1995年発売
幻を見据え、幻聴を捉える自分の「言葉」が枯れていく。果して「書くこと」の復活は可能なのだろうか。いま熱く心は遠いマグレブの空へ飛ぶ-。危地に陥った文学者の自己再生を賭けた旅を描く長篇小説。
たった一度会って、ほんの1分ぐらいしゃべっただけの男の子に恋しちゃった…。なあんて言ったら、あなたは笑う、笑うかもしんないね、中1にもなって大滝奈知は、なあんて純情ぶっこいてるの。てね。あたしの親友の田代華音も、こんなセリフ吐いてバクショーしそうなタイプ。だからナイショの片想い。けど、あたしとしちゃあ、この初恋、ずえったい実らせるつもり、で…。
昭和十四年、ノモンハン。日本陸軍始まって以来の負け戦として、陸軍少尉天城巌の眼前には、風吹きすさぶ大草原、擱座した戦車、そして同胞の屍体が累々と転がっていた。二二六事件に連座して満州に飛ばされた彼にとって、大陸は屈辱の地と化したのだ。翌年春、天城は新京にある「満映」の撮影用大スタジオにいた。暗幕に閉ざされた内部では、日本軍の英知を結集して超重戦車を秘密裡に開発中だったのだ。驚愕の天城はこの超重戦車を擁する特別編成隊の隊長に任命される。重量120トン、装甲200ミリ、ナチスドイツ開発の秘密兵器を搭載した「イカヅチ」はついに満蒙の大地へ突撃を開始した。
両親の家庭不和の結果、深い男性不信に陥ってしまった智美。一方母親は自立した人生を求めてヒーラーを志し、ハワイに住むことを決意する。-誰も愛せない、何もないのがつらい-まるで深い河の底に沈んだような日々を送る智美は母を追いかけハワイへと向かう。どこまでも青く澄みわたるホノルルの空、エメラルドグリーンに輝くラニカイの波、大いなる自然のなかでそれぞれの自分を取り戻していく女性たちの姿を描く力作長編小説。
「高貴な血筋の方を次々と手玉にとる遊び女」そんな噂をも心の隅で楽しみながら、あくまでも誇り高く、男を愛し、愛されて奔放に生きた情熱の歌人和泉式部。今なお輝きを持つ恋の数々と、鮮やかな生き方を魅力的に描く歴史物語。
彼女の悲しみを、分かちあうことはできない。私の悲しみも理解されないだろう。でも、寄り添わずにはいられないー。無機質な新構想大学のキャンパスで出会ったエキセントリックなルームメイト。互いの孤独に気付くとき、何かが変わる予感がした。第106回芥川賞受賞の表題作ほか、「星の指定席」併録。
刑務所から出所したばかりの男が、東京郊外に住む俳句の師匠・原花狼を刺し殺した。二人の接点は。事件の背後を追う雑誌記者・磯田の前に、四百年間も謎に包まれて眠り続ける“太閤遺金”四億五千万両の埋蔵金伝説が…。限りない夢とロマンの黄金探し推理長編。
ニューヨークの裏町-。修道院を出た売れないポルノ小説家イザベルと、記憶を失くした謎の男トーマス、そして“世界で最も危ないポルノ女優”ソフィア。ひょんなことから企業犯罪に巻き込まれていく彼らのさすらいを、繊細な、そして大胆な感覚で描く。カンヌをはじめ世界の映画祭で好評を博した気鋭監督ハル・ハートリーの最新作。
1917年初頭、第一次大戦の本舞台となっていたドイツ軍と連合軍が対峙する北フランスの小村。伯爵令嬢サンテンは、村に駐屯している英国空軍のマイケル・コートニ大尉と恋に落ちるが、二人の結婚式当日、マイケは凄絶な空中戦の末に非業の死を遂げた。サンテンは、マイケルの故郷アフリカを目指して船に乗るが、ドイツ軍Uボートに撃沈され、サメのいる荒海に投げ出される。果たしてサンテンの運命は-。
亡き婚約者マイケルの故郷アフリカを目指していた船が撃沈され、ナミビア海岸に漂着したサンテンは、生死の境をさまよっているところをブッシュマンの老夫婦に救われ、ともにカラハリ砂漠の秘境に向かう。サンテンは文明社会が忘れられず、秘境を脱出するが、猛獣に襲われ重傷を負う。一方、マイケルの父からサンテン救出を依頼されたゲリラ隊長ロータは、人間のものと思われる足跡を発見し-。