小説むすび | 1995年1月20日発売

血の絆で結ばれた洋子と高志。異なる性の双子が貪る、耽美な禁断のエロティシズム。それは、洋子の婚礼が近づくにつれ、哀しく顕在化していった…。幻想は現実に、情念は行為へ。時代を超えて幽玄世界へと誘う現代のロマネスク文学。

呪術、祭礼、神秘の力が人々を支配した古代、その時代を見すえて描き出す真の孔子の姿。中島敦記念賞受賞。

旋風とともに背後から襲い、喉を突き刺し、眼球を抉る。過去を忘れ、何もなかったように生きる者こそ、わが標的。そう、これは「狩り」なのだ…。朝もやにけむる街でジョギング中の男が惨殺された。死亡推定時刻は午前六時。総頸動脈、後頸部に深い創傷。頸部椎間板亀裂。左鎖骨部分骨折。眼球剥落。死因は外傷性ショック死。遺留品は殆どなく、凶器も不明。行き詰まる捜査の果てに、やがて浮かんできたものは。森に棲む者の復讐を描くサスペンス。第７回日本推理サスペンス大賞優秀作。

夢と現実との境界“日暮し坂”。幼年期に遡る魔術の瞬間、“日暮し坂”に佇む男の胸に去来する美しくも危うい光景…。人生の原景を透明な視線で描き、時空を超えた魂の永遠を謳う渾身の長篇力作。

一番近くの見知らぬひと、わたしの家族。第二十回川端賞候補となった表題作を含む、逃れられない肉親への錯綜した思いをとらえる短篇。