と呼ばれる、実業家の広壮な邸宅に、エジプトのミイラのように顔中に包帯を巻いた、異様な風体の男が出没した。復讐のため地獄から戻ってきた〈地獄の奇術師〉と自ら名乗り、十字架屋敷に住む暮林一族を皆殺しにすると予告した-。名探偵二階堂蘭子誕生の妖気漂う本格探偵小説。
惨殺、そして凌辱-。何ものかに憑き動かされるように次々と猟奇殺人を重ねていった男の名前は蒲生稔。冒頭の“エピローグ”で示される事実が、最終章であっと驚く意外な変容を遂げる。異常犯罪者の心の軌跡をたどりながら、想像力の欠如した現代人の病巣を抉る、衝撃のサイコ・ホラー。
早くオトナになりたいよーっ、て。これが、あたし、倉沢笑の、夢。やっと17歳、高2なんだけど、見た目だけは、いちおー遊び人セブンティーン風に、つくってるんだけど。態度とか行動とかと、ホントの本音って、実はズレまくり。ぐーんと年上の貝塚司郎さんに、ひたすら、小学生みたいに一途な片想いしてるんだもんね。だけど夜の街、フラフラしてると、ユーワクってのが、けっこう多かったりして、して…。
一九六七年、高度成長の最中の日本はいまだ米国の頚木の下にあり、真の独立を勝ちとっていなかった。状況を憂い民族独立を標榜する航空自衛隊の中島二尉は12機のF104Jとともに隊を離脱、ベトナムの米軍に一矢報いるためにトンキン湾を目指す。だがその行く手に突如出現したのは小沢提督率いる旧帝国艦隊の幻の空母『信濃』だった。最強の母艦を得た中島は日本帝国独立艦隊の直属飛隊として部隊を再編成、ヤンキーステーションにひしめく米第77機動部隊壊滅作戦を開始した。
サンディエゴの幼児虐待調査官ボウ・ブラドリーは、インディアン居留地で保護された少年を担当することになる。廃屋に置き去りにされた彼は、ボウの亡き妹と同じように口をきくことができなかった。担当する子供に過剰な思い入れをしてはならないと自らを戒めながらも、少年の命が危ないと囁く妹の声が聞こえるような気がしてならない。はたしてこれは、躁病に悩む彼女の妄想にすぎないのだろうか。そんなボウのもとに入院中の少年が命を狙われたという連絡がはいる。そしてまたボウ自身にも脅迫が…。
カリブ海に浮かぶ孤島の刑務所に、精神科医セバスタポル博士が政治犯として投獄された。ある朝、同じ監房の囚人が、いきなり血を吐いて倒れる。身の危険を感じた博士は這うようにして刑務所を逃げ出すが、教会の礼拝堂にたどり着いたところで、追手のライフルに倒れる。敵の狙いは博士が密かに持ち出した一冊の大学ノート。そこには死の間際に書いたある暗号が…。偶然にノートを預かった、事件を追うジャーナリストの娘アメリアに、アメリカ壊滅を企むテロリストたちの魔の手が、次々と襲いかかる。